第5話 騒動
「なんか平和だなぁ……」
ここ最近魔族の出現もなく世界は平和に満ちていた。
はぁ……暇だ……もうしばらく魔法少女達の姿すら拝めていない……これでは曇らせなど夢のまた夢だ……
アニメにも一応かなり強い魔族はいたはずなんだがその魔族達も一切出てこない。一体どうなっているんだ?
「あなた、今日も一人なの?」
そんな事を考えているとその場に鈴を鳴らしたような美しい声が響いた。
「……なんでまた来たんだ」
「それは来るわよ。だってここ、私のお昼スペースだもの」
彼女は余裕そうな笑みを浮かべ自然に俺の隣へと腰を降ろした。
てっきり彼女は男嫌いで有名だしもうここには来ないものだと思って今日も来たんだが……読み間違えたな。
「おい、何故俺の隣に座る。これでは俺がモブではなくなってしまう。俺の存在意義を奪うな」
「相変わらず意味の分からないことを言うのね。というかあなた大丈夫? ちゃんと友達いる? 相談なら乗ってあげるわよ」
「余計なお世話だ、ちゃんといる。玲奈こそぼっちなんじゃないのか?」
「私はあなたとは違うわ、必要ないのよ。」
「……そうか」
これ以上は不毛な争いになる気がしたので俺はコンビニの袋から栄養バーとゼリー飲料を取り出す。
今日はあまりいいお弁当がなかったのでお昼は適当にこれで済ませる。俺は飯は腹に入ればなんでもいいと思っているので別にこれでもいい。
「……ねぇ、まさかとは思うけど……あなたそれが今日のご飯とか言わないわよね?」
ルナが信じられないものを見るかのような視線で俺の昼食をじっと見ていた。
「ん? もちろんそうだぞ。何か変か?」
「……はぁ……これ、よかったら食べなさい。」
そう言って手渡されたのは可愛い刺繍が施された布に包まれた弁当箱。
ん? おい、待て待て……もしかしてこれって……
「これは……」
「今日の朝は少し作りすぎてしまったの。消費に協力しなさい」
なんでヒロインから手作りお弁当をもらうラブコメイベントみたいになってんだぁぁぁぁーー!!
まずいです、これはまずいですねぇ……これを受け取ってしまったら俺はもうモブではなくなってしまうが気がする……
「……いや、今日は俺は——」
「……」
「ありがたく頂戴したします!」
俺はルナの圧に負け、結局お弁当を受け取ることにした。
包みを開き蓋を開けると中には鮮やかな彩りが美しい和食のが綺麗に並べられていた。
美味しそうだな……
最初に綺麗に巻かれた卵焼きを箸で挟み、口の中へと入れる。
しっとりと柔らかく、とろみのある卵に少し甘みのある出汁の味がしっかりと絡み合っている。
俺はあまりのおいしさに気づけばもう一つ目も食べてしまっていた。
これ、俺が食べた卵焼きの中で間違いなく一番美味しい卵焼きだ。
次に煮物を食べて見るとこれもまた美味しい。
よく煮込まれてしっかりと味が染み込んだ具材は柔らかく繊細な味で高級料亭で出てきてもおかしくないような出来だった。
「どう、美味しい?」
「……ああ、美味い。」
俺としたことが……モブということを忘れ弁当に夢中になってしまうとは……
「ふふ、そう。それはよかったわね。今度また持ってきてあげるから。」
「……いいのか?」
「ええ、なんだか最近はよく作りすぎちゃうのよ」
もしかして……これ俺だけの為にわざわざ作ってくれたのか?
よく見てみると俺とルナのお弁当では中身が違う。俺の方のお弁当の方がより彩が意識されているように見える。
……いや、違うな。うん、きっと違うはずだ。
「……じゃあその時はありがたくいただく」
「ええ、そうしなさい。」
彼女が上機嫌そうに微笑んだその時、とてつもない爆発音が耳を襲い、その直後街中のビルが燃えているのが目に入った。
おっ! こ、これはっ! まさかっ!!
待ち望んでいた展開に胸が高鳴る。
待て待て、落ち着け。
まずはモブのフリだ。
「な、なんだ!? 今の爆発はっ!?」
「っ! ここのところ平和が続いていたのに……!」
状況を理解した彼女は瞬時に駆け出し屋上の扉へと向かっていく。
「魔族の襲撃よ! 早くあなたも逃げなさい!」
そう言い残し彼女は急いで去っていった。
恐らく何処かに隠れて変身するんだろう。
(……ヴォルディア)
『ああ、かなりの力の魔族の反応が二つ。中央街の方で暴れているようだな……どうする?』
(行くに決まってるだろ)
『クフフフ、聞くまでもなかったな。流石我の見込んだ人間、蒼太だ。』
ようやくだ、ようやく魔法少女達が見れる……長かったぞ……!
「【 魔神化解放 】」
そう唱えると俺の周りに瘴気が漂い始めやがて俺に集約する。
その瘴気は黒いローブをとなり、俺の顔に不気味な仮面が形成される。
「……行くか。」
さぁ、今回もいい曇らせを見せてくれ!
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