第2話 謎の存在オメガ

「こんな……もの……!」


「駄目よ、抵抗しちゃ。エネルギーを効率よく吸い取れないじゃない。」


「くっ……ル、ナ……逃げ……て……」


 最後の仲間がそういい残し意識をを失った。


 目の前で仲間達が倒されいく様を様を私は何もできずにただただ眺めてあるしかできなかった。


 動け……動け……! 私がみんなを助けるんだ!


 そう何度も自分を鼓舞するが私の体は私の意思とは逆に全く動かない。


「あらあら……どうしたの? そんなに泣いてしまって……ふふふ、哀れねぇ」


 魔族の女はこちらを嘲笑うように見つめ、仲間たちの拘束をさらに強くする。


 恐らくこの魔族はあのルレラヤグスとかいう雑魚に組み込まれていた転移の術式で転移してきた。


 つまりこの魔族こそが本命……魔族側が私達を倒すために送り込んだ刺客……最近魔族が弱かったのは私達が油断するこの瞬間を作り出すための罠……!


「ふふ、その顔……いいわね……とってもいい表情……あなたはじっくりゆっくり私の中でエネルギーに変換してあげる」


「好きにすれば……」


 あの子達がいない世界で一人寂しく生きるくらいなら……もうどうでもいい……私の命なんて……


 私は力なく剣を手放しもう抵抗するのをやめた。


「あらあら、もしかして自暴自棄になっちゃった? 可哀想ねぇあなたを守った仲間が浮かばれないわ……ならお望み通り……今楽にしてあげる!」


 次の瞬間鋭い刃物のような触手が私目掛けて放たれる。


 当たれば即死ね。


 あぁ……私は何も成せななかったなぁ……


 目を瞑り死を待っているとその場に乾いた拍手の音が響いた。



「お見事、お見事。触手を使った戦法とはなかなかいい趣味をしている。」



 目を開けると私に迫っていた触手は切り裂かれ、私と魔族の間に謎の男が浮いてていた。


 その男は黒いローブを身に纏っていてフードの奥からは不気味な仮面がこちらをじっと見つめている。


 そして何よりその男から凄まじい圧を感じた。


 この男は間違いなく強い。


「ぎゃぁぁぁぁあああ!! 私の触手がぁぁぁぁ!! お前何者だっ!!」



「我が名はオメガ。」



 男は地に轟くかのような低い声でそう言った。


「【氷姫】のルナよ、死ぬな。お前は私の理想の世界に欠かせない人材だ。」


 男が私に向けて手をかざすと体の傷が癒え、魔力がどんどん回復していく。


 す、すごい……傷が元通りに……


「よそ見してんじゃないわよっ!!」


「動くな、死ぬぞ。」


 男の指が微かに動いたと思った瞬間凄まじい風圧が発生し魔族の体を真っ二つに切断した。


「な、あ? え……?」


「動くなと言っただろう……次は首を飛ばすぞ。」


 今、何をしたの? 何も見えなかった……


 奴の能力は斬撃? それとも私を癒したあの光? 分からない……!


「私は魔族だ! こ、この程度……!」


「無駄だ。お前はもう体を再生できない。」


「な、なんで……なんで再生が……!」


「もういいだろう、終わりにしよう。」


「舐める、なぁぁぁぁぁーーーっ!!」


 怨念の籠った咆哮と共に夥しい数の鋭い触手が男目掛けて放たれる。最早本来の目的だった魔法少女達も放り投げ全ての触手を男への攻撃に向けている。


 私は仲間達が解放された瞬間飛び出し全員を無事回収することができた。


「よかった……みんな息はある……あの男この子達にも回復をかけてくれたのね……」


 全員気を失っているだけなので少しすれば目を覚ますだろう。


 あとは撤退するだけなのだけれど……


 私はチラリと男の方を見る。


 男を襲おうとしていた夥しい数の触手は先端から崩壊を始めており、既に勝敗は着いたも同然の状態だった。


「もう満足いったか? 今なら見逃してやってもいいぞ。転移魔法でも使って早く帰れ。ほら早く。」


「うぅぅぅ……誰が逃げるものかぁぁ……私は魔族なんだ……貴様のような……魔族モドキに……負ける筈がな——」


「そうか、残念だ。」


 男がそう呟いた同時に魔族の体に伝播するように全身にひびが入っていく。


「私の体にひびがっ——」


 その瞬間、魔族の体が一気に崩壊した。

 

『……はぁ……やれやれ、せっかくの貴重な人材だったのに……勿体無いなぁ……』


 彼は残念そうに小声で何かを呟いていた。


「ねぇ……あなたは何者なの? あなたの目的は何?」


 私は恐る恐る彼に声をかける。


 本当は少し怖い。


 幾ら私達を助けてくれたとはいえあの力は危険だ。もしかしたら魔族達よりも彼の方がよっぽど危険な気がする。


 だけどそれ以上に私は彼について知りたいと思っていた。

 

 彼はその冷たい仮面で私をじっと見つめる。


「知る必要はない……私に関わるな。」


 それだけ言うと彼は凄まじいスピードでどこかへと飛んでいってしまった。


「オメガ……」


 彼が現状敵か味方か分からない彼を市民の平和を守る魔法少女として信用してはいけないのは分かっている……でも私は……彼を……


 少しもやりとして気持ちを残したまま私は仲間を連れてその場を後にした。

 

 



 【あとがき】


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