第2話 天変地異

(ミャ〜…ミャ〜…)

薄っすらと苦し紛れに鳴く猫の声が聞こえてくる

朦朧とした意識が少しずつ鮮明になってきたが

辺りは真っ暗でなにも見えない。


(ここは…俺は…どうなって…ヴゥ!!!)

体を動かそうとすると猛烈な痛みが走る

意識が回復していくとここは瓦礫に埋もれている場所だと理解し抜け出そうと体を動かすが同時に痛みも鮮明になってきて逆に動かせない。


左腕の感覚がない、長い間潰れていたのだろうか

(ミャ〜…ミャ〜…ミャ…ミャ…)

猫の声がどんどん掠れていっているのが分かる。


顔を右に向けると横たわる猫がこちらを弱った顔で助けを求めるようにじっと見つめていた。

レオは激痛に耐えながらも右手を猫の頭に乗せると



(よしよし…お前辛いんだよな大丈夫俺がいるから)



助けられるわけでもないのになぜかそんな言葉が出てきた、すると猫は目を閉じ呼吸を落ち着ける。


(おーーーーーい!!!誰かいるかーー!!

いるなら返事してくれーーー!)


突然誰かの声が聞こえて来た、すぐに俺は声を振り絞る


(こ、ここだ!!たすっ……けてくれ!!)


(なに!何処だ!もっと声を聞かせてくれ!!)


痛みで声が出しにくい、胸に瓦礫がのって上手く発声できない

(こ、こうなったら……ヴヴウアアアッッ!!グウゥウゥ)

声を出すには体を無理やり動かし

激痛で声を無理やり出すしかなかった。


(そこか!!待ってろ!すぐ行く!!)


すると辺りに風がフワッと巻き起こり瓦礫が宙に浮いていく

レオの体から瓦礫が離れたことによって呼吸が楽になった


(頼むここだ、ここに猫もいるんだ、助けてくれ)


(見つけたぞ!おいみんな!ここに白髪の兄ちゃんが埋もれてたんだ!手を貸してくれ!

もう大丈夫だ、君も風魔法で浮かせて運ぶぞいいね?)


(ありがとう…あとそこにいる猫も頼むよまだ

息があると思うんだ)


(猫?どこにいるんだ?)


(いや俺のすぐ右隣にいるだろう?)


レオが指をさし猫を確認しようとするとそこに

猫の姿はなかった。

(さっきまで確かにいたのに…)


(分かった別の奴を猫の捜索に当てるから君は今はジッとしていてくれ)


(あぁ、分かった、ありがとう)


きっと瓦礫が浮いたタイミングで逃げたのだろうか

そう自分を納得させることにした。


そうして俺はアルカディア王国の大きな病院に運ばれ手術を受けることになり全治半年以上を言い渡された。


どうやら1週間ほど瓦礫に埋もれていたらしく

ずっと潰れていた左腕は壊死して切断しなければ命が危なかったという。


聖属性魔法の治癒を医者使ったが再生までは出来なかったらしい。

体力も限界に近くあと半刻遅れていれば危なかっただろうと言い渡された。


しばらく入院することになり1ヶ月がたった頃ふとテレビをつけると

あの大災害についてどこのメディアもそれについて報道していた。


あんな巨大な竜巻は前例がなく、調べによると複数の魔法属性が絡み合っていたことから異例の天災とされ【天変地異】と名付けられていた。


(では次のニュースです、天変地異によってもっとも大きい被害を受けた街は【マナフロウハイツ】だということが新たに分かりました。)


(マナフロウハイツだって!?!?)


つい声を張ってしまった。

マナフロウハイツとは魔力溢れる豊かな土地で

レオの生まれ育った街だった。


(さらにマナフロウハイツには異型と呼ばれる怪物が地層から絶えず這い出ており街の被害は甚大、死者多数だと推測されます。特殊部隊が鎮圧にかかっていますが苦戦を強いられています。市民の皆様は近づかず出来るだけ離れて下さい)


異型と呼ばれるそれは体は黒く目は赤く光っていて

爪が長くまるでこの世の生物には見えなかった。


(そんな、なんだよこれ怪物…こんなのありなのかよ…父さん…母さん…)


一瞬で絶望の淵に引き込まれるような感覚に思わず心が折れそうだ。

そうすると病室のドアがガラガラと開き1人こっちに向かってきた。


(先輩!!レオ先輩!)


そこには涙を浮かべたカズの姿があった。

(カズ…)


(良かった先輩生きていて、俺ずっと先輩探してたんすけど見つからなくて…良かったっすほんと)


(ありがとうカズわざわざ心配してきてくれたんだな)


(なにいってんすか、当たり前じゃないすか、

はいこれ先輩の好物のリンゴっす)


涙をゴシゴシと拭きながらいつものようにニコッと笑っていた、でも少しその笑顔はぎこちなかった。


(ありがとうカズ、そんでなお前に頼みがある)


(頼み?)


(俺をマナフロウハイツに連れて行ってくれないか)


(なにいってんすか先輩!そんな体で!ニュース見たでしょう?もいるんすよ!?)


(それでも確かめたいんだあの街をこの目で

父さんと母さんが生きてるかもしれない

カズは街の手前まででいい、あとは俺1人でも行く)


涙を浮かべながらもその目は一点の曇りもない決意を感じさせた。


(分かりました、そこまで言うのならハンターになって下さい)


(ハンター?)


(そうです、あの異型…つまりモンスターを倒し生活してる人達のことです。)


(そんな人達聞いたことないぞ…)


(知らないのが普通なんす、本来国が隠していることですから)

(カズはなんで知ってるんだ?)


(実は俺、ハンターなんす、、仕事を抜け出していたのも逆ナンとかじゃなくて、緊急招集される時で…)


いつものカズの顔じゃなかった、今までに見た事ないくらい真剣な眼差しで俺を見ていた


(ほ、本当なのかよそれは、でもあの異型見ちまったし、本当なんだな)


(そうっす、マナフロウハイツに行くなら

ハンター登録して少し実力をつけてからでも

遅くないと思います。強くなきゃ助けられる人も助けられないですから…)


少し冷静に考えれば分かることだ

そうだ自分が死んでしまったら意味がない

レオは強くなる為にハンターに入ることを決意したのだった。


(分かった、カズ俺もハンターになるよ

魔法が使えなくてもなにかできる事くらいあるはずだ)


(ハイ!一緒にあんな奴ら蹴散らしてやりましょう!)


2人は強く手を握りニコッと笑いあったのも束の間

ズシンとした音が鳴り響く


(なん…)


レオが言葉を発する前にカズは外を見つめ危険を察知していた。

次第に音はデカく鈍く地面を揺らして近付いてくる


(先輩、出来るだけ遠くに逃げて下さい

あれは危険だ…)


カズが言った途端地面から人間の倍はあるであろう巨体が地面から爆破したような音と共に現れたそれは赤色の体毛に覆われた禍々しいモンスターだった


(なに言って…お前まさかここで!?

待て待てあんな奴…)


(いいから逃げて!!!俺があいつを殺す)

ビリビリとした声が俺の全身を貫いた。


(先輩は、みんなは死なせないぞ)



そう言うとカズはどこからか緑色の短剣を2つ取り出しながら窓から飛び一直線にモンスターへ立ち向かうのだった。







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