魔法少女アニメのモブに転生したので、謎の存在として全滅寸前の彼女達を助けるのを繰り返してたら全員ヤンデレ化してしまった
ぷらぷら
第1話 魔神との邂逅
市街地上空。
そこでは今日も悪と正義の戦いが繰り広げられている。
「クフフフ……今日も現れたのか、忌々しい魔法少女め……!」
今すぐ病院に行った方がいいと思うほど肌の色が真っ青なゾンビのような風貌の男が不適に微笑み呟く。
それに相対するは可愛らしい衣装に身を包んだ五人の少女達。
「当たり前だよ! みんなの平和は壊させない!」
「ほほう……ならばやってみるがいい……このルレラヤグス様を倒せたらなぁっ!」
「絶対に倒す! 行こう、みんな!」
「ええ……」
「はい!」
「もちろん!」
「は〜い!」
リーダーの魔法少女の呼びかけに合わせ他の四人の魔法少女達が一気に突っ込む。
「ふん、正面からとはくだらん!」
「それはどうかな?」
いつの間にか男の後ろに青色の衣装を着た少女が立っていた。
そしてその手からバチバチと音を立て、電流が発生する。
「なっ——」
「サンダーフィスト!」
直後、激しい音と共に男に雷撃が炸裂した。
「がはっ——ばか、な……こんな……ことが……」
雷撃をくらった男は浮遊を維持できる力もないのかゆっくりと落下していく。
虫の息の男はこのまま放っておけば確実に落下して死ぬ。だが悪絶対殺すウォーマンの魔法少女はこの程度で許してくれるはずもない。
「みんな、トドメをっ!」
ピンク色の少女の声に合わせて全員が男に右手を向ける。
次の瞬間、手のひらから放たれたそれぞれの属性が男に直撃する。
「そ……な……この、わた……しが……も……しわけ……せん……さま……」
そのまま男は塵となって消えた。
やれやれ、今日も魔法少女様の勝利か。
俺の望んでいる展開はなかなか来ないなぁ……
ビルの屋上からその様子を見ていた俺は一人、深いため息をつく。
俺は転生者だ。
気がつくと俺はこの世界……前世で俺が大好きだった魔法少女アニメの世界に転生していた。
だが俺は魔法少女の一人でもなく、悪役の親玉でもなく……作中に登場しているのかもわからない、魔法少女たちが通う学校の一般生徒、速水蒼太だった。
いや、誰だよ。
なんでこんなモブに結構いい名前あんだよ……
と、ツッコミたいことはあったがそんなこともどうでも良くなるくらいに今の俺はこの世界を全力で楽しんでいる。
俺は魔法少女が大好きだ。
小さい頃、同級生達はヒーロー番組をみていたが俺は魔法少女アニメに夢中だった。魔法少女がかわいいから? 確かにそれもある。
が、理由はそうではない。俺が魔法少女に惹かれた所はなんといっても魔法少女達の曇り顔だ。
いつもは余裕たっぷりに笑っている魔法少女達が強大な敵を前に、動けない仲間を前に絶望する……そんなシーンが大好きだった。
このことを仲の良かった女の子に言ったらめちゃくちゃドン引きされたのをよく覚えている……。
だが勘違いしないで欲しい。俺はバットエンドが好きなわけじゃない。絶望している魔法少女達にもそこから立ち上がってもらいたいと思っている。
だけどこの世界に転生してからというものアニメとは違ってそんなシーンは訪れない。どの敵も弱すぎて瞬殺されてるしな。全く、敵の親玉は何してんだ。
まぁいい……さてとここからは趣味の聖地巡礼と行くか……
今日俺が訪れているこの廃ビル……実は魔法少女の一人が魔神の力によって闇堕ちする場所なのだ。
「確かここら辺だったような……あ、あった!」
そこには禍々しく光る魔法陣が床一面に刻まれていた。
そう、この魔法陣! ここから魔神が出てくるんだよな。そして魔法少女の体を乗っ取って大暴れするんだよなぁ……まぁ資格がないとダメとか言ってたから魔神は見れないけど。
