第3話 新しい力


カズが緑色の短剣を取り出してモンスターに向かって突進していく中、レオは必死にその場から離れようとした。しかし、左腕の痛みと負傷の影響で動きが鈍く、思うように進むことができない。


(くそ…このままじゃカズが…)


レオは痛みを堪えながらも、カズの戦いを見守ることにした。カズはモンスターの前に立ちはだかり、短剣を構えながら自身に風の力を纏ってパワーを強化したと同時に目と髪が少しだけエメラルドに近い色に変化する。

モンスターは、地面を踏みしめてカズに向かって突進してくる。


(グオオオオオオオッ!!!)


(ッ!?なんて威圧感、だけど!!)


カズは冷静にモンスターの動きを見極め、一瞬の隙を突いて高速で移動した。緑色の短剣がモンスターの体に突き刺さると、カズはすぐに次の攻撃の準備をした。


(これで終わりじゃないぞ…!)


カズは短剣をもう一度構え、足に風属性を纏わせてさらに瞬発力をあげてモンスターの弱点である腹部を狙った。しかし、モンスターも黙ってはいなかった。巨大な腕を振り上げてカズを攻撃しようとする。


(カズ、気をつけろ…!)


レオの心配をよそに、カズは体をひねってモンスターの攻撃をかわし、素早く短剣を振り下ろした。モンスターの腹部に深い傷が刻まれ、巨体が揺れる。カズはその隙を逃さず、目にも止まらぬ速さでさらに攻撃を加えていく。


(これで決める…!)


全力を振り絞り、緑色の短剣をモンスターの心臓部に突き刺そうとしたその瞬間、モンスターは力を振り絞り、強烈な打撃を放った。カズは吹き飛ばされ、壁に激突してしまった。


(カズ!)


レオは絶望的な気持ちで見つめた。

カズは苦痛に顔を歪めながらも立ち上がろうとするが、体が思うように動かない。


(まだ…終わりじゃない…)


モンスターはすかさず力を溜め始める

すると体の周りには赤黒いオーラを纏わせ

空気がビリビリと揺れる


(グオオオオオオオッ!!!!)


(赤黒い…まさか邪属性…!

モンスターが魔法を使うだなんてそんな…)


邪属性は闇属性から派生した負の属性

主に闇属性の人間が力を不適切に

高めることにより発現されたとされる稀なもの。



モンスターはカズに目掛けて邪属性のオーラの

塊を一点に集中させ放った。


(カズ!!)


痛みなど忘れていた、それよりも気付けば勝手に

カズを助けようと体が動いていた。

病室の窓から飛び出した瞬間なぜかその時は

体を自由に動かす事ができた。


(グァァァァッッ!!!!)


邪属性の塊がレオを直撃する

体はバキバキと悲鳴をあげ全身をピラニアに

食い千切られるような痛みが襲う。


(そんな!?先輩!!!うあっ!!)

すかさずカズが振り払おうとするがあまりの

エネルギーにまた吹き飛ばされる。


(俺は…死にたくない、嫌だよ…母さん…)


???( **Τώρα ξυπνήστε!**)


頭の中で何かが聞こえた、響いた、その瞬間

レオの体から赤とオレンジのような炎が噴き上がり

邪属性の塊を消滅させる。


(こ、この力は…?)


体は前よりも何倍も軽く、痛みも消えそれどころか

左腕が再生し傷が瞬く間に閉じていく

まるで焚き火に当たりながら風を浴びているような

心地良い感じまでした。


(気分がいい、多分今ならあいつに負けない)


レオを纏う炎はさらに火力をあげ緊迫していた

周囲を包むかのように柔らかく落ち着かせた。


(先輩…?髪が赤く…?腕まで…あれは…炎属性?

でもあんな炎は初めて見る…)


レオの変貌ぶりにカズは体を動かすことを忘れていた、それどころかなぜか安心するまでに至っていた。



突如としてレオに発現した新たな力

これは、魔法が当たり前の世界にただ1人無属性で生まれた青年の物語だ。


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