第5話 エーテルギルド
病院のモンスターとの死闘から3日が立ち
ある程度の準備が出来たというので俺は
エーテルギルドに行くことにした。
この3日間あの力についてずっと考えていた
なぜ無属性で魔法が使えなかった俺に
突然として現れた炎の力、そして謎の声…
何度か力を体に付与してみようとしたのだが
あれ以来一切発動しなかった。
それどころかマッチ程度の火もつけられない。
(はぁ…)
思わずため息をついてしまった。
(ちょっと!なにボーッとして歩いてるの?
もうすぐつくわよ)
アリシアは相変わらず俺に声を荒らげる
まぁ確かに俺だってあれは駄目だと分かる。
なんなら誰にだって分かる。
でも仕方ないじゃないか、あのままだったら
もっと被害が出ていた、カズだって死んでいたかもしれない。
(先輩っ!俺は先輩カッコよかったと思いますよ〜!だってほらあの炎の力!ちょーヤバかったですもん!くぅー!シビれたなぁ〜)
カズはいつものように微笑んで腕を組みながら
ウンウンと頷き当時を語る。
(恥ずかしいからやめてくれ、あれ以来俺は
力を出そうにもどうやって出していたのか
分からないんだし)
王都が見えてきた。
空に突き刺すように何本もそびえ立つ塔
頑丈な門、建物は青々とした色でその存在感を漂わせる。
アルカディア王国の王都だ。
(アリシア・セレナよ!!門を開けなさい!)
アリシアが声を張ってそう言うとすぐさま
ガラガラと重たい門が開いた。中へ入ると
そこには活気溢れる人々で賑わっている。
高貴な服を来た女性、せかせか走る行商人
立ち止まって楽しそうに話す人々
護身用の武器を真剣に悩んでいる大柄な男
パッと見ただけでもこれだけいるのだから
さすがは王都と言ったところだ。
俺は基本的に貧乏だったからこんな街には縁がなかったし、見る事もないと思っていた。
初めて見る光景はまるでお祭りのように見えた。
(先輩、もしかして来るの初めてですか?
目がキョロキョロしまくってますよ、ウケる!)
声高々にカズが笑い飛ばす。
(なんだよ、仕方ないだろ俺はこんなとこ
人生で来なかったかもしれないとこなんだから)
(2人とも、観光気分を止めなさい
そろそろエーテルギルドよ)
相変わらずピリピリしている。
そんなにピリピリしててストレスが溜まらないのだろうか。
でもまぁハンターはこれくらい警戒心を張っていないと駄目なのだろう。
でなきゃ何かあった時に不意打ちを受けるだろうから。
一切の油断を許さないような立ち振る舞いだ。
にしてもカズはなんでこんなに陽気なんだ
アリシアと同じハンターだってのに
こいつは油断してるようにしか見えない。
でもあの時モンスターが出る前に危険を察知してたしハンターにはやはりそういった感覚が研ぎ澄まされているのだろう。
俺にはまだ分からない感覚だ。
アリシアは城下町の裏路地のようなとこに入り
淡々と進んでいく
何回か右に左に進んだが道が複雑で覚えられないような構造になっている。
国が隠しているというだけあって一般人は
辿りつけそうもない場所を通っていく。
しばらくすると壁に手を当てアリシアは
合言葉のような言葉を口にした
(汝、我と共に覚醒せん、祝福の導きを開示せよ)
すると壁がゴロゴロと転がり大きな部屋が
目の前に広がっていった。
(おおおぉーーー!アリシア少佐!久々ではありませんか!!!)
太く低い声で駆け寄ってきたのは茶色の髪に
無骨な顔とゴツゴツとした筋肉にちょび髭を生やした
アディールという名の少し失礼そうな大柄な男だった。
アリシアはフッと微笑むと
(久々だな、アディール軍曹調子よさそうで何よりだわ)
(そりゃもういつも絶好調であります!
して!そこの青年2人は?スカウトですかな?)
アディールは興味津々に俺とカズを足の先から頭のてっぺんまで舐めるように見つめていた。
(冗談やめて、聞いてないの?あの事件の2人よ)
するとガッハハと笑いながらアディールは答えた
(分かっておりますよ!少し冗談を言ったまでですぞ!)
ゴホンと喉をならして続ける。
(初めましてだな、お二人とも!レオとカズだったな!俺はアディール・ゾイド!適正魔法は地属性だ!
防御にも攻撃にも使えるこの魔法最高だと思わねぇか?お二人さんのこと教えてくれよ!!)
やはり思った通り、人の領域にズカズカと入り込んでくるタイプだ
俺はこーゆのは嫌いじゃないが少し圧倒されるので得意じゃない。
(えっと、俺はレオ・アスト…)
そこにアリシアが割って入ってくる。
(やめて、そんな時間ないわ。それよりも
エリックマスターはどこにいるのかしら)
アディールは少し残念そうな顔をしながら
(エリックマスターならここの最奥にいやすぜ
少佐のこと待ってますぞ)
(ありがとう、行くわよ2人共)
このギルドの中は皆忙しそうだった。
武器を綺麗に磨くハンター、走り周り伝達をするハンター
魔法の訓練をしているハンター
剣の稽古をするハンター
瞑想をして魔法の精度を高めるハンター
多種多様のハンターが集まり各々がやるべきことをやっている。
しばらくアリシアに付いていくと今度は甲高い
女性の声が聞こえた。
(あぁーー!噂のお二人さんだぁー!
ね!ね!私!ここよ!やっと来たのね!)
元気な声で呼び止めたのはフィーナという名の
小柄な女性
髪は金色で特徴的なのは目が金色と銀色で
分かれていてオッドアイを持つ女性だった。
顔はかなり整っている、愛想もいい
うん、嫌な予感がする。
(えー!なにー!俺達やっぱ有名人ー!)
カズがキラキラとした目で大きく手を振った。
やはりこいつは女性好きだ、ほんとにハンターか?
と思うくらい少年ぽさが抜けないやつだ。
まぁ俺はそう言うとこが可愛らしくて好きなんだが
(はっじめまして!私、フィーナ・ライト!
よろしくね☆ねーねー、アリスねぇーさん〜
こーんな可愛い男の子達2人も連れてズルいぃ)
口をすぼめながらアリシアに抱きつく。
アリシアは若干鬱陶しそうに
(アリスで呼ぶのはやめてくれと言ってるじゃない)
(アリス?)
カズは不思議そうな顔をして呟いた
(アリスっていうのはね?アリシアの愛称なの!
昔からアリスとは仲がいいんだっ☆)
(フィーナ、私達は今マスターに早く会いに行かなきゃだめなの、後で色々教えてあげるわ)
フィーナなも少し残念そうな顔をして(はーい)と
返事をしたあと元いた場所に駆け足で帰っていきながら手を振る。
(お二人さん!マスターとの話終わったら
色々聞かせてねー!私の事も教えてアゲル☆)
カズもまた手を振り返しながら
(すぐいきまぁぁっす)
とニヤニヤしながら答えた。
ヒヤッとした、これはアリス…アリシアに睨まれた
カズも感じたのかスッと姿勢を正し視線を上に泳がせていた。
はぁっとため息をつくと
アリシアは何も言わずに歩き出した。
怖い、女性ってなんでこんなに怖いんだ。
(ついたわよ、この扉の向こうにマスターがいるから粗相を働いたら…)
(働いたら?)
しばらく沈黙が続いた。
なんだ教えてくれないのか、余計緊張する。
この扉の奥で待っているマスターとは
どんな人物なのか、なにを言われるのか
ここから俺の運命の歯車が一気に回りだしていく。
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