第12話 服選び
はぁ、なんでこんなことに……
今現在、俺は魔法少女達と一緒に服屋にいた。目の前では勢揃いした魔法少女が楽しそうに服を選んでいる。
「ねぇ、これなんてどうかしら?」
「うん……いい感じ」
「優菜、これ着てみてよ! 似合うと思うから!」
「ちょ、ちょっと!? この服は露出がおおすぎますよ!?」
俺はモブのはずではないのか……何故こんなところで魔法少女達とショッピングをしているんだ……俺は一体何をしているんだ……
俺が絶望感に浸っていると目の前に誰かが立つ気配がした。
「隣、いい?」
「ん? ああ、別に構わないぞ」
「じゃあ失礼するよ」
俺はボッーとするふりをしつつも隣をチラリと見る。
これで魔法少女との接触は四人目……あともう少しでコンプリートしてしまいそうだな……
九条綾乃。
ショートカットの白金の髪に、真紅の瞳。スタイルは……そしてお父さんとお母さんがスポーツ選手のアスリート一家。
学校では何故か一部の男子にお疲れ様です! と大声で挨拶されているのを目撃されていて元ヤンだと勘違いされたりしている。(事実)
そんな彼女も当然運動神経がかなりよく、俺達の学年では男子も抑えて一位だったはずだ。
その裏の姿は魔族と戦う魔法少女が一人。『雷帝』のクリスティナ。白い稲妻を操り、戦場を駆ける姿からその二つ名がつけられた。
「……」
「……」
そして訪れる沈黙。
なんだろう、あんまり話したことのない人とこの空気って中々に生き地獄だな。
そんな沈黙がしばらく続いた後、クリスティナが口を開いた。
「ねぇ、あんた……確か速水って言ったっけ?」
「は、はい、そうですけど……」
「……あんた、私の友達に変なことしてないでしょうね?」
ドスの効いた声でそう脅される。
……いやぁ……怖ぇぇ……
絶対に魔法少女にいてはいけない人物のように見えるがこれは彼女が仲間を本当に大切だと思っているからこその発言だろう。
しかも普段はこんなに怖いのに曇らせシーンは……いやぁ、全く最高だな。
「も、もちろんですよ!」
「……付き合ったりもしてない?」
「は、はい! 俺なんかと彼女達が釣り合うはずもありませんし」
「……そっか、ならいい。」
そう言いそっぽを向いた綾乃は少し上機嫌だった。
魔法少女のガーディアン流石だなぁ……
そう思っていると再び俺の前に誰かが近づいてくる気配がした。
「ねぇ、ちょっといい?」
「なんだ? 玲奈。」
いつもより女の子らしい私服の玲奈が両手に服を抱えながら立っていた。
「ちょっと付き合って欲しいの」
「何を?」
「いいから、来なさい。綾乃、蒼太借りてくわよ。」
「……りょーかい」
玲奈に手を引かれ、連れていかれら時何故かめちゃくちゃ睨まれた。
え? これ、俺悪くなくない?
◇
「で? なんだ?」
連れてこられたのは試着室の前。
まぁ大体この時点で分かるが。
「見ればわかるでしょ? 私の服の評価をしなさい。」
「俺は服とかそういうのわかんないぞ?」
「別にわからなくてもいいわ、私が可愛ければ可愛いという。それがあなたの仕事よ。理解出来た?」
「……分かった」
「ふふ、いい子ね。それでいいのよ。」
そう言って玲奈は試着室の奥へと入って行った。
『なんだか面白そうなことになっておるなぁ』
(全然面白くないぞ? なんで俺がこんな目に……)
『クフフ、良いではないか。これもラブコメイベントの一つなのだろう?』
(いやいや、俺はラブコメしたいわけじゃないんだ、俺は魔法少女達の曇らせをみたいだけなんだ!」
『相変わらず変な奴だ、やはり面白い。』
そんなことを話しながらしばらく待っていると試着室の扉がカーテンが開かれた。
「どう?」
「可愛いよ流石、玲奈だな。」
純白のワンピースがルナの銀髪と良く似合っていてルナのモデルのようなスタイルも噛み合ってもはや女神のような神々しささえ感じる。
本当にルナのためだけの衣装のように思えた。
「本当に玲奈は美人だよな」
昔何処かでこういうのはとにかく褒めまくった方が良いと聞いたので褒めまくっていると徐々に玲奈の頬が赤く染まっていく。
ん? これは……?
「そ、そう……それはよかったわ……じゃあ次ね……」
それから玲奈は何着も試着して俺に見せてくれた。まさかこんな種類ものルナの衣装違いなど魔法少女のゲームでも見れなかったものを……まさか見れる時が来るなんて……本当にこの世界に生まれてよかった……!
嬉しさのあまり泣いていると玲奈に冷たい目で見られた。
「ちょっとなんで泣いてるのよ?」
「いやぁ……感動でね?」
「ふ、ふーん……そんなに良かったのね……」
「それで? どれにするんだ?」
「……全部買うわ。」
「っておい! それ俺必要なかったんじゃないか?」
俺がツッコミを入れるとルナは少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら呟いた。
「あなたが居てくれたから全部買うのよ……」
「どういう意味だ?」
「……さぁね、どういう意味かしら?」
そう蠱惑的に言ってルナはレジのほうへと歩いて行った。
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