第10話
地の村から帰ってから2ヶ月後、フィロスの呼びかけで再び集う。
「やあ、フィロス」
「久しぶりだな」
「今日の用件は何だ?」
「次の予定だ。空気の村に行くんだ。 凧揚げ大会があるんだ凧揚げ
「やっぱりピクニックですね? 今回は世紀の凧とか、一体何になるのか楽しみですね?」
「ああ、もちろん目標は優勝だよ。他にはないでしょうね」
「もしかして、世紀の~シリーズなんて覚えてないんじゃないの? で、今回の賞品は何なの?」
「剣だ。おそらくアーティファクトだろう」
「大会と賞品が異質じゃないですか? 普通の武闘大会でしょう?」
「そりゃ犠牲者出やすくて不穏だろう。 平和第一主義だ」
そうですか。
「戦うことばかり考えてはいけない。脳が筋肉でバカになるだろう。 今は技術で食べていく時代だ」
「筋肉トレーニングばかりさせるのはあなたですからね? そして、私たちが今やってる目的を忘れてませんか?」
「ああ、世紀の彫像を作ることだろう」
「この野郎...!」
すっかり忘れてしまった!私たちは毎日筋肉痛で頭がおかしくなりそうなのに!!!
「まあ、興奮するな。彫刻も後でゆっくり覚えるんだ。 まずはシンプルなものからだ」
「凧ってシンプルだったっけ?」
「いや、シンプルに終わらせるつもりはない。
覚悟しておけ」
「いったいどうするつもりですか?」
「じゃあ、すぐに準備しろ。明日出発する。」
◆
空気の町は建物と建物の間隔が広く、のどかな感じがする。 また、風車が付いた不思議な建物が多かった。
「わぁ!あれは何ですか、不思議な形をしていますよ!」
「風車というもので、あれで力仕事が省けるそうだ。空気の町は機械装置の技術が発達していて、その関係の技術者がたくさんいるそうだな」
「わぁ!ここに一人で動く不思議なおもちゃがあるよ!エミール、こっちに来いよ!」
「エミール、待って 」
フィロスが私を呼ぶ。
「ここが宿の場所だ。そして、変な奴らが可愛い女の子を連れ去ろうとするかもしれないから、日が暮れるまでフィアを連れてきてくれ。何かあったらお前に仕返しするぞ。それと、あれは時計仕掛けらしいから、フィアに伝えてくれ」
「あなたもフィアの父親の娘バカを共有しているのでは? そして私ではなく、誘拐犯の方をどうにかしてください」
「何かが起こるかもしれないから、食べ物を買ってもこのお金の30%は残しておけ」
「「はい!お父さん!行ってきますね!」」
私はお父さんを置いて、ソフィアと一緒に見物をしに歩き始めた。
◆
「エミール! ほら、きれいでしょ?」
私がそちらに近づくと、フィアはすでに別の店を見ています。
これって本当に私の意見を聞きたいの?
「エミール、こっちだよ、右と左、どっちがきれい?」
「私は右利きだから」
「だから? どっち?」
ちくしょう...めんどくせえな。
いつの間にか日が暮れて、フィアがようやく少し疲れたのか、ペースが遅くなる...。あれ?
フィアが再びどこかの店に入っていく。 追いついてみると、凧屋さんで、あちこちに凧が飾られている。部屋の中は暗い。
...
このシチュエーションって経験ありますよね?
「おい、フィア、気をつけて-」
びり。
「......」
店主が出てきて、私とフィアは凧を破ったことを謝る。
「これ、大会出品用なんだけど、どうするの!?」
まあ、私たちも参加するんですね。
◆
日が暮れて宿に集まった。
「さて、簡単に私たちのスケジュールと大会の詳細について話そう。 明日から一週間、凧を作る。大会の評価基準は、審美性、機能性、利便性などで総合的に採点される。簡単に言えば、とにかくうまく作れ。
...うーん、エミル君は何も言わないね。 もう知っていたのか?
