第4話

東京の道は分からない。

地図通り歩いてはずなのに、地図に載ってない路地があったりしてGPSをオンにしていても、迷子になりそうだ。

たしかにこの辺りなんだけどなぁ。

違う違う。ここじゃないくもう一本先だわ。地図に載ってない路地に入って間違えるところだった。

「GPS機能も当てにならないわね」

もう一本先の路地に入るがこれも違うみたいだ。東京ってなんでこんなにも複雑なのよ。人が多く住みすぎているのよ。きっとそう。

私なりの身勝手な言い訳をしつつ探索を続けた。

これではらちがあかないわ、誰か知ってそうな方いないかなぁ。

すると、路地で井戸端会議をしている奥様方が居た。

この辺の情報ならおばさんたちの方が、よく知っているはず。


「あのー、お話し中すみません」

「いいのよ。 それで何かしら?」

「この辺りで、高見沢さんのお宅をご存じありませんか?」

「高見沢さんのお宅なら、そこの白い塀があるでしょ。 そこを辿っていけばあるわよ」

「そう、この塀よ」

「辿っていけば着けるから」

「あら、あなた高見沢さんのお坊ちゃんの彼女?」

「えっ!? いえ、そんなんじゃありません。ひよりちゃんのお友達です」

「あぁ、ひよりちゃんの方ね。 おばさん勘違いしちゃった。 やーね」

「おっほほほほほほ」

「……はぁ、あの、ありがとうございます」


深々とお辞儀をして、その場をサクッと去りたかった。根掘り葉掘り聞かれるのは嫌いだし。


「お坊っちゃんとか言われてたな。 ひよりの家ってすごいのかな」


この壁はどこまで続いているのであろうか、曲がりくねりながら、行けども、行けどもたどり着かない。

そして門らしき構えが目についた。あの辺りにあるのかなぁ。

この辺りはみんな豪華な邸宅が並んでいる。やはりお金持ちなのかも。すごいなひよりちゃんの家。

豪華で立派な門構えに到着すると、表札を見て驚いた。


──高見沢


この塀がひろりちゃんの住んでする家!?

めちゃくちゃデカいんですけど、今まで歩いていた塀のすべてが、高見沢家であった。

だからおばさんは、塀沿いに歩けってそういうことだったんだ。

中を覗くと高級外車が数台並んでいた。その奥に家らしき建物が見える。

とりあえず呼び鈴を押してみることにした。


──ピンポーン。


緊張のあまり、音まで高級に聞こえてくる。

すると男の人の声が聞こえた


『どちら様でしょうか?』


かん高くも低くもないちょうど声の透き通るような、初老の男性の声が聞えであった。


「あっ、あの私、えっと、春風朱美って言います。 高見沢ひよりさんに会いに来ました」

『かしこまりりました。ひより様に確認いたしますので、少々お待ちいただけませんでしょうか?』

「はい、お願いします!」


恐らくこの口調からすると、執事ってやつかしら。

これだけの邸宅だもの使用人がいてもおかしくないわ。

しばらく待っているとインターホンから先ほどの男の人の声が聞こえた。


『お待たせして申し訳ございません。ひより様に確認をしましたが、あなた様を存じないとおっしゃっております』

「えっ!? そんなもう一度お願いします。SNSのツイツイで知り合った春風朱美ですとお伝えください!! お願いします」


驚きのあまり、最後の方は声が細くなっていくのを感じた。


『ツイツイでございますね。 少々お待ちくださいませ』


どうしよう、そうだツイツイでダイレクトメッセージも送ってみよう。

”私、朱美です。家に来ちゃった。執事の方から聞いてると思うけど、突然来ちゃってごめんね。驚いたよね“

送信。これでどうかな。


『春風様。お待たせしております。 ひより様はやはりご存じないとおっしゃっておりますゆえ、お引き取り願えませんでしょうか?』

「そんなー、ひよりさんに直接合わせてください!」

『その必要はございません。 お引き取り頂けないとあらば警備員を派遣いたします』

「わかりました……すみませんでした」


今にも泣きだしそうな声色で通話を終えた。

終わった。頼りにしていたひよりちゃんから見捨てられた。

そうだよね。SNSで知り合った人なんかが、来られても困るよね。

涙で目の前がかすんで見えた。


「君、ここで何しているんだい?」


その時、私の前に男の人が声をかけてきた。

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