第14話

お風呂に割り当てらりたのは三階の部屋だった。

狭い通路を通り、エレベーターのボタンを押すとすぐに来た。

今度はカートもないのでギュウギュウではない。二人の間隔が開いていた。

三階に着いた私は唖然とした。ブラックライトに彩られたフロアだったからだ。


「なんかすごいね」

「俺は見慣れちまったよ」

「かなめって女の子と……その、こうったラブホテルによく来るの?」

「ちげーよ。さっきの幽霊退治でよく着ているだけで、客として利用するのは、今日が初めてだ」


私は一抹の不安が去って、ぐちゃぐちゃになりそうな気持がホッとした。なに不安になっているのよ。私たちなんて、何も関係ないんだしさ。こんな気持ちになるなんて変だよ。

今日は色々ありすぎちゃってわかんないや。


「ここだ。入れよ」


部屋に入ってさらに驚いた。

ここは何の部屋?って、感じるほど廊下と同じくブラックライトに彩られ、DJブースやらキラッキラのミラーボールがある。

何やらステージらしい円筒形の高台に、ポールが天井まで伸びた部屋だ。かなめはすぐに部屋の明かりを普通の蛍光色に変えてくれた。


「ここも面白い部屋だろ。音楽やポールダンスをする人たちに人気らしいぞ」

「この天井まで伸びているポールってポールダンス用なんだ。へぇ、知らない世界を見ている感じだ」

「料理ができる前にお風呂に入ってこようぜ。お先どうぞ」

「うん、ありがとう」

「ごめん、言い忘れてたけど今日だけはシャワーにしてくれ、湯船は清掃していないから使えないんだ」

「どうして?」

「清掃前の部屋ってことだから、前の客がどんな使い方をしたのかわかんないから……わかるだろ、湯船で、そういうことしていることもあるんだし」

「あぁ、そう言うことか。うん、わかった。シャワーだけにするね」

「ごめんな、こんな部屋で」

「かなめが謝ることなんてないよ。迷惑かけているのは私なんだから、でも覗くなよ!」

「いいから覗かないし、早く入って来いよ!」


私はランドリーバッグとグリムを一緒に連れて脱衣場に入った。

中は誰かが使っていたとはいえきれいな状態が保たれていた。

着替えを入れるであろう籠と、木製ロッカーが設置されている。

スーツの人もいるからなのかなぁと思って、ロッカーを開けると唖然とした。

中には袋に入ったコスプレ衣装がずらりと並んでいる。一体何着あるのかと思うほどの量だ。制服にナース服、幼稚園児用のピンクのスモックまである。見なきゃよかったと思う一方で、開けて正解だった。未使用のバスタオルを発見できたからだ。

二つあるからかなめと別けて使えるね。

安心してききたから服を脱ぎ、生まれたままの姿になった。

そうだ、かなめが覗きに来ないようにグリムに見張りを頼んでおくわ。


「見張りは頼んだぞグリム」


私は部屋の入口に向けてグリムを置いた。うん、これでよし。

シャワーだとはいえ、暖かいお湯を浴びれる喜びはひとしおだ。

バスルームに入るとさらにびっくり。広ろーーい!

家の三倍以上あるバスルームに驚きを隠せない。

浴槽は丸いジャグジーで、お湯が残っていた。

清掃って大変そうだなと思いながら、シャワーを浴びる。

シャンプーやコンディショナーが四種類もあって迷いつつも一種類を選びんだ。ツバキッスという最近はやりのシャンプーとコンディショナーのセットでを使うことにした。

ボディーソープもツバキッス。全部揃えたら高そう。


「ふぅ、さっぱりした」


私はバスルームから出ると髪を丹念に拭く。

ツバキッスは髪の毛が舐めからで香りもいい。

そして見張りをしていたグリムに検討のエールを送った


「グリム、よくぞ覗きを撃退してくれた」


と敬礼をする。

洗面所には最新型のマイナスイオンドライヤーが設置されていた。

これって三万円するやつじゃないの。さすが都会のホテルは違うわ。家じゃ五千円のドライヤーなのに。

三万円の高級ドライヤーで髪を乾かしながら、悪戯を思い浮かべてしまったのだ。

さっきの聴診器が籠の中に入っていたし、これを使ってなかめを驚かせないかなーと思っていた。

なぜ思いついたのかも私にもわからない。かなめを驚かせてやりたい一心だった。なんでたろう? まぁいいか。

私はクローゼットを開けて、ある一着を取り出し袖を通した。

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