第11話 魔法少女達の休日

 高層ビルの最上階、魔法少女の本拠地。


 そこで私達は今後の話し合いをしていた。


「やっぱり、オメガは味方なんじゃないかしら?」


 私はみんなに向けてオメガが味方であると訴える。


 先日の一件で確信した、彼は私達の味方だ。彼は強大な力を持つ二人の魔族を倒し、重症の私達を癒してくれた。


「確かに助けてくれたことは私も感謝してる……でもオメガによって被害が出たのもまた事実でしょ?」


「確かに、あの大きなクレーターはオメガの被害よ。でもオメガがあそこであの魔族達を倒さなきゃもっと被害がデカくなってたわよ?」


 特にあの爆発を操る魔族は危険だった。あの魔族が本気で暴れ回っていたら被害はこの程度ではすまなかっただろう。


「うん、私もオメガは味方だと思う。」


「フィオナまで……私は反対。」


「私もオメガを味方だと思いたいですが。現状は反対ですね。」


 思っていた通りこの二人の説得は難しい……でも私は———


「オメガと協力体制が結べれば魔族による被害をもっと減らせるかもしれない」


「だからそれじゃ——」


 その時、魔法少女しか入れないはずの最上階にエレベーターが止まった

 そして扉が開くと中からスーツ姿の女性が現れた。


「盛り上がっているようだな、二人とも。」


「き、鬼龍院さん!?」


 腰辺りまでの黒髪ロングにモデル体型を通り越した圧倒的なスタイルの黒スーツがよく似合う美人、鬼龍院刹那。


 一代で世界規模の大企業を築いたアルテミスグループの現CEO、伝説の初代魔法少女の最後の一人だ。


「お疲れ、皆。こんな日まで会議とは……相変わらず君達は真面目だな。」


「鬼龍院さんこそここにいて大丈夫なんですか?」


「ん? まぁ、少しだけ予定に余裕が出来たから様子を見に来たんだ。」


 そう言っているが恐らく秘書から逃げ出して来たんだろう。鬼龍院さんほどの人物に暇な時などない。


「それで鬼龍院さん何か御用ですか? 先日現れたオメガについては報告書に載せてあったはずですが……」


 この人は私達魔法少女の主でもあるためこの人の決定は絶対だ。

 もしこの人がオメガは敵だと言ったら私達はオメガと敵対することになる。


「ああ、読ませて貰ったよ。まぁ、少し様子見かな、今度私もオメガを生で見てみたいし。」


 私はその言葉に胸を撫で下ろした。


 とりあえずはまだ大丈夫そうね……


「そんなことより君達きちんと学校にはいっているか?」


「はい、勿論です!」


「問題なく全員行ってますよ」


「そうか、ならいい。だが君達はまだ若いんだ。青春時代を大切にしなさい……そう、その当たり前がいつ崩れるかは誰にもわからないからな……」


 鬼龍院さんは何かを思い出すかのようにどこか遠くを見る。


 その顔は少し寂しいような、悲しいようなそんな表情をしていた。


「……おっとすまない、少し昔のことを思い出していた。それでだ、次の休日、皆で何処かに遊んで来なさい。ほら、これをやるから。」


 そう言い懐から札束を取り出し私達の目の前にドンと置いた。


 恐らく、100万くらいはあるだろうか。


「えっ!? ちょっ!」


「ん? 足りなかったか? なら——」

 

「「「「「大丈夫です!」」」」」


 更に懐に手を入れようとするので皆でそれを必死にとめる。


 本当にこの人は金銭感覚がどうにかしている。


「これも入りませんから!」


「むっ! そうか……別に遠慮しなくてもいいんだぞ? 私は君達の働きに出来れば億以上の報酬を与えたいくらいだ。」


「いえ、これは私達魔法少女の使命ですから。」


「……そうだったな。すまない……だが、やはり君達には休みは必要だ。次の休日はみんなで何処かに出かけるように。君達ちゃんと言わなきゃずっと仕事するだろうからこれは命令としておく。」


 胸ポケットから一枚の黒いカードを取り出すとそれを机の上に置いた。


「自由に使っていいから楽しんできなさい。」


 それだけ言うと手をひらひらと振ってエレベーターへと乗り込んで行った。



 ◇



 そういう訳でみんなでショッピングモールで待ち合わせをしていたのだけれど……


「みんな、さっきラーメン屋であった速水くんです。」


「ど、どもでーす……」

 

「速水くん、こんにちわ!」


「誰? この男……」


「私……知らない……」


「……」


 なんでこの男がいるのよ……というかなんで優菜と仲良くしてるのよ……私だけがともだちじゃないの?


「よ、よう玲奈……」


「私も知らないわね、こんな男。」


「ちょぉいっ! それは世間は許してくれませんよぉっ!」


「玲奈と結衣は速水くんとと知り合いだったんですか?」

 

「……ええ……まぁ……」


「私は速水くんと隣の席なんだよ!」


 えっ? そうなの?


「あら、そうなんですね。玲奈は速水くんとどういう関係なんですか?」


「……飼い主と飼い犬のようなものかしら」


「おいおいおい、誰が犬だって?」


「毎日餌を与えてるのは誰だと思ってるの?」


「……玲奈様です」


「それでいいのよ」


 そうそう、蒼太は私の犬の様なものだもの。


「あ、あの俺そろそろお邪魔して——」


「速水くん、せっかくですから一緒にお買い物しませんか?」


「「え?」」

 

「洋服を選ぶ時に男の子の意見とかも聞けたら参考になります」


「い、いや俺は——」


「いいね、それ! 速水くんも一緒に行こ!」


「私はどっちでもいいよ」


「私も……」


 え? あとは私だけ?


「……いいんじゃないかしら。」


「決定ですね、では参りましょう。」


 全員が賛同したことで蒼太も一緒に着いてくることになり、六人でショッピングモールを移動する。


「……」


「れ、玲奈……? なんか怒ってる……?」


「別に、怒ってないわよ」


「怒ってんじゃん!?」


 私だけの友達なのに……


 そんなモヤモヤした気持ちを感じながら私は早歩きで歩いた。

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