はい。私はフィアと凧屋であったことを説明する。
「まあ、製作は好きにしなさい。僕もしばらくは忙しくなるから、じゃあ一週間後に会おう。食事は忘れないでくれ」
◆
翌日から、フィアと壊れた凧があったお店で、店長の指示に従って凧作りを始めた。
フィアがクスクスと笑う。
「なんかこういうの、楽しいですね。 エミールもそう思わない?」
「なんか君、私と感覚が合わないみたいだから、私に安易に同調を求めないでね」
私は刃に切られ、接着剤の匂いに染まった手を動かしながら、乾いた声で言う。店長は仕事にうるさい人で、一例として1mmの誤差も許さない主義だ。
「えぇ~、せっかくならもう少し楽しくやろうと思うんですよ。 そんなことあったら仕方ないでしょう?」
当事者はあなたで、私は巻き込まれた方なんですけど...
まあいいや。今更思い直したところでどうしようもないし。
さっさと手を動かしましょう。
「ところでエミールって、やっぱりすごいですね! 私も手先の器用さにはかなり自信があるんですけど、エミールはもっとすごいことにしてるんですね?」
「うーん、よくわからんね、そうなのかな?」
「うんうん!私が言うからには間違いないわよ! すごいよエミール!」
「へへへへ」
あっ、このままではいけない。こいつが原因であることでヘラヘラしている場合ではないのだ。
「エミール君、優勝してね? 欲しいもの一つ叶えてくれるから?」
えっ! 耳がパッチリ開く。何でもいいって言ったんだ...。何でもって言ったんだ!!!
「フフフフフフフ...」
「うさんくさい考えが顔に出るからやめなさいよ?ちょっと怖いから? 強引なのはスルーしますから?」
◆
そして一週間後、大会の表彰式に参加する。
「みなさん!風の国杯凧作り大会のクライマックスです!果たしてどんな素晴らしい凧が私たちを待っているのでしょうか...?」
「待望の...
...9位は、フィア様!」
「おお、よくやったフィアちゃん、前回より上がったね?」
「ふふーん、そうでしょう? 私は成長する子ですからね」
「いや、そろそろ年齢もあるし、お嬢様の身持ちを身につけてもらえませんか?
まあ、前回のように私が色々とお世話になったこともあり、やはりあれこれと並行しながらこの成果ならすごいことだ。
「...4位、カイル様!」
お前も成長するキャラだったのか!あと3回大会に出れば本当に1位になりそうなのは冗談じゃないんだな?
「...2位、エミル様!」
「やったね!エミル君」
「いや、待てよ。このパターンだと...」
「1位は、フィロス様です!」
やっぱりおまえだったか。
「フィロス様は、他の凧と違って、爆発物を搭載して、より高く、そしてより速く凧を飛ばすことができました!」
あれ、ただの爆弾じゃないんですか?
フィロスの作品を実際に見てみると、確かに凧の形をしている。下部に何か機械装置もぶら下がってるし... これはどう見ても風の力で飛ぶものではない。
もはや凧のカテゴリーではないようですが?
ピロスが無表情で爆弾とトロフィーを持って振ると、人々が歓声を上げる。もう何が何だかわからない。
「あれ、凧って言っていいのかな? なんか違う気がするけど...」
うんうん。観客の中にも正常な思考をする人がいた!
「イケメンだからいいじゃん、こっちも見てよ!」
顔でしたか、顔で買収したんですね。くそっ...世の中は不公平だ。
俺があそこにいたらこんなに歓声を上げなかっただろうか。
「エミル君は俺が応援するから、心配ないよ?」
ん? 横を見ると、フィアが私の表情を見上げたままにっこり笑っている。
何だこいつは...私の考えを読んだような言葉だ。
「ああ、かわいそうなエミール。2位のエミール君は、誰も探してくれないんですねぇ~」
「そういう意味だったのか。 慰めじゃなかったのか」
「いや、慰めですか? とにかく暗い顔してたから?」
「君はもう少しフィロス以外の人から慰め方を学ぶべきだと思うよ」
それにしても、ちょっと惜しいな。 前回のこともあって、ひょっとしてと思ったけど、フィロスは越えられなかったのか。いや、優勝を逃したことよりも、フィアに屈辱的な要求をする権利がもったいない。くそっ...!
「可哀想だから、特別に前に言った願い事、一つ叶えてあげるよ?」
やっぱり考えが読まれてますね?
