第4話 恐怖! ノースリーブ・ノーブラ老婆の夢
梅田のど真ん中、ノースリーブ、ノーブラで走ってくる老婆を目撃したその日の晩、見た夢はこんな夢でした。
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ついこの間、友人とイタリアンに行く約束をしていたんですよ。
梅田新阪急ビルの中にある●ョッキというお店。
俺は阪急電車の改札を出てJR方面へ向かい、陸橋を渡って新阪急ホテルへ向かっていたのですが……
後ろから猛スピードで走ってくる老婆が!
しかもノースリーブ、ノーブラなんですよ!
干し大根のようなオパーイが、ノースリーブの中で自由奔放に暴れております。
網膜が焦げた! と思うくらい、目の毒でしたね。
おばあたん、悪いけどね……。
消し去りたい!
俺の記憶から消し去りたいわ!!
もうワインいっぱい飲んじゃったよ、ホント。
そんな感じで飲んでいると、友人からショートメールが入りました。
「赤ちゃん生まれました。帝王切開です。思ったより大きくて2548gでした。名前はこれから考えるところです。」
と、可愛い赤ちゃんの写真が添付されてあった。めでたい、おめでたい! なによりだ。祝い酒だ。あかちゃんに乾杯!
こうしてかなり飲みすぎたその日の晩は、不思議な夢を見ることになるのでした。
夢の中の俺は、赤ちゃんが生まれた友人宅へ遊びに行っていました。
夫婦ともに僕の友人なので、気を遣うこともなく部屋くつろぐ僕。部屋を見渡すと、見るからに変わったおもちゃが転がっていた。
「一体、どこでこんなおもちゃ買ってくるんや? ネットか?」
僕は好奇心旺盛だなあと感心していた。
「まあシンゴさん、いらっしゃい。遠いところ良くきてくれましたね」
「君らの赤ちゃんの顔、見とかなあかんと思ってね」
すると、奥さんが赤ん坊を差し出してきて、俺の胸に抱かせた。
「良かったら...抱いてあげてくださいね。たくさんの人に抱かれると人見知りしなくなるっていますし……」
腕に抱いた赤ん坊の顔を見ようと顔を下に向けると、あかちゃんのお尻のおむつ部分にギターの弦が生えてきたのである。え? と思った瞬間、部屋が一気に暗くなり、まばゆいばかりのスポットライトが僕らを照らしだした。赤や黄色の照明が色とりどりに会場を包み、いつの間にか、部屋の向こうにはぎっしりと詰まった観客がペンライトを振っていた。
え?何これ? コンサート??
キャーキャーと黄色い歓声が飛び交う中、ドラムがスティックをタンタン鳴らして曲が始まることを知らせる。
「あワン、トゥー、ワントゥースリーフォー...」
そのままライブ開始、ギターの俺はあかちゃんを抱いたままのけぞり、髪を振り乱して赤ちゃんのお尻の弦をライトハンドで掻き鳴らした。
「イエーイ! 乗ってきたぜい! フウー!!」
ボカン!ボカン!と後ろで花火が上がり、僕は飛び上がって観客にファンサービス。
「ちょっと、ちょっと、そんなにあかちゃんを振り回したらだめですよ」
「え?」
気がつくと、元の部屋に戻っていた。
あれ?さっきのは一体・・・。僕は怪訝な表情で赤ちゃんのお尻を確認すると、やはりギターの弦みたいなものが張ってあった。とにかく、こいつは危険だから触らないようにしよう……僕はそう思った。
そうこうしていると、その奥さん、今度は変な薄いゴムの帯みたいなものを持ってきた。伸縮性のあるのような素材だ。
「なにこれ?」
「これはね、あそばスーツよ」
「あそばスーツ?」
「あかちゃんにきせて遊ばせるからあそばスーツって言うの」
「へー」
「これを着せて遊ばせてもらえます?」
「ああ、いいよ」
すごい、ゴムみたいに伸びるよ。これ赤ちゃんが着たらきつくね?
俺は手順書を見ながら、赤ちゃんにあそばスーツを装着させていく。
まずこれを着せてから、次にこのボディ・アーマーを装着...と。
最後にあかちゃんは首のすわりが悪いから、首を固定するギブスを装着して完了だ。
「出来た...と。ところでこれは一体なに?」
「あかちゃんて自分の意志で立って歩いたりできないでしょ? このスーツはね、それを補助するためのボディスーツなのよ。これを着ることによって、あかちゃんは自由自在に動きまわることができるってわけ」
「へえ。」と感心していたら、右わき腹に鈍痛が。
「うゲッ!」
ボディスーツを来た赤ん坊が、僕のわき腹を蹴ってきたのだ。
俺はしばらく声もでないくらいに痛かったが、再度赤ん坊がこっちに近寄ってくるので、あわててあとずさりして、攻撃をかわした。赤ん坊はちゃぶ台に突っ込み、ちゃぶ台が二つに割れた。もちろん、赤ちゃんは無事という設計である。
「ダー、ダー」
赤ん坊は無邪気だ。なんの悪気もない。
うん、それはわかる。でもなんか危なかったよね? 俺。
「ダー、ダー」
赤ん坊が、自由気ままに、高速ハイハイで移動をはじめた。
一体どこにいくつもりなんだ!
バキバキバキ・・・
家の一角の壁が崩壊した。
「バブーバブ」
まるで、おもちゃの積み木を壊すかのように、破壊活動を繰り広げる赤ん坊。
「バブ」
なにかを見つけたみたいだ。ビー玉みたいなもの。
それをつまみあげ、口に入れようとしたら、あそぼスーツがそれを阻止。
「アー! アー!」
こんな危険なスーツなのに、そんな細かい芸!
いやいや、そんなことに感心している場合ではない。
止めないと。
「まあ!私のあかちゃん! 一体これはどういうこと!?」
「いやだから、知ってて着せてるんじゃないの? あなた」
「今日が初めての装着よ」
「そんなもの客の俺にさせるなって! 一体どうやって止めたらいいんだ?」
「背中にあるダイヤルを赤の方向に回せば、パワーが落とせるって書いてあったわ」
「あれか、あのダイヤルだな、よし……」
俺は背後からジリジリと赤ん坊近づき、さっとダイヤルを赤に回した。
するとどうだろう。ミュンミュンミュンといった妙な電子音が鳴り響き、赤ん坊が押していた大黒柱がメキメキメキとなぎ倒され、家の大屋根が庭へと倒壊していったのである。
「きゃあっ!」
「わわわわ!」
音を立てて崩れ落ちて行く、新築一軒家……。
「違うだろっ! ダイヤル逆じゃねえかてめえ!」
俺たちが庭へ避難した時、あかちゃんスーツは巨大化し、最終形態へ変形していた。赤ちゃんに罪はない。だが、無邪気であるがゆえに被害も大きいのだ。
しばらくすると、伸縮したスーツのゴムが、お尻のオムツに張られた弦に触れたのだろうか、ミュージックスタート。
ゴキブリゴキブリ
バターンキューパターンキュー
知らない人には申し訳ないが、殺虫剤のCMソングが、ギラギラしたライトアップとともに流れ始めた。
僕の顔は青ざめていた。いや、ブルーのライトが当たっていただけなのかもしれない。
「あのダイヤルを逆に回すことはできないのかしら?」
「だめだ巨大化したせいで、ダイヤルに手が届かなくなってしまった!」
「ダイヤルは今どのへんにあるの?」
「メカの首のあたり……10メートルくらいの高さだ」
「いい考えがあるわ。まかせておいて」
「何! それは本当か?」
彼女は静かに頷くと、部屋の奥へと消えていった。
俺は消えた彼女の背中をずっと目で追っていたが、しばらくすると奥の方から走ってくる人がいる。
ふと見ると、上半身裸の老婆が、全力疾走でやってくるのだ。
なんじゃ?
「おばあちゃん!お願い!」
するとおばあちゃんは、上半身裸状態で上下運動をはじめたので、それに連動しておばあちゃんの干し大根のようなオパーイが、円をえがくように体をグルグル回り始めたのだった。
なんとそれは、ゴキブリバターンキューのCMダンスなのだった。
「うわっ! 目がやられた!」
「辛抱……辛抱してくださいっ、シンゴさんっ!」
そのうち、回転する老婆のオパーイから風が巻き起こり、砂埃が舞った。そして、老婆のオパーイがくるくる回転しはじめ、やがて猛烈な勢いで回り始める。
それはまるで、双翼機についている2つのプロペラのように、グルグル回転しだしたのでだった。
「こいつ、飛ぶ気か!」
俺は目を細め、砂埃から目を守るように手の平をかざしながら、その様子を見守った。
「おばあちゃん!羽はあるの?!」
僕がそうさけぶと、おばあちゃんはニヤリと笑いながら、団扇を2つ見せてくれた。
やがて、準備が整いました~とばかりに走り出す老婆。彼女はしばらく助走した後、地面を一蹴りして空へと飛び上がるのだった。
ブーンという轟音とともに空中に舞い、旋回して、まるでゼロ戦のように優雅に北の空を旋回していった。
そして、徐々に赤ん坊の背後へと迫っていく。
目に眩しい、肌色のプロペラ。ああ、誰か俺を殺してくれ。
目が腐る……。
「シンゴさんっ!」
「俺はもう駄目だ、おばあちゃんの毒にやられた!」
「シンゴさん! 気を確かに! ああ! おばあちゃんは両刃の剣だと思ったんだけど、こんな結果になるなんて!」
そういって俺は夢の中で死んで、朝、目が覚めたのだった。
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