彩とりどりの柘榴ねこ / feat.彩莉ざくろ
こんな話を聞いたことがありますか?
ネコを
八十八にもなる階段を上ったその神社に、
「にゃぁーん」
ヒグラシは鳴き、沈んでいく太陽の色が移った空。
風はそよそよと心地よく、夏の暑さをどこかへと運んでいく。
そんな夕暮れの時期に、一匹のネコの声がこだました。
ネコの見た目はよくいる黒いネコ……のはずが、空の色のせいか赤みもほんのり混ざっている。
さらには
「にゃん」
ふと、階段に目を向けたネコは一声上げると、気分良く
そんな後ろ姿はついて行きたくなるほど
待ってと思わせる姿が
声をさえぎるような風の音が気持ちの足をすくい、
「あの……大丈夫ですか?」
たそがれに吹いた風はネコの声すら捕まえて、どこかへ隠して、手の届かない場所へと連れて行った。
そう思ったところにポツリと、女性の声が割って入った。
空の色と同じ、うすいザクロ色の瞳と目が合う。
ひざを折り、少し首をかしげて目線を下げている女性は、衣装からすると神社の人なのだろう。
明るめの茶髪には、狐の白面ならぬ猫の白面の髪飾り。
髪も顔立ちも雰囲気も、ふわふわとした印象がある彼女は、
「立てますか?」
そうはにかみながら言う彼女は、そっとやわい手を差し伸べた。
コロンと女性の足元にザクロの実が転がる音がするも、彼女には聞こえなかったんだろう。
笑ったまま立ち上がる姿は
ひかえ目に歩き出した背中は、近寄りがたい
それなら音もなく
「ここに人が来るなんて珍しい」
影にはネコの耳と
人なのか、ネコなのか。
そう考えさせる赤と黒の
「そうだ」
ポンと何かを思いついた女性は、くるりと振り向いた。
「ぼくはざくろだよ。
ザクロ色の似あう女性──彩莉ざくろは、
そんな彼女に
「じゃあね。また会おう」
リンとなった鈴の音。そしてざくろのその一言で、空のザクロ色が神社を染めた。
次の瞬間にはざくろも、いたはずの黒いネコの姿もなく。
残ったのは優しく吹く、彼女に似た赤色の風だけ。
──そう。こんな話を聞いたことがありますか?
「あるかもね。もしかしてぼくのこと?」
耳にした話に対して、ざくろはネコのようにクスリと笑った。
大人しい
片結びの髪を止めるのは鈴のついたリボンで、彼女が動きを見せるたびにリンリンとなる。
まるで神社での彼女とは別人に近い印象の姿だが、ネコとはそういうものだろう。
ときには静かで、ときには
気まぐれで、柔らかくて、人を振り回す愛らしい存在。
それがネコ。そして、それが
「なら、ぼくの話をしようよ」
百年以上生きた
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