第12話
まあ、水中ショーとかマジックとかは初めて見るし、屋台も不思議なものが多くて普通に楽しめますね。 しばらくブラブラしていると、ある建物が目に留まりました。
「あれ?」
あれは武具屋さんですか? この町の武具屋さんは初めてですね。 入ってみましょうか。
「カイル、フィア、こっちだ。ここを見てみよう」
「ここ……あ、武具店か、いいね」
「観光に来たのにこんなところですか。 まあ男は仕方ないですね、本当に」
いや、とりあえず個人整備の時間ですが。
武具店の店内は他の町の武具店よりも広く、品揃えも豊富でした。やっぱり街が大きい分、規模もついてくるようだ。
カイルはもちろん、フィアもとりあえず自分も装備するものがあるので、目を輝かせながら見物し始めた。
私は剣の陳列棚の方へ行って見物する。やっぱり他の村の武具店って、草原の村の方よりいいんじゃないのか?
まあ、草原の村側の出没モンスターは現実的に難しい奴はいないし、高額の依頼は他の村のほうからよく来るんだな。 そのせいもあってか、装備に気を使うようになるのか。
他の村の武具店もちゃんと見ておかなかったのが悔やまれる。
「おお……」
感嘆の声を漏らした。どれもこれも目を見張るような煌びやかな奴らだ。しかし、これ……高い。三人分のお金を集めれば、かろうじて安いもの一つくらいは買えるだろう。 大都会怖い。
私は自分の腰に巻かれた剣を見る。 草原の里の訓練所で初級コースを修了した後に手に入れた鉄剣だ。
私たちは3人とも初級コースを修了し、それぞれ私は剣、カイルは短槍、フィアは片刃の斧と円形のスモールウッドシールドを一つずつもらった。
地味に見えるが、どれも基本性能に忠実な良品の鉄製武器である。
ちなみにそれまで地上から持ってきた武器を限界まで使いこなしていたので、正直嬉しかった。でもやっぱり良い剣が目の前にあると、一つくらいは欲しくなるものだ……
ちなみに中級修了記念として、布製の鎧を受け取り着用中。良品で軽くてある程度の防御力があり、見た目も悪くない。
「おお……」
カイルとフィアも新たな境地を目の当たりにして感嘆しか出てこないようだ。こいつら、語彙力低くないか?
やがてカイルが言った。
「それにしても、これ結構高いな、高嶺の花か」
「そうですね、まあ草原の町のお店より質が高い方、高いんですね」
「まあそれはしょうがないし、でもせっかくここまで来た以上、このまま帰るのはもったいないし、買えそうなもの一つくらいは選んでおきたい」
「え? エミル君、そんなにお金あるんですか?」
「え? いや、私の資金事情をよく知ってるでしょ?」
「あ、選んでおいて後で買うんですね?」
「いや、パパ(フィロス)にせがまれる。さすがに一つくらいは買ってくれるだろうし」
「……3人分のお金を集めれば、1つくらいは買えるかもしれませんね。 エミルが欲しがったら、私たちは手伝うことができるん ですよ?」
「いや、私の意見は聞いてないけど」
カイルが言った。
「じゃあ、何を買おうかな。 やっぱりここは良心的なコストパフォーマンスというところですね?」
「とりあえず買うのは確定か。 しかも良心的に買いたいのか。 もう買ってくれるという点で、まともな良心じゃないんだな?」
カイルのツッコミを尻目に、再びゆっくりと陳列棚を見る。うーん……悩ましいな。
「あの、お客さん、何か困ったことがあったら呼んでくれてもいいんですよ?」
店内を2周半ほど回ったところで、私はカイルに尋ねた。
「カイル、どう選べばいいかな?」
「俺が出すって言ってないから? 俺も買いたいから? とりあえず選ぶのは難しいな、俺もあまり見たことないし。個人的には……ここでしか見られない個性的な武器が価値がありそうだな」
「おお、そうみたいね」
「お客さん、まだ選んでますか?」
カイルの話を聞いて悟りを開いた私は、改めて武器を見る。 クオリティーは全体的にこっちがいいけど、直剣はやっぱり一本あるし、あちらの曲がりくねった剣を中心に見てみようか……。
いや、あちらの突き刺し重視で作られた剣も初めて見る。やっぱりあっちか?