「うおおおお!!じゃあ今すぐ!」
「でも優勝じゃないから、内容によっては私が断りますよ?
「もしかしてその権利って、使い道ありますか? どうやら簡単な買い物の用事くらいしか使えそうにないので」
「ふふっ、よく考えてみてくださいよ、滅多にない機会ですから?」
「よく考えてみる。そして、私の心を読むな。怖いから」
「え? 私はそんなくだらないことはしませんよ。 エミールは見ればわかるから」
「あなたの中でエミールの考えを読むことに何の価値があるんですか? それと、私はこれから表情を固める練習をするから」
「やあ。お疲れさまだった」
いつの間にか授賞式が終わったようで、フィロスがふいに飛び出した。
「ほら、これがトロフィーだ。かわいそうだからあげるから」
「もらわなくても大丈夫ですか?」
弁償のために仕方なくトロフィーを受け取り、凧屋の店長に渡す。店長は一度は断ったものの、何度も頼まれ、結局受け取ったもので、実はこいつもツンデレだったのでしょうか。
「いや、まあ、店長の教えもあって、私は言われた通りにしただけなので」
「ありがとう。でも謙遜しすぎないでね。あんたは元々腕のいい奴だ。俺がいなくてもよくできたし、お嬢さんも同じだ」
「え? 私ですか?」
ソフィアが予想外のタイミングの呼びかけに驚いたように反問した。
「そうよ。お嬢さんも潜在能力が半端ないわよ。 こいつの後始末に追われてまともに集中できなかったでしょ。
いや、むしろこいつより上手かったかもしれない。 お嬢さんの方が1位に近かったかもしれない。
考えてみれば、やっぱりこいつが問題だ! このクソ野郎!」
「怒りの対象への思考回路が歪みすぎませんか? 先ほどのフィロス線で終わらせてくださいよ?」
最後に店長にトロフィーを渡し、空を飛ぶ凧と爆弾を眺めながら思いにふける。
ここに来て経験したことを振り返る。陶芸大会や凧揚げ、トカゲの手伝い、あるいはトレーニングで日々強くなり、一歩ずつ成長していくこと。どれもここに来て私が成し遂げた素晴らしいことですが、どれも誰かの助けがあった。
もし私一人だったら、どこまでできただろうか?...
「エミール、余計なことを考えずに早く来い。お前一人だと無駄に時間を浪費し、寿命が尽きるのが早いだろう。 周囲を利用しろ」
「あなたも考えが読めるのですか?」
「いや、一人じゃどうしようもない顔をしていたので」
私ってそんなに簡単な奴だったんですか?
「うん、違いますよ」
「え? 何が?」
ティアさんの否定を聞いて、意味が理解できない私が問い返す。
「エミール、もし一人だと思ったら、私がエミル君を見ていることを忘れないでね?応援しているから?」
...もし私一人だったら、どこまでできるだろうか?たぶん5分で終わるだろうね。 だって、一人でやることはとても退屈だろうし。
◆
「うん、違いますよ」
「え? 何が?」
「エミール、もし一人だと思ったら、私がエミル君を見ていることを忘れないでね?応援しているから?」
ちょっと寂しい思いをしたんですね?
「やっぱりフィアちゃんは、私のことが好きなんですね、そうでしょう?」
この男...調子に乗りすぎている。
「いや、今のエミル君は嫌われるかも...」
「どこがいいんですか? やっぱり顔ですね、私、顔に自信があったから?」
「いや、どこに行ってもそんな話はしないように気をつけてください。恥をかきますよ」
そんなおっちょこちょこちょいな顔。私以外の人はちゃんと見てくれないから。
「じゃあ、どこがすごいんだ?」
「うーん...。正直言って、今のエミールってそんなにすごいところはないですよ。 2位だし、歓声もほとんどフィロス君に奪われたし? 認知してくれる人もいなかったでしょう? フィロス君とかカイル君とか、私なんて、認めてくれる人がいたのに」
彼がまた落ち込んだ。あ、ちょっとおとなしくなりましたね。
あまり落ち込まないでね、エミル君は心さえあればすごいことができるんだから。 きっとその時には、本当にたくさんの人がエミル君を知るようになるわよ。
「でも、私はちゃんと知ってますよ?エミルのいいところ。ふふっ、そうよ、もっと甘えてもいいわよ、お姉ちゃんだから!」
赤ちゃんになったエミールが私に飛びかかる。ふふっ、それまでは私が独占しますよ? だってエミールがすごいこと。私以外誰も知らなかったから?
