第8話 お兄ちゃんVSメビュラスの戦い。

「京子ちゃん!」

 お兄ちゃんが思わず叫んだ。でも、今のお兄ちゃんは、変身している。

声でバレたらどうするんだ。私は、お兄ちゃんに話せないようにするしかないと思った。

「京子先輩、ケガはありませんか?」

「あたしは、大丈夫よ。でも、どうして、美月ちゃんがいるの?、それより、そこにいるの、仮面のヒーローさんですよね?」

 私は、その質問には答えず、普通に言いました。

「お兄ちゃんから聞いて、探しにきたの。おウチの人が心配してるから、帰りましょう」

「瓜生先生といっしょだから、平気よ」

 全然平気じゃないんだけど・・・ 今の京子先輩に、なんて説明したらいいかわからない。

「とにかく、こっちに来て」

「さっきから、どうしたの? 美月ちゃん、何かあったの?」

 私は、京子先輩の手を取って、引っ張ろうと思った時、メビュラスがそれを邪魔した。

「その前に、キミに、お願いがあるんだけど、聞いてくれるかな?」

「なんですか、先生?」

「ダメ、京子先輩!」

「言ったはずだ。私の邪魔をするな。忘れたのか。お前たちは、黙って見ていろ」

 メビュラスが怒鳴った。京子先輩は、目の前の先生の正体をまだ知らない。

私は、ただ見ていることしかできなかった。お兄ちゃんは、悔しそうにしている。

マスクに隠れていても、私には見えた。

「キミは、地球人だよね」

「そうですよ」

「地球を見たことあるかい?」

「テレビとかなら・・・」

「どう思う?」

「青くてきれいだと思います」

「その通り。地球は、青くてきれいな星だ。宇宙の星の中でも、もっともきれいな星なんだよ」

 京子先輩は、いきなりそんな話を聞かされて、不思議そうな顔をしている。

「その地球が、少しずつ壊れていってるんだよ。なぜだかわかるかい?」

「わかりません」

 少し考えてから、京子先輩が言った。

「地球人は、自分の星のことを知らないんだよ。地球が、どれほど美しくて、きれいな星だということを知らないんだ。それは、そうだろう。地球人は、地球の外に出られないんだからね」

 メビュラスは、静かな口調で、淡々と話し続けた。

「その地球が、壊されているんだ。それは、地球人と言う、人間がしているんだ」

 京子先輩は、いよいよわからないという顔をしている。

メビュラスは、先生の姿を借りて、さらに話を続ける。

「人間はおろかな生き物だ。海を汚し、自然を破壊し、罪もない動物や植物を殺している。そればかりか、人間同士戦争という愚かな行為で、殺し合っている。地球が泣いている。私はね、そんな地球を救いたいんだよ。だから、キミを地球人の代表として、聞きたい。あなたに地球をあげます。地球を助けてくださいと、言ってほしいんだ。さぁ、私に言ってくれ」

 メビュラスは、京子先輩に力説してそう言った。

果たして、京子先輩は、なんて答えるか? 返事次第では、私もお兄ちゃんも絶望するしかない。

私たちは、固唾を飲んで、京子先輩を見た。

「あげません」

 京子先輩は、いつものように、にこやかな笑顔でそう言った。

「なに?」

 驚いたのは、メビュラスだった。でも、私も正直、驚いた。

京子先輩は、意味がわかって答えているのか? 天然な京子先輩のことだから、かなり心配だった。

「あげませんよ。だって、地球は、地球人のものだから。あなたには、あげません」

「キミは、頭がいい子だと思っている。もう一度聞くよ。あなたに地球をあげますと、言ってごらん」

「あげません。先生は、何者なんですか? なんで、そんなことを聞くんですか?」

 さすがの京子先輩も、事の成り行きがわかってきたのか、目の前の先生に対して、後ずさりを始めた。

「いいかい。このままでは、地球が滅んでしまうんだよ。だから、先生が、地球を治そうというんだ。その為には、地球が欲しいんだよ。だから、私に地球をあげますと、言ってほしいんだ」

「あげません。地球は、私たちのものだから、先生には、あげません」

「そうかい。それが、キミの答えなんだね」

「ハイ」

「それなら仕方がない。力づくで、もらうしかないね」

 そう言うと、先生の姿が白く光り出した。私は、京子先輩の手を引っ張って、自分の方に引き寄せた。

「美月ちゃん、先生は、どうしたの? なんで、あんなことをあたしに聞くの?」

「京子先輩、アレを見てください。アレが、先生の本当の正体です」

 瓜生先生の体が白く光り始めた。周りに白煙に包まれて、それが少しずつ晴れていくと、黒光りするホントの姿が現れた。全身が真っ黒で、黒光りしている。目の部分が赤く光って、口なのか、話をするたびにピカピカ点滅している。鎧を着ているような硬そうな体だった。

