第3話 宇多田ヒカルに転生した夢の話


「ヒカル! 明日、僕の番組に……来てくれるかな?」

「いいとも~!」

どうやら俺は、アメリカ在住の宇多田ヒカルに転生してしまったようである……。


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お昼時に、宇多田ヒカルが全米チャートで1位になったとか、ならなかったとかのニュースを聞いて、海外で頑張ってたんやなあ、やるなあなんて思っていたら、その日の晩、なんと僕が宇多田ヒカルに転生してる夢を見たのですよ。


家の電話が7回目のベルを鳴らし、受話器を取ったら、電話の相手はアメリカ版のザ・ベストテンだった。


司会者はアメリカンなノリで「おめでとうヒカル! 君が全米でナンバー1になったよ! HaHaHa! ヒカル! 明日、僕の番組に……来てくれるかな?」と、しゃべりかけてくる。


なんか色々混ざってない?!! と思いながら、アワアワとパニックになっていた。


えーーっ? 俺が歌で1位だって? 照れながら狂喜乱舞する俺だったが、歌の実力は宇多田ヒカルのものなのだから、俺の力ではない。


それでも俺は恥ずかしそうに小声で、「いいとも~」と返事をしてしまうのだった(もちろん、その後に例の音楽が鳴る。チャーラチャッチャ、チャーラチャチャ~、チャラチャチャ、デデデデッ・デー)。


そして、舞台は番組の生放送へと移った。


音楽が流れだす。 


外見上が宇多田ヒカルである僕が、マイクを握り締めながら歌うのは、「Automatic」……の替え歌なのだった。


その歌詞がもう酷いのなんのって……あまりにもひどかったので、おぼろげに思い出しながら、1番を書くことにしました。


イメージして下さい。例の曲です。


曲名は「 嘔 吐 」


七杯目の芋 焼酎ロックをがぶ飲み


名前を言わなくても銘柄 すぐ 分かってくれる


唇から自然とこぼれ落ちるゲローゲロー


でも胃液を失った瞬間 一番しんどい


大酒飲んで寝た日は


寝相悪くて


布団がふっとんじゃう


アテを食わずにガブ飲み


酔いが回って自動的に 


こんにちは~


It's 嘔吐マジック


吐いているだけで みんなに見つめられるだけで


吐き気は止まらない トイレ間に合わない


I Just can't help


It's 嘔吐マジック


罵られると まるで地獄にいるみたい


キラキラ流れてて 目から涙出た


I feel so bad


It's 嘔吐マジック


客席からはスタンディングオベーションが沸き起こり、思わずオエッ、ってなった所で目が覚めました。


食事中のみなさん、大変失礼しました……。


普段、替え歌の作詞なんて、全然思いもつかないのに、夢の中で歌ってしまうなんて、一体どうしたんでしょうね。


まあとにかく、大勢のファンを前に歌うのはなかなかの快感。スターになるのも悪くない……そう思った朝なのだった。


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