第9話 彼の魔力
生徒会の仕事を終え帰宅した私はお風呂を出た後、部屋のベットでリラックスしていた。
「疲れた……」
魔法少女としての勤めと生徒会長としての勤め。やはり両立はかなり大変だ。戦闘での傷はなかなか癒えないし、魔法少女としての責任も重い。
私は先日爆裂の魔族に負わされた火傷跡があった場所を指でツーッとなぞる。
そうすると彼の魔力を少しだけ感じられた。
その魔力は邪悪で今まで戦ってきた魔族たちよりも比べ物にならないほど濃度が濃い。
でも私を癒してくれた優しい力だ。
「オメガ……」
今どこにいるんだろう……何をしているんだろう……何故かそんなことが気になってしまう。
彼はどんな顔をしているんだろう……イケメンなのか……はたまた普通なのだろうか。
先日意識を失う直前に彼が仮面を外した気がしたのだけれど……素顔は見えなかったのよね……
今度はちゃんと顔を見てみたい。
私はそんなことを思いながら目を閉ざした。
◇
「ふぁぁ……眠い……」
いつも通り学校に登校した俺はあまりの眠気に即座に机に突っ伏した。
『我も昨日は大変な目にあったぞ……あんな思考量は初めてだ。脳が焼き切れるかと思ったぞ……』
昨日は曇りシチュエーションの妄想がめちゃくちゃ捗り、色んなパターンで曇る魔法少女達を考えていたらいつの間にか朝になっていた。だが後悔はない。
(お前でも情報処理能力はあんまりないんだな。)
『我の情報処理能力は超一流だ。お前の妄想力がそれを遥かに上回るくらい強いだけだ。』
(まぁ、子供の頃からずっとしてきたことだしな!)
そんなことをヴァルディアと話しているとこちらにだれかが近づいてくる足音がした。
「蒼太、おはよっすー」
「ん……? 聖斗か。どうした?」
「聞いてくれよ、蒼太ぁぁ……来栖さんに振られちゃったんだよおぉ……」
「そうか……よかったな……」
「って! おいぃぃ! そっけなくね? なぐさめてくれよぉ……親友だろぉぉ……」
こんな狂人と親友になるつもりはなかったんだけどなぁ……転生したらなんかってに親友になってただけだし……
大体来栖優香に告るのも場を弁えろって感じだ。
相手は魔法少女だぞ。
「用が済んだならもういいか? 眠くてしょうがないんだ……」
「ん? そうなのか……魔法少女について語ろうと思ったんだが———」
「まぁ、待てよ。思う存分語り合おうじゃないか。」
「お、おう……俺、この間の魔法少女の戦い見てめっちゃファンになっちゃったんだよ。」
確かに……この間の戦いは実に素晴らしかった……特にルナがあの二人の魔族に仲間を倒されて圧倒的な力の差と自分の無力さに絶望するシーンは名場面だったな。
「推しは?」
「俺は、ソフィアちゃんかな。いつも元気いっぱいな笑顔が最高に可愛い」
「!?」
聖斗がフィオナを褒めた時、俺の隣の椎名がわかりやすく照れた。
そう、俺の身近には二人も魔法少女がいるのだ。
椎名結衣。
俺のクラスメイトで学校ではメガネをかけた委員長タイプの女の子で授業以外の休み時間でも勉強を惜しまず常に努力を続けている。
『光輪』の魔法少女、フィオナとしての彼女はどんな敵が相手でも諦めずに最後まで戦い、仲間を支えるリーダーだ。
しかしそんな彼女が自分が仲間に最後まで戦おうと行ってしまったせいで仲間が全滅してしまって絶望し諦めるシーンは俺の曇りランキングでもかなり上位に入るシーンだ。
あのシーン……この世界で生で見れないかなぁ……
「蒼太は誰推しなんだ?」
「箱推しに決まってんだろ、舐めてんのか?」
「そ、そうなのか……お前そんな魔法少女好きなんだな……」
「ああ、大好きだ。特に——」
「——っ!? あ、あの二人共、もう授業始まるよ?」
「え? まじ?」
そう言われて時計を確認すると授業開始まだ残り一分前だった。
「じゃあな、蒼太。」
「ああ……」
今から良いところだったのに……
まぁ、いい。
この世界がアニメ通りに進むのならば、もうすぐで特大の曇らせを拝める……俺が好きな曇らせシーントップ5に入る一つを生で見れるのだ。
それを考えるだけで楽しくなってくる。
ルナには悪いけどめちゃくちゃ楽しみだな!
俺は曇らせに思いをふけながら授業の準備を始めた。
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