「先生!」

 京子先輩が驚いて私に抱き付いた。私も初めて見るその姿に唖然とするしかなかった。

突然のことに、私も京子先輩も動くことができなかった。

そんな私たちを守るように、ブレンダーがうなり声をあげて威嚇のポーズを取る。

「ウゥゥ~・・・」

「待て、ブレンダー」

 今にも飛びかかろうとするブレンダーを制したのは、お兄ちゃんだった。

お兄ちゃんは、私たちの前に立ちふさがると、メビュラスの前に進み出た。

「美月、京子ちゃんを頼むぞ」

「お兄ちゃん・・・」

 思わず、お兄ちゃんと言ってしまった。でも、今は、それどころではない。

私は、そんなお兄ちゃんの背中を見た。マントを羽織った後ろ姿だった。

マスクで顔は見えないけど、きっと、今まで見た中で、一番カッコいい顔をしていると思った。

「メビュラス、黙って、自分の星に帰れ」

「うるさい! 見習い風情が、なにを言うか」

「どうしても帰らないなら、俺が相手だ」

「貴様など、相手にならん」

 そう言うと、メビュラスが右手を付き出した。

そこから、真っ赤な炎の塊が、お兄ちゃんに向かってきた。

「危ない!」

 私は、咄嗟に声を出した。

でも、お兄ちゃんは、軽く避けると、振り向きながらこう言った。

「京子ちゃんは、危ないから逃げて。美月、京子ちゃんを安全なところに」

「わかった」

 私は、言われたとおりに京子先輩を連れて、草むらの陰に隠れた。

「美月ちゃん、あの人、仮面のヒーローよね。あの人、知ってるの? 今、お兄ちゃんて言ったよね」

 顔は見なくても、声を聞けば、正体がバレてしまう。京子先輩にお兄ちゃんの正体を知られてしまうのはもはや、時間の問題だった。それでも、妹の私としては、秘密にしたかった。

