第6話 全滅
なんでこんな時に……っ! せっかく人がいい気分だったのに!
私は全力で校内を駆ける。
生徒会長として廊下を全速力で走るのはどうなのかと思わなくもないがこの際そんなことはどうでもいい。
私が一刻も速く現場に向かわなければ被害が広がり犠牲者が増える。そんなことは絶対にあってはならない。
私は外に出て人の気配がないことを確認してから唱える。
「【 絶対零度の
その瞬間、周囲の空気が冷え、地面が凍る。
次第に私へ冷気が収束し、白色のドレスへと姿を変えていく。
私は『氷姫』のルナへと変身した。
絶対に犠牲は出させない!
身体を浮かせ私は猛スピードで現場へと向かう。
流石に……彼のようなスピードは出せないわね……
前に見た彼の飛行速度は明らかに音速を超えた速度だった。
でも……それでも……もっと……もっと速く……
更に速度を上げ私は現場へと急ぐ。
飛ばしてきたおかげもあってか少しすると燃える建物と恐らく元凶である2人の魔族の姿が確認できた。
「おいおいおい! なんだぁ? 人間の建物は脆いなぁ……! 豆腐みてぇ崩れるぞ!」
「ふぃっふぃっ、そう言ってやるな、人間達にはこれが限界なんだろう」
アイツらが……!
私は手に魔力を篭め、冷気を発生させる。
「こいつで全部吹き飛ばしてやるっ!」
「させないわよ!」
魔族が都市目掛けて放った爆風に私の冷気を重ねる。
爆風の熱と冷気で周囲の空気が揺れる。
数秒間拮抗したのちどちらの魔法も効力を失い喪失した。
「そこまでよ、魔族。」
「……ほぉう……ようやくお出ましか、魔法少女さんよぉ!」
「プロジオン気をつけろ、魔法少女は手強いぞ。」
まずいわね……数では向こうのほうが上……しかもこの実力でも二人とも私と同レベルかもしくはそれ以上……
その時、私の視界の端にこちらに向かってくる4つの陰が見えた。
……ふふ、そうね……私は一人じゃない!
「お待たせ! ルナ!」
「流石ルナだね、速い」
「当然、私達も一緒に戦います。」
「援護する……」
五人の魔法少女が集結する。
そうだ、私達は五人で一つ。
この五人なら勝てる!
「続々と……少し分が悪いな、一度撤退するか?」
「馬鹿言ってんじゃねぇぞ、ヤニージャ! お前が二人で俺が三人だ。」
どうやら相手はこちらを随分とあまくみているようね……腹が立つからどそれほど腕に自身があるといこと……
「私とフランとフィオナでこの魔族の相手をするわ。二人はもう片方をお願い」
「任せて。すぐに終わらせて、加勢するから……」
「三人とも気をつけて……!」
私達は二人と別れプロジオンと呼ばれていた魔族と向き合う。
この魔族……前に戦った触手の魔族より強い……あの私達を全滅させかけたあの魔族より……
その事実が体をブルブルと震えさせる。
余計なことは考えるな……今は戦いに集中しろ……
「さぁ、魔法少女共……楽しませてせてくれよ?」
そう言った直後魔族が右腕を横に薙ぎ払う。
これは……!
「二人とも、上へ飛んでっ!」
私の言葉にすぐに反応した二人と上へ飛ぶと先程まで私達がいた場所に爆裂が起きていた。
「危なかった……ルナがいなかったら危なかったよ……」
「高温度の爆発……厄介な能力……」
「二人とも、あいつは爆発の能力を遠隔では発動できない。必ず体の何処かで爆発を発生させていて発動する部分が直前に赤く光るわ!」
「ほぉ……中々いい分析だ褒めてやるよ。まぁ、それを活かせるかは別だけだなあっ!」
再びプロジオンが腕を振るう。
今度は両手同時かつ、先程よりも威力が強く速い。
これは避けられないわね……!
私はさっきと同じやり方で爆発に向かって全開の冷気を放つ。
さっきより熱が上がってる……もっと冷気を……!
どんどん熱が上がっていく爆発をさらに下回る冷気で冷やし続ける。
これ以上は……!
「……援護する」
フランが創造の能力で作り出した何かを爆風の中に投げ込むと熱ががくんと下がった。
流石、フラン! 消火剤を創造して投げ入れてくれたのね……! これならいける!
更に冷気を篭め、冷やすとやがて爆風は収まり周りに黒煙が立ちこめる。
「はぁ……はぁ……二人とも大丈夫?」
「……やっぱりお前のその氷結の能力めんどくせぇな……まずはお前から爆殺してやる!」
プロジオンが足に爆風を発生させた次の瞬間凄まじい推進力でこちらに向かってくる。
駄目……何もできない……
「ルナ! 危ない!」
あと少しでプロジオンの手が私に触れそうになった時、その間にフィオナが割って入った。
その直後肌を焼くような熱と強い爆風を受け私とフィオナは吹き飛ばされ高層ビルに激突した。
「フィオナ……! しっかりして!」
「よかっ、た……ルナが無事……で……」
「なんで私なんかを庇うのよ! あなたの方が……」
「ル、ナ……あいつに勝てるのはあなただけ……お願い……勝っ……て……」
そう言い残しフィオナの体から力が抜けた。
なんで……私はいつも……なんで……!
「なんとも弱いな……魔法少女とはこんなものか?」
「…………」
重症の火傷のフランの首を締めながらプロジオンは余裕そうに言う。
「プロジオン、まだ終わっていなかったのか……」
もう一人の魔族、ヤニージャはつまらなさそうに仲間私達の様子を眺めている。
……そう……あの二人も……
「すまねぇな、少し手間取った」
「まぁ、いい。早くトドメをさせ。」
「ああ、そうするぜ。」
プロジオンの手のひらが私に向けられる。
「ふっ、これにて、魔法少女は全滅だ。このプロジオン様の手によってなぁ……あの方にもいい報告ができる。」
今度こそ……終わり……
やはり前のあれは奇跡だった……奇跡は二度とは起きない。
だって現実はこんなにも残酷すぎる。
私、頑張れたよね……
「死ね」
プロジオンの手のひらが赤く光る。
今度こそ、終わりだ。
そう覚悟した時、何処からか声が響く。
「貴様はまだ終わっていない。」
その直後、私の目の前に隕石でも落ちたかのような衝撃が広がる。
「な、なんだ!?」
凄まじい衝撃のはずなのに何故か私にはなんの瓦礫も飛んで来ない。まるで見えない壁が守ってくれているかのように。
衝撃で瞑った目をゆっくり開けると私の目の前に黒いローブを纏った男の後ろ姿があった。
その黒いローブを見ただけで私の目から大粒の涙が溢れ出していた。
……来て……くれた……
「我が名はオメガ。」
そこには彼、オメガが私を守るようにして立っていた。
【あとがき】
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