世に忍ぶ桜の怪物 / feat.忍
そんな
青年が一人、孤独な小屋の中で目を覚ました。
身を起こして
目指すのは外へ出るための引き戸。
しかし手をかけた引き戸は立て付けが悪く、何度か揺らすことでようやく開けることが叶った
──虫の知らせというべきか。
そんな風が青年の頬や背筋を
「
風の便りを送り出したのは、いったい誰か。
空に
まさか既に目を閉じた
結局、
だが視界の端を
「そちらか」
それは一本の桜の木。
お
月明かりは彼女を照らすことに不満があるのか、
一つ、そよ風が起こるだけでハラリと
「あれは……なんだ」
ヒラヒラと。
踊りを
根元の
大きさは
しかしここからではよく見えず、青年は桜へ近づく必要があった。
ならば、だからこそ。彼は不明の
「
既に青年は
見慣れぬ生き物を恐れ、くわばらと身を引くほど生に
ならば
そして一歩、また一歩と。
青年が近づき
「これはまた、見事なものよ」
それは
頭は
その
巨大で、人など一太刀で両断できそうな
しかし困ったことがある。
この
「さて、どうしたものか。お主はいったいなんだ」
どこから来て、どうしてここに居て、どこへ行きたいのか。
名も分からぬし、
問うても返ってこない疑問を口にして、
──だが桜の花弁が一枚、
一言でいうならばそれは
……だが。
「さっぱりだな。腹が減っているのか、それとも怪我か? しかし傷が見当たらん」
目の前の
しかし倒れている以上は何かに
だが
ならば、どうする?
「来るか?」
青年は手を伸ばした。
言葉が通じずとも良い、この手を払われたとしても当然だ、ましてや次に
相手は
この手を取るか、否か。
試すのだ。例え心に刃を通されるのだとしても。
「……そうか」
青年は笑った。
伸ばされた手に、そっと置かれた
恐る恐る伸ばされたものがだ、その刃は開かれず、ただ
──夜空に浮かぶは
されど人と妖は実を成らす。
そう、これは人と
世に忍ぶ、誰かと何かの物語。
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