「すみません! 大丈夫ですか?」
私の目の前に眼鏡をかけた美人の女性が顔を突っ込んできた。思わず顔を近づけてしまう……のではなく、ギリギリ離れて状況を把握した。ソフィアが舌打ちする音が聞こえる。
「はい、はい」
「あ! やっと聞こえたんですね! 私の声に問題があるのかと思いました!」
カイルが店員らしき人に笑いながら謝った。
「ごめんなさい、そうじゃなくて、元々あいつが言うことをよく聞かないだけで、悪い奴じゃないんです」
それは確かに良い奴の描写とは思えませんが。
「もしかして、選ぶのに困ってるんですか?」
「ああっ!いいえ!ちゃんと選ぼうと思ったら種類が多くて選びにくいだけで、時間がかかっただけです!」
硬い!俺、きっとモテ男狙ってたんだろうな! ぐずぐずしてるし!
「そうなんですね、ちょっと手伝わせてもらえそうです。 使用している武器の種類や、主に狩りをされている地域がどこなのか教えてもらえますか?」
「えーと、私たちの武器はとりあえず槍、斧、剣で、水の神殿跡に行こうと思っています」
そういえば、フィロスは何を使ってたっけ? 特に見たことないな。
「水の神殿跡ですか?」
店員が笑みを浮かべながら言う。なんとなく水の神殿跡の扱いがどんなものかわかるような気がする。 不安感が募る。
「はい。それで準備中なのですが、何かオススメはありますか?」
店員は複雑な心境を隠しきれない様子で淡々と言う。
「あの場所は、ベテランの冒険家も敬遠する場所なんですよ。 行って帰ってきた人を見たことがないという話もありますし、深海の怪獣が出るという話もあるんですよ」
「そうですね。そう聞きました……深海の怪獣? リザードマンのことですか?」
店員さんが首を横に振って答えます。
「いいえ、リザードマンは単なる門番で、古くからの街の伝説によると、深淵の怪獣が水の神殿跡に訪れたそうです。 街は怪獣の呪いによって汚染され、街に訪れたすべての人を怪物に変えてしまうそうです」
「どこにでもある怖い話ですね。 そんな話は嘘だから怖くないですよ」
「でも、戻ってきた人がいないから……」
さっき聞いたから、わざわざもう一度聞きたくなかったんです。
「もしかして、その街の伝説について、もっと詳しく知ることはできますか?」
フィアが尋ねた。 彼女が少し考えてから答える。
「詳しくと言われても、そんなに具体的なことではないので、私が知っているのはこれで終わりですが……もしかしたら、神殿にいる水の神官さんは何か知っているかもしれませんね」
街の中心にある神殿か。カイルが私たちに言う。
「一度行ってみよう。これはお宝の匂いがするよ」
「そこのどこを宝物と関連付けたんですか? そして、理由があまりに世俗的なので、とりあえず神殿では口を出さないでください」
なるほど、次はそこへ行ってみようか。 私は店員に挨拶をする。
「情報ありがとうございます。 申し訳ないのですが、先に確認することがあるので、また今度来ることにします」
「いえ、それは大丈夫です。 それよりも、もし神社で面白い話があったら、私にも教えていただけますか?」
店員が目を輝かせる。昔話が好きなのだろうか。
「わかりました、ではまた今度」
私たちは武具店を出て神殿に向かった。
◆
神殿は他の建物に比べて大きい方で、中央の噴水の北側からすぐ見えます。特に何もなく神殿に……入ることはできず、入場料を払わなければならないという。というわけで、反射的に後ずさりしてしまった。 ちょっと考えて入ろうか。
さて、神官と話をしなければならないが、この中にいる人の中で誰を捕まえるべきか。奥には礼拝している人がいて、統率のためか神官が何人かいる。それとも入り口にいる人と話すか?