私は、京子先輩の当たり前の疑問を聞こえない振りをして、無視した。

 その間にも、お兄ちゃんとメビュラスが睨み合って、戦闘が始まっていた。

メビュラスは、炎の塊をお兄ちゃんに投げる。お兄ちゃんは、それを避ける。

私の目からでも、お兄ちゃんの防戦一方なのがわかる。

お兄ちゃんは、空を飛んだり、すごい力はあっても、光線技は使えない。

どう見ても、メビュラスのが強い。でも、接近戦で組み合えば、お兄ちゃんにも勝てる。

離れて戦うのは、お兄ちゃんには不利だ。だけど、どうすればいい・・・

私は、必死で考えました。お兄ちゃんは、メビュラスの攻撃を避けるだけで精一杯だった。

「ブレンダー」

 私は、すぐにでも飛び出しそうなブレンダーを抱きしめながら、耳元にあることを囁いた。

「わかった」

「ワン」

 私は、ブレンダーにあることを頼んだ。そして、メビュラスがお兄ちゃんに集中している間にブレンダーをメビュラスの背後に忍ばせた。

「頼むわよ、ブレンダー」

 私は、草むらを音もなく静かに進むブレンダーに独り言のように呟いた。

「どうした、お前の力は、その程度か」

 メビュラスがゆっくり歩を進める。よし、今だ。私は、思いっきり叫んだ。

「ブレンダー、今よ」

「ワオォ~ン!」

 私の合図に、ブレンダーは、口からミサイルを発射した。

小さな小型ミサイルでも、不意を突かれたメビュラスには、十分だった。

「グオォッ・・・」

 膝をついたメビュラスに隙ができた。

「今よ」

 私が小さく呟くのと同時に、お兄ちゃんもそのチャンスを見逃さなかった。

マントを翻して、メビュラスに掴みかかった。そのまま、メビュラスを倒すと、上になったお兄ちゃんは、パンチを浴びせる。

「がんばって」

 私は、隣に居る京子先輩のことを忘れて叫んでいた。

しかし、メビュラスは、強かった。全身から光線を出して、お兄ちゃんを吹き飛ばした。

「甘く見てやれば、調子に乗って。もう、許さんぞ」

 遠くに吹き飛ばされたお兄ちゃんが起き上がると、メビュラスは、体中から銀色の光る矢を発射した。

数百本、数千本、数えきれないほどの鋭い光の矢がお兄ちゃんに向かって放たれた。

そんなに多い光の矢なんて、いくらお兄ちゃんでも、避けきれない。

「お兄ちゃん」

 私は、京子先輩のことも忘れて、叫んでいた。

光の矢は、束になって、お兄ちゃんに突き刺さった。

「ハッハッハッ・・・」

 勝ち誇ったような声で笑うメビュラスが心の底から憎いと思った。

しかし、お兄ちゃんは、死んではいなかった。

「まだまだ。俺は、スーパーマンだ」

 見ると、マントがお兄ちゃんを守っていた。マントが光の矢を防御していたのだ。

「なんだと!」

「今度は、こっちから行くぞ」

 お兄ちゃんは、まだ負けてない。マスクの上からでも、目は、まだ熱く燃えている。

しかし、マントは光の矢を受けて、穴が空いていたり、破れていたり、ボロボロになっている。

それでも、お兄ちゃんは、そんなマントを翻してメビュラスに立ち向かう。

 でも、メビュラスは、お兄ちゃんを近寄らせないように、光線技を繰り出す。

お兄ちゃんは、避けるだけで精一杯だった。少しずつ、体力を消耗して、何度か炎の塊を受けて、吹き飛ばされてしまう。それでも、お兄ちゃんは、何度も立ち上がった。

 強化スーツも破れてきた。マスクもひびが入ってきた。

メビュラスの一方的な攻撃に、なす術もない。

やっぱり、お兄ちゃんには勝てないのか・・・

 お兄ちゃんは、メビュラスの攻撃を受けながら、川岸まで追い詰められた。

「これが最後だ」

 メビュラスは、お兄ちゃんを川の畔まで追い詰めると、炎の塊を繰り出した。

その時でした。川の中から、なにかが光りました。白く輝く丸い物体。

それが、いくつも浮かんできて、川面がせり上がると、炎の塊に向かって水が噴き出した。

「河童くん!」

 それは、河童の頭のお皿でした。川の中から、たくさんの河童たちが顔を出した。

「みんな、今度は、おいらたちが助ける番だ。あいつをやっつけろ!」

「おおぉぉ!」

 川から顔を出した河童は、あの時の河童たちだった。それも、十人、二十人、もっといる。

「みんな・・・」

 私は、河童たちを見て目頭が熱くなった。

河童たちは、口から水を吹き出して、メビュラスに吐いた。

「うおぉっ、なんだ、こいつらは」

「負けるな、いけぇ」

 河童くんの号令で、河童たちは、放水のようにメビュラスを攻撃する。

お兄ちゃんは、立ち上がると、河童たちに拳を突き上げて、再びメビュラスに立ち向かった。

「美月ちゃん、あの人って、まさか、もしかして・・・」

 京子先輩の声は、私にも届いている。きっと、頭の中は、パニック状態になっているはずです。

目の前で、本物宇宙人だけでなく、河童を見ているのです。これを夢と思ってくれればいいのにと思いました。

 お兄ちゃんは、何度倒されても、立ち上がって向かっていきます。

その時です。メビュラスの真っ赤な炎が私たちに向かってきました。

「危ない!」

 お兄ちゃんが振り向きざまに叫びました。

私は、京子先輩を庇うようにその場に伏せました。でも、間に合いません。

一瞬、もうダメだと思いました。でも、その炎は、私たちには、届きませんでした。

「間に合ったようね」

 私たちの前には、誰かがいました。その人は、私に向かって静かに言いました。

顔を上げると、そこにいたのは、あのイケイケギャルでした。

「あなたは・・・」

「あたいたちもいるよ」

 そう言うと、他にも私たちを守ってくれている人がいました。

「ヘぃ、彼女、ケガはないかい」

 そう言ったのは、あのチャラ男でした。他にも、スーツ姿の男、着物姿の女性など、あのとき、私のウチに突然やってきた、宇宙人たちでした。

「わしらも、地球が亡くなっては、困るんでな」

 そう言ったのは、宇宙人のおじいさんでした。

「あの時の一宿一飯のお礼をさせてもらいますよ」

 相変わらず、古臭いセリフを言うのは、スーツ姿の男性です。

「貴様ら、まだ、地球にいたのか。さっさと、出て行け」

 メビュラスが悔しそうに吐き捨てる。

「あやつの命令なんぞ聞いて、逃げ出したとなれば、宇宙人の恥だからな。加勢させてもらいますよ」

 おじいちゃんが言うと、宇宙人たちが両手をメビュラスに向けました。

すると、その手から七色の光線が発射されました。

「うおおぉっ!」

 メビュラスに命中すると、その場に倒れました。

「やったか」

「イヤ、これしきで、やられるメビュラスではない」

 その通り、メビュラスは、ゆっくり立ち上がった。全身が黒く輝いている。

「貴様らのような雑魚や妖怪などに、負ける俺様ではない」

 メビュラスは、宇宙人や河童たちにも炎を発射する。

その隙に、お兄ちゃんは、メビュラスに体当たりした。

「お前なんかに地球をやるわけにいかないんだ」

「やかましい。地球は、私がもらう」

 組み合ったまま、河原を転げまわります。

しかし、メビュラスに比べて、