第3話

「ツイツイとかしてる」

「はい、ツイツイはしています」


よしと心得た咲奈はツイツイ交換を申し出る。


「いいですよ、じゃあこれでと」


と、出してきたのは彼女のトップ画面だ。

そこには“春美”と書かれていた。春風朱美だから真ん中を取ったのだと思った。

咲奈はさっそく検索をして春美のアイコンを探し出した。


「これだよね」

「はいそうです」


咲奈はさっそくフォローボタンを押下する。

フォローリストに咲奈のであろう“海月”が追加された。


「咲奈、こり海月うみつきってのでいいのかな」

「うんそれそれ、うみつきって書いて海月くらげっていうんだ」

「きれいですね」

「水族館でもさ、見ていて飽きないんだよね」

「フワフワしていて不思議な生き物ですよね」

「不思議と言えば、手に持っているぬいぐるみも不思議だね」

「これは私が手作りした子なんです。グリムって言います」

「そうかグリムっていうのか。よろしくな」


そういうと咲奈はグリムの頭を優しくなでてくれた。


「ありがとう。でも変じゃないかな」

「かわいい猫型のぬいぐるみだと思うけどなぁ」

「一生懸命作ってよかった」

「あっ次降りる駅な」

「はい」


私は自動で開くドアにはなれず、ついボタンを探してしまう。

ここは電気街として有名な駅だった。だが看板のほとんどがアニメやゲームのキャラクターだらけだ。

すごいことになっていると、圧倒されていると


「乗り換えする電車はこっちだよ」

「あっ待ってください」


エスカレーター上の階へと進むがホームが見えてこない。すごく入り組んでる駅だ。

長い上り坂を超えるとホームが見えてきた。ここにも放送中のアニメの看板が貼ってある。

東京駅ほどじゃないけど人々が行きかっているが、みんなどこに行くのだろうか。

そう思っていると黄色い電車が入線してきた。そうか路線によってカラーが違うんだ。だから行先を間違えなくて済むのね。


「さぁ乗った乗った」

「待ってください。荷物重いんですってば」

「ずっと気になってたんだけどさ、今日って平日じゃん学校ある日だよね」

「……それはそうなんですけど」

「もしかしてなんだけどさ、家出とか」

「どうしてそれを……」

「どう見ても見慣れない制服で、大荷物だしさ何となくそう思ったんだ」

「……やっぱりそう見えますか」

「修学旅行に来た多様には見えないわな」

「ですよね……あっははははは」


笑いにならない声で笑って見せた。


「ところでさ、泊まるところあるの?」

「ツイツイで知り合った人のところにお邪魔しようかと」

「大丈夫なのか? 会ったことある人?」

「会ったことはないんですが、話が合う方です」

「危険はないの? 男の人?」

「いいえ、高見沢ひよりさんという女性の方です」

「高見沢ひよりねぇ。 聞いたことがあるような……偽名の可能性はない?」

「修学旅行のお土産を渡したりして、お礼のお手紙貰ったりしましたので大丈夫……なはずです」


スマホを確認するが、ダイレクトメッセージの返信はまだない。

やっぱり突然すぎて迷惑だったかな。


「もしさ、ひよりさんがやばかったら、私の家に泊まりに来てよ」

「でも迷惑じゃない?」

「迷惑だなんて、一緒にパジャマパティーしようね」

「ありがとう親切にしてくれて」

「私達もう友達だよね。 よろしく」


咲奈が握手を求めてきた。細くて白くてとてもきれいな指をしている。

私は咲奈と握手を交わした。


「じゃあそういうことで、万が一のためにLIME《ライム》の交換もしておこうよ」


早速LIMEをのIDを交換をした。


「次の駅だよ。 旭野町駅」


列車のモニターにも旭野町駅を伝える表示が出ている。


「とりあえず改札まで行くね」

「そこまでしてもらわなくても、悪いですよ」

「友達なんだしそれくらいはさ」


咲奈はとってもいい人だなぁ。それに比べて私は家出人だし。

私も都内で生まれ育ったら違ったのかなぁ。

自己嫌悪に陥るな私。一歩を踏み出したばっかりじゃないか。ファイトだ、おー。

駅に着くと地図を見てもらい、東口だということがわかった。ありがとう新しい友達の咲奈。


「万が一がないことを祈っているけど、その時は私に連絡を頂戴ね」

「うん、本当にありがとう」


最初の一歩を踏み出そうとするが、自動改札機を前に戸惑ってしまう。


「咲奈、大変だよ。 切符を入れるところがないですけど!」

「最近はsneakers《スニーカー》って、ICカードが一般的になったから、切符使わなくなったね。 ほらあそこなら切符が使えるよ」

「最後の最後までありがとう」


私は半泣きになりながら咲奈に抱き着いた。


「いいこいいこ。 大丈夫時期に慣れるよ」

「うん、慣れるように頑張る!」

「よし行ってこい!」

「じゃあね」


自動改札を無事に抜けると、咲奈に手を振ってお別れをした。

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