にしてもやっぱりすごいなぁ……現実にも同じ場所はあったけどやっぱり本物は違うな。
『……誰だ』
ん? なんか今聞こえたような……気のせいか。
『おい、お前。気のせいにするな。お前に話しかけているんだ。』
魔法陣から目をあげると魔法陣の上に黒いモヤに包まれた謎の禍々しい何かがいた。
「え? なんで目覚めてんの?」
『お前こそ、何故こんなところにいる……』
「俺は聖地を巡礼するただのモブだ。」
『ここは聖地ではない。ここは暗黒の——』
「わかった、わかったから。早く帰ってくれ。」
『貴様ッ! この我に向かって帰れとはいい度胸だな!』
はぁ、めんどくせぇ……早く帰ってくれよ……お前には魔法少女を闇堕ちさせるっていう重要な役割があるんだから……
『何?』
「あ、やべ……」
こいつ心読めるんじゃん……どうしよ……
『聞こえておるぞ……それより貴様、中々面白い思考をしておるな。』
「勝手に人の心読むなよ、気持ち悪い。」
『そう言うな。貴様にいい話がある。我をその身に宿さんか?』
「は?」
あまりの馬鹿げた提案に俺はこいつの顔を殴りたくなった。
こいつを俺の体に宿す。つまり俺はコイツの力の強さに耐えきれず死ぬ。奇跡的に耐えられたとしても体を奪われる。俺にいいことなど一つもない。
『なんだ? こういえばいいのか? 我と契約して魔法少年になってよ』
「……わからないな。何がしたいんだ? お前に利はないだろう。」
『我はお前に興味が沸いた。』
「俺はお前に興味ない。わかったら早く帰れ。」
『我の力を使えば貴様の目的を叶えられるぞ?』
俺はその言葉に去ろうとしていた足をピタリと止めた。
「よし、乗った。」
「……単純なやつだな……まぁそこが気に入ったのだが、では契約だ。我の元までこい。」
「ああ」
言われた通り魔法陣の上にいる魔神の元まで行くと魔法陣がカッと赤く光り同時に周囲に瘴気が漂い出す。
おいおい……これ大丈夫か?
『では始める……壊れるなよ。』
試すような笑みを浮かべそう言うと、魔神が俺の体にスッと入って行った。
その直後、激しい痛みが全身に走る。
まるで全身にヒビが入って行くような強烈な痛み。
はは……これ……きついな
油断すれば意識を持っていかれそうなほどの強い痛み。恐らくこれに耐え抜くことで資格を得るのだろう。
やってやるさ、曇らせを見る為ならなんだってなぁ!
◇
「はぁ……はぁ……ようやく、か……」
あれから1時間痛みは続いた。
途中で何度も意識を失いそうになったが曇らせの為と思い全力で耐えた。
体の内側に感じる膨大な力……俺は力を得ることに成功したのだ。
『やはり我の見込んだ通りだったな』
直接脳に魔神の声が響く。
「お前、この状態でも会話ができるんだな」
『ああ、これからはずっと一緒だ。』
この状態が一生続くのか……
考えていることが全てコイツに見透かされていると思うと少し不快だ。
だがまぁそんなのは些細なことでしかない。俺は俺のなすべきことを成す。
『ところで貴様、名前は?」
「速水蒼太だ。」
『ふむ、我はヴォルディア。よろしくな。』
「ああ。」
『ところで今、中々の力の魔族が魔法少女と戦っているようだが……どうする?」
そう言われて俺も試しに目を閉じて気配を探ってみると確かに魔法少女と大きな力を持つ魔族の存在を確認できた。
「ああ、もちろん行く。」
さぁ、曇らせを拝む為に行こう。
【あとがき】
最後までお読みいただきありがとうございます! 作品のフォロー、最新話から出来る作品の☆評価、感想などをいただけますと励みになりますのでよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます