第25話 初代の力

「くっはっはっ、そんなものか!」


「やっぱり強い……!」


 魔族の反応を感じとり増援に訪れた私達三人は2人の上級魔族達に終始押されていた。


 早くルナを助けないと……!


 ルナが上級魔族に腹部を貫かれている光景が戦闘中何度も頭を過ぎる。


 ルナ……ルナ……!


 これでもしルナが死んだら……私は……


「戦闘中に考え事かぁっ!」


「くっ!」


 迫る剣を寸前の所で躱すが完全には躱しきれず頬に一筋の傷ができる。


 駄目だ……考え事をしながら勝てるような相手じゃない……! 今は闘いに集中しなきゃ!


 なんとか体を動かして魔族から距離を取り大きく後退する。

 

「フィオナ、大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫だよ。それより、二人は大丈夫?」


「はい……少し攻撃を受けましたがまだ戦えます。」


「問題……ない……」


 二人とも傷付いてはいるが特に重症には至っていないことにひとまず安堵する。


 でもやっぱりあの上級者魔族達は強い……!


 前に私達五人がかりで手も足も出なかったように上級魔族は普通の魔族に比べて圧倒的に強い。


 今私達が上級魔族相手いつもより少ない三人でまだ生き残れているのは恐らく彼等が私達をじっくり痛ぶってたのしんでいるからだ。


 最初から二人ともに本気を出されていれば1分も持たずに全滅していただろう。

 

「フィオナ、指示を。」


「うん、私とノアそれぞれで二人の魔族の相手を。フランは私達の後方支援をお願い。」


「わかりました!」


「了……解……」


「行こう!」


 私とノアは同時に飛び出す。


 ルナの為にも……速く倒す!


「シャイニング」


 瞬間、周囲が眩い光で包まれる。


「な、なんだっ! くそっ、目がぁぁぁぁっ!!」


 よし、効いてる!


 今ならっ!


「……とでも言うと思ったのか?」


 刃を首に振るおうととした直前、先程まで瞑っていた目がばっちりと開かれる。


 そんな……効いてない……!


 魔族は私の刃をいとも簡単に躱わす。


「こんな光如きが通じるはずがないだろう!」


「そんなっ!」


 まずい……速く離れなきゃ!


「もう手遅れなんだよっ!」


 咄嗟に魔族から離れようとするも間に合わず、剣の柄で腹部を突かれる。


「か……」


 視界が歪む。


 や……だ……負けたく……な……


 だがその願いも虚しく私の体は飛行能力を維持できず落下を始める。


「おっと……まだ死ぬなよ、お前にはまだ仕事があるんだ。」


 だがその直後魔族が私の腕を掴む。


「なに……を……」


「ああ、いいものを見せてやるぜ……」


 魔族は残虐な笑みを浮かべ私の顔をノアが戦っている方向は無理矢理向かせる。


 直後視界に入ったのは私の想像を絶する光景だった。


「おい、どうした? 反撃しないのか?」


 そこでは最早抵抗する力も残っていないノアが魔族に一方的にいたぶられていた。


「おら! さっきからちまちまこっちに撃ってたお前もどうした? もううたねぇのか?」


「……」

 

 フランも魔族とノアとの距離が近く、巻き込んでしまうためか援護を出来ずにいた。


「かっはっは! やっぱり蹂躙は楽しいなあっ! これこそが圧倒的強者の愉悦よおっ!」


 やめ……て


 仲間が目の前で傷ついているというのに私の体は動かない。


「どうだ? お前の仲間が目の前で痛ぶられるのを見るのは……最高の気分だろう?」


「お願い……もう……やめて……」


「クックックそうか……おい、これ以上痛ぶるのはやめて欲しいそうだ……そろそろトドメを刺してやれ。」


「え……?」


「そうだな、そうしよう!」


 魔族が嗜虐的に微笑み気を失っているノアの喉元に剣を当てる。


 そしてカウントを始める。


「10……9……8……7……6……」


「や……め……」


「5……4……3……」


「大切な仲間なのっ! 殺すならわたしを……!」


「2……1……」


 だがそれでもカウントは止まらない。


「ゼロォォッ!」


「嫌……! やめてぇぇぇぇぇぇ!!」


 魔族が剣を振りかぶりもう駄目だと思ったその時、地上から高速の物体が飛んできて魔族の頬を掠める。


「っ!? 誰だ!!」


 物体が飛んできた地上を見ると一人の人物が立っていた。


 私はその人物を見た途端安心で涙が流れた。


「やれやれ、魔族が出たとの知らせで出張先から急いで来てみれば……まさかこんな大惨事になっていようとはな……」


 黒曜石のような黒髪に黒いスーツの美人……鬼龍院さんははぁとため息をつく。


「すみま……せん……鬼龍院……さん……」


 私は鬼龍院さんのてを煩わせてしまったことを申し訳なく思い謝る。


「いや、別に君達に対して溜め息をついたわけではない……相変わらず魔族は変わらないのだなと呆れただけだ。」


「まさか……生身の人間がさっきの投擲を……」


「ああ、少しウォーミングアップにね。衰えていないようで安心したよ。」


 前に鬼龍院さんは生身でも普通の魔族なら倒せると言っていたけど本当だったんだ……


 流石初代魔法少女……!


「さて……」


 その瞬間、鬼龍院さんの纏う空気が変わる。


「おい貴様ら……よくも私の可愛い後輩達を痛ぶり楽しんだな……貴様らにはその何倍もの苦痛と恐怖を与えてやろう……。」


 鬼龍院さんは冷たくそう言い唱えた。


「【暴虐の魔法少女】」

 

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