第10話 リアル

インターホンを何度か鳴らす。寝とるんかな。帰った方がええやろか。グズグズしとったら「カズ?ごめんね待たせちゃった………」ドアを開けて驚いとる。俺やなんて思うてもみんかったようでポカンと口を開けた。「…木戸くん、なんで…」その顔は明らかに泣き腫らしていて、たまらず抱きしめた。


え…?木戸くん?なんで?!ちょっと待って、俺もしかしてずっと夢見てたの?!………だって木戸くんに抱きしめられてる。「泣いとったんか?大丈夫、俺がおるよ」ほら、やっぱり夢だよ、夢と同じこと言ってるもん。そっか、じゃ俺も言っていいよね。「ありがとう。木戸くん大好き」木戸くんの腕に力がこもる。「夢みたいや。ホンマ夢ちゃうやろか」


!!

やっぱり夢じゃないの?!ウソでしょ、俺、夢だと思って、好き、なんて言っちゃったじゃん!でも…木戸くんは俺を離そうとしない。それどころか顔がゆっくり近づいて…「俺も池田が好きや」優しいキスをされた。


何度めかのキスのあと、まだ玄関だったことに気がついて慌てて部屋に招いた。その間も木戸くんは繋いだ手を離さない。本当なんだ、本当に俺のこと好きになってくれたんだ。実感したらまた涙がこぼれてしまって、木戸くんはそんな俺を見てアタフタしながら「泣かんといて。あぁでも泣き顔も可愛い」なんて言うから、嬉しくて愛しくて泣き止むことができなかった。


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