◆
え? その手袋は何? どこで買ったの?
こいつがくれたの?
「ねえ、これどこで買ったの?」
手袋は本当にきれいだ。手の甲に星があしらわれた可愛い手袋だ。お父さんに買ってもらおうか?
「えっ、これ...?買ったんじゃないよ」
「じゃあ、どこでもらったの?」
「俺が作ったんだ...」
「ホント? すごいね!大人が作ったみたい。 私も作ってくれる?」
「え? うーん...。一回だけ、なんとなくやったからよくわからない...」
「じゃあ、一回やってみろ!目の前で!」
うわー!本当にやっている!大人の技術者みたい!私も裁縫くらいはできるけど、この子は革の手入れまでできるんだ!
「すごいね! 名前は何て言うの!?」
「私? 私は...。エミールだよ」
「エミール!こっちに来い!」
6歳で手袋を作る子って、きっと頭がいいんだろうな! 私と同じように!
「ここがうちの書斎だよ! これ読んでみて!」
両親の書斎にある本を見せると、理解が早い! 話が通じました! すごい!
「キャンプしたことある? パパと一緒にキャンプしよう!」
すごい! 釣り竿を投げるのが本物の釣り人みたい!ミミズもよく釣れる!私はよく力を入れすぎて切れてしまうんだけど。
お父さんと一緒に罠を仕掛けている。あれは危ないからパパは私にやらせてくれないけど、エミールはちゃんとやってる! 羨ましい...。
「本当に? 自分で料理するの? 両親が長期出張で、食べるものを自分で用意するの? すごいね!私も食べたい!一回やってみよう!」
私は親が包丁と火は危ないからやらせてくれないけど、この子とならできそうだ!包丁はこんな小さいものを使うんだね。 怪我をしないための手袋みたいなものもあるんだね。不思議だ!うわー!本当に美味しい!
しかもこの子、本で見た食材の性質や温度の変化による物質の特性みたいなのを理解してる! すごい! 元々知ってたのか、それとも家で見たものをすでに応用してるのか?
「お前、走るのは得意か? ダンスは? .......ふははは!何それ!」
うーん...激しく動くのはちょっと微妙。でも、自分なりにこっそり頑張ってるんだけど、時間が経つにつれて上達してるのが見える!これは...これはこれで面白い!
「あぁ、帽子が飛ばされた!どうしよう、木に登れるかな?え? 君が乗ってみる?
...うわー!すごい!木にも乗れたんだね。 え? 乗ったことないの? じゃあ言えばよかったのに! でも持ってきたの? すごいよ!」
「楽器やったことある? 初めて? じゃあこれ一緒にやろうよ!」
一緒にやるのはいいね!この子は覚えるのが早い!もう私と協奏曲もできるよ! すごい!
面白い!この子が手袋を作るのが面白い!本を読んだり、罠を仕掛けたり、料理を作ったり、楽器を演奏したりするのが面白い!走ったり、踊ったり、乗ったこともないのに木に乗ったりするのが面白い!
ほとんどのことを私と同じくらいできる!いや、私よりできるんじゃないの? 私がどこまでできるかは自分でもよくわかるけど、この子はどこまでできるのかわからないのが面白い!
でも、他の子たちはこの子にあまり興味がないね。 なんでだろう、こんなにすごいのに。
うーん...そうなんだ、この子、普段からやる気がないんだね。 私と一緒にいるとき、私と一緒にやること以外はそんなに頑張らない。 勿体ない。私よりできるのに。
でも、私がいるときは頑張るでしょ? 応援してあげると、ちょっとだけ頑張ろうとするのも面白いよ!こっそりこっそり頑張るのも楽しいよ!
よし! 私がそばにいてあげよう!こいつがめちゃくちゃすごいことになって、みんなに知られるまで!だって、こんな面白い子を知らないなんて、もったいないよ!
◆
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