第4話 深淵の炎
モンスターの邪属性の力が徐々に収まり、俺は炎に包まれた自分の姿を見下ろした。体から放たれる力は、これまで感じたことのないほど強力で、そして心地よかった。
体は赤い炎に包まれ、それは徐々に形を変え、まるで鳥の翼のように広がった。
瞳は燃えるような赤に変わり、髪も同様に鮮やかな赤に染まる。
カズはその光景に目を見張り、驚きと安堵が混ざり合った表情を浮かべていた。
「先輩…一体、何が…」
しかし、レオは答える代わりに、モンスターに向かって一歩踏み出した。
モンスターは怒り狂い、再び邪属性の力を集め始めたが、レオの炎がそれを圧倒するかのように輝きを増した。
(この力でお前を倒す!)
レオは一気にモンスターとの距離を詰め、猛スピードで突進した。彼の動きはハヤブサのように速く、モンスターの目にも留まらない。炎を纏った拳がモンスターの体に直撃し、その瞬間、爆発的な炎が周囲を包み込んだ。
(お、俺の風属性以上の速さ…!?)
カズはあまりの力にただ見つめるしかなかった。
(グゥオオオオッ)
モンスターは苦しげに叫び声を上げ、その巨体を揺らした。レオは続けて攻撃を加え、モンスターの巨腕を炎で焼き尽くし、全身に炎を纏わせながら再度猛攻を仕掛けた。
(もっと!火力を上げるっ!!!)
力を引き出してモンスターの腹部に炎を纏った拳を叩き込むと、モンスターの体は爆発的な炎に包まれ、その巨体が崩れ落ち次第に灰と化していった。
(ハァ…ハァッ…)
燃え盛る炎の中で立ち尽くすレオ。その新しい力は圧倒的な威力を見せつけ、ついにモンスターを倒すことに成功したのだ。しかし、レオの体から放たれる炎は次第に制御を失い、暴発し始めた。
(グッ!?う!うわぁぁぁっ!!)
(先輩、落ち着いて!!)
カズは叫んだが、レオの瞳には焦点が合っていなかった。炎は周囲の木々や建物にまで広がり、危険な状況になっていた。
その時、一人の人物が現れる。長い銀髪をなびかせ
目はキリッとした美しい女性だった。
(なんの騒ぎかと来てみれば…なんなのよあれは)
彼女は両手を広げ、レオの炎を抑えるために自身の力を解放した。
(タァッ!!)
彼女の力は水の属性を持ち、清らかな水流がレオの炎に対抗するように広がった。
しかし暴発した炎を抑えるまでにはいたらない。
(ちょっと!聞こえる!?あなたの力を制御しなければ、すべてが灰になるわ!)
(先輩!戻ってきてくださいよ!!)
すかさずカズも声を掛ける。
レオは苦しそうに顔を歪めながらも、声に反応したが彼の内なる炎はますます暴れ、レオ自身の体も耐えきれないほど熱くなっていた。
(落ち着きなさい、自分の中の力を中心に集めるのよ!!)
レオは深く息を吸い込み、意識を集中させた。炎の力を内に収め、暴発を止めようと全力を尽くした。彼の周りの炎は次第に収まり、やがて完全に消えてたあと肘をつき地面に座り込む。
それと同時に髪は元の白髪に目は黒に戻った。
(収まったわね)
顔を下に少し傾けふうっと息をはき胸を撫で下ろす。
カズも安堵の表情を浮かべ、レオの元に駆け寄った。(先輩、大丈夫ですか?)
(ああ、大丈夫だ。ありがとう、君は?)
(私はアリシア、アリシア・セレナ
アリシアでいいわ)
(ありがとう、俺はレオ・アストラル
アリシア助かったよ)
(で、あなたあんなデタラメな力を使って!!
どういうつもり!!)
アリシアは声を荒らげる。
(先輩はピンチだった俺を助けてくれたんだ
仕方なかったんだ)
すかさずカズは言葉を挟んだ。
(だからといって病院の近くで力のリミッターを外して戦っていいとは限らないわ!周りを見てみなさいよ)
病院の周りの木々は焼け焦げ荒れ果てていたが
カズの危機感地の素早い対応とアリシアの水属性で炎を和らげたこともあり病院は比較的無事だった。
(す、すまない)
俺は返す言葉が見つからずただ謝るしかなかった。
するとアリシアは飽きれたような顔をして
(はぁ、まぁいいわ、、レオあなたには
王都エーテルギルドに来てもらうわ)
(王都エーテルギルド?)
初めて聞く名前だ、秘密の施設かなにかだろうか
(先輩、王都エーテルギルドってのは
国の中心にあるハンターが集まる場所なんす)
(あら、あなたもハンターなの?なら話が早いわこの乱暴者を連れて行くわよ!)
突如として無属性の俺に発現したこの力の詳細が分かるかもしれない
そう感じながらも付いていくことにしたのだった。
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