考えているうちに、カイルがいないことに気づく。何処に行ったんだろう? 周りを見渡すと、神殿の入り口の外側の片隅に子供たちが集まっているところにいることに気づく。子供同士で遊んでいるのだろうか?
「おお、やあ。集まって何してるの?」
カイルが言う。子供たちは見知らぬ人の登場に戸惑いながらも答える。
「シスターが来るまで遊んでいるんだ」
「そうか」
私はカイルは置いておくことにした。まずは入り口にいた一応神官服を着ていると思われる人に尋ねる。入る前はこの人しかいないですね。
「こんにちは。聞きたいことがあるんですが、ちょっといいですか?」
「はい。どうしたんですか?」
「西の神殿跡にまつわる都市伝説についてなのですが」
「……ええと、はい?」
「そちらで捜索してみようかと思うのですが、何か参考になるような話をご存知ですか? 伝説でも構いませんよ」
彼は少し面倒くさそうに答えた。
「そちらはただの古い建物で、価値のあるものはないでしょうから、行かない方が寿命にいいですよ。 リザードマンも強いですし」
「あ、そうなんですか。 でも、もしかして何かご存知かと思って。 深淵の怪獣とか聞いたことありますか?」
「都市伝説でしょう? そういうのは図書館に行けばもっと詳しく書いてあるはずです。 私は興味もないし覚えてないので、入らないのであればどいてもらえますか?」
「ご回答ありがとうございます。失礼しました」
私は後ずさりする。図書館を探せたんだな。 入って他の人に聞いてみるべきなのか? しかし、入口の人の反応を見る限り、神殿だけで語り継がれているような話はなさそうだ。 もしかして地位の高い人は知っているのだろうか?
……何かここから難易度が跳ね上がるようだ。地位の高い人にはなかなか会えないだろうし、まずは図書館に行ってみることにしよう。
神殿の外郭に行き、カイルを呼ぶ……いつの間にかソフィアも一緒だったな?
「カイル、フィア、一人に聞いてみたけど、知らないようだ。内部伝承みたいなものもないみたいだし、まずは図書館に行ってみたい」
「そうか、じゃあ私は行くわね、また今度ね」
「え、私たち今やってることまだ終わってないのに」
子供たちがつかまったようだ。ソフィアが子供たちに言う。
「今、先にやりたいことがあるんです。 また今度必ず遊んであげるね?」
子供たちはまだ未練があるようだ。 その時、一人の神官がこちらにやって来た。
「ここで騒ぐと中の礼拝の邪魔になる。他の場所に行きなさい」
「う……私たちはここの西側の保育園にいるんだ。 丘の上に建物が一つしかないからわかりやすいよ。後で遊びに来てね!」
子供たちは言葉を残し、遠くに走って行った。子供って、なかなか迷いを断ち切るのが難しいですね。 後で行くしかないのでしょうか?
「じゃあ、私たちはとりあえず図書館に行きましょうか」
「わかった! そのあと保育園に行くんだ!」
それはまだ未定だけど。
◆
図書館で遺跡や街の昔話に関連するものを探したが、文字通り昔話のようなものしか見つからなかった。遺跡に関しては、武具屋さんで最初に聞いた話より良い話はなかったし。
通りすがりの人に聞いたところ、昔はそのような伝説がよく語り継がれていたが、時間が経つにつれて虚構と考える人が増え、世間の関心から忘れ去られていったようだ。
その後、夕暮れ時、まだ太陽は昇っているが時間も迫っているので、宿に向かう。
「うん、こんなところに建物があるんだね」
カイルの言葉に、彼が見上げる丘を見ると、丘の上に建物が一つある。あ、そういえば子供たちが丘の上の建物の話をしたけど。
「あそこは子供たちの家じゃないの? まだ時間もあるし、寄ってみない?」
「うん!賛成だ!」
こうして、宿と方向も似たような保育園を先に訪れることにしたのであった。
保育園の庭に子供たちが集まっているのが見えた。そこに年配の女性も一人いたが……あれは神官服の人?」
「こんにちは。子供たちに話は大体聞きましたよ」
カイルを子供たちに送った後、話を始める。
「昼間、私が留守の間、子供達を見てくれていたんですね、ありがとうございます」
「いえ、私たちも暇だったので、一行も楽しかったので良かったですよ」
「ほほう、それは良かったですね」
彼女が軽く笑いながら言う。いい機会だし、ついでに聞いてみようか。
「私たちは冒険者として、かつての水の神殿跡について調査しているのですが、もしかして関連する情報とか、水の街の伝説みたいなものを知ることができますか?図書館で絵本のようなものを見たことがあるのですが、特に何も書かれていませんでした」
「はは、子供たちに話すことが多いので、昔の話なら多少は知っていることで、できる限りお話しさせていただきます。 遺跡ですね。 では……まず、古代の水の都の滅亡について話さないといけないと思うのですが、ご存知ですか?」
「いいえ」
「実はこの水の都は比較的最近建てられたもので、もともと水の都は別にありました。古代の水の都は海の上に浮かんでいたそうです。
都市はそれだけ技術が優れており、それゆえに豊かさを享受し、永遠に繁栄するものと思われていました。 都市の人々はその状況に安住し、技術の進歩と発展を怠っていました。
やがて、水の都は自分たちの技術力すらも耐えられなくなり、すべての機能が停止し、海に沈んでしまいました」
老婦人は言葉を止めた。
「古代都市について私が知っている昔話といえば、この程度です」
おお、まったく新しい話だ。しかも、ちょっと具体的なんだけど?
「怪物の話はないんですね? そして、今の話から判断すると……」
少し間を置いて言う。
「西の遺跡は古代の水の都ではないんですね?」
あれは地上にある。
「そうなんですね、怪物は全く触れられていませんね。 西の遺跡は……あはは。 そうなんですね、あれは古代の水の都ではないんですね。 何か別の用途なんでしょうか」
別の用途とは、ちょっと唐突な語彙の選択だが……とりあえず覚えておこう。 広く伝わっている説話と老婆の話がちょっと合わない。どちらが間違っているのだろうか? しばらく考えて言った。
「怪物は、単に古代の水の都に近づかないようにする目的で作り話なのでしょうか?」
「そうですね、そうかもしれませんね。 それなら目的のために虚構の噂を流したのでしょう。 それとも何かの比喩なのでしょうか。 そこまでして水の都に何か隠し事があるのでしょうか。 でも、誰もが噂を信じるわけじゃないでしょうし、いつか誰かには真実が明らかになるはずです」
仮説ばかりが延々と続くね。 よくわからない。
「ほうほう。無駄に言葉が多くて、若者の思考を混乱させてしまいましたね。 おそらく地上での話だけでは、これ以上掘り下げるのは難しいでしょうね。 これは伝説ですし、物語の裏事情が地上に伝わっていないかもしれませんから」
しばしの沈黙を破り、そばにいたソフィアが口を開いた。あ、一緒に聞いていたんですね。
「詳しいことは行ってみないとわからないんですね?」
「ははは、まあそうでしょうね。 こういう時は千回想像するより、一度でも真実を見たほうがいいんじゃないですか?」
「そうですか……ありがとうございます。いい話でした。
「いや、最近はこういう話に興味のある若者がいないので、私も嬉しかったですよ。 また何かあったら言ってくださいね」
「はい。じゃあ、また今度」
そろそろ日が暮れてくるので、帰らなければならない。カイルを呼び出し、宿に足を運んだ。
◆
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