第24話 氷姫の覚醒

「ふふ、見せてあげるわ……私の愛の力……」


 直後、私の周囲の空気が凍る。


 そしていつもより強い冷気が私へと収束し、氷吹雪が吹き荒れる。


 冷気は私を優しく包みその姿を純白のドレスへと姿を変えていく。


「これが……彼の力を受けた私の新たな姿……ふふっ」


 内側から今までにない凄まじい力と彼の魔力を感じる。


 貴方がくれたこの力はあなたの為に……


「な、なんだ……こいつ姿がっ!」


「ふんっ、どうせ見せかけだけだろ。我等上級魔族には到底及ばん。」


「試してみる?」


「当然だ、今度こそお前を殺してやろう!」


 瞬間、魔族が動く。


 先程よりも圧倒的に速い……だけど今の私とっては……遅すぎる。


 私は魔族達の剣を避け、宙を華麗に舞う。


 ふふっ……オメガもこんな感じだったのかしら……彼と同じ景色が少しでも見えた気がして嬉しい。


「くそっ!」


 魔族達の表情に再び苛つきが生まれ始める。


「ちょこまかと逃げやがって!」


「当てるのが下手なだけじゃなくて?」


「っ! 小娘ぇぇ!」


 大振りで乱暴な剣……こんなものは剣技とは言わないわね。


 魔族の大振りの剣を最小限の動きで攻撃を躱し、空中で氷の矢を作りだす。


「フリーズアロウ」


「ぐっ、こんなもの……!」


 魔族達がフリーズアロウを弾いている間に私は意識を集中し、唱える。



「氷絶剣コールドオメガ」



 私の氷剣フリーズは氷絶剣コールドオメガととなって私の手に収まった。


 ふふっ、これが彼と私の愛の結晶……


「さぁ、早速試してみようかしら?」


「くっ、その剣凄まじい力を秘めているな……だが持ち主の実力が伴っていなければ何の意味もない!」

 

「ふふ、それは時期にわかると思うわよ。」


「何を———」


「ほらね?」


 私は一瞬で魔族の背後に移動する。


 そして———


「《氷華》」


 振り返る暇も与えずに華麗に舞うように魔族の体を切り刻む。


「ぐぅ……頭を狙わないとはな……それが貴様の敗因———」


「その必要がないからしないのよ。」


 その直後、魔族の切り傷の後から氷の華が咲く。


 この氷の華は全身を冷気で蝕んでいく……たとえどんなに再生力があろうとも必ず死に至る……


「終わりよ。」


「な、が……」


 既に冷気が喉元まで到達していたのか魔族は何も言葉を発することなく全身が凍りつく。


 そして役目を終えた氷華は枯れる……魔族の命と共に。


 直後、魔族は粉々になって砕けた。

 

「な……」


「さて……次はどっちかしら?」


「舐めるなよっ! 俺達は選ばれし上級魔族の二つ名待ちだぁっ!」


「そのつまらないプライドがあなたの敗因よ。」


 冷気全開……


「《絶対零度》」


 その瞬間、周囲の全てが凍る。


 空気が……木々が……ビルが……


 そして……魔族。


 前の状態では極小範囲にしか出せない奥義だったが、今では広範囲に発動させることができるようになった。


 ああ、やはりこの力は素晴らしい!


「ば、化け物……!」


 ふと見ると最後の一匹の魔族が私を見て狩られるのを待つ獲物のようにビクビクと怯える。


「最後はあなた一人ね……」


「くそっ! やってられるか!」


 魔族は私に恐れを成したのか高速でどこかへ飛んで行く。


 結構早いわね、これが火事場の馬鹿力というやつかしら?……さて、どうしようかしらね……かなり遠くに行ってしまったわね……


 その時、私は名案を思いつく。


「そうね……最後は彼の技を使わせてもらいましょうか……ふふっ、私も出来るかしら?」


 私が逃げる魔族に対して狙いを定めると背後に赤黒い魔法陣が浮き上がる。


 そして私は彼の技の名前を唱えた。


「《破滅の弾丸》」


 私の言葉と同時に魔法陣から赤黒い弾丸が放たれる。


「な、なんだこれはっ!」


 魔族に向かって真っ直ぐ進んで行った弾丸魔族の身体に着弾する。


 すると———


「が……ぎが……」


 着弾と同時に魔族の体は崩壊し、塵となって消えた。


 だがその直後、私の体に重い負荷がかかる。


「流石に……彼のように連発は出来ないわね……」


 本当はもっと大量に撃つつもりだったが撃てたのは一発だけ。これは彼の能力が私の何倍もあるということだろう。


 まだ……彼の背中は遠いわね……


 でもいつか絶対……!


「オメガ……いつかあなたと肩をならべて闘いたい……」

 

 私は闘う彼の背中向かって一人そう呟いた。

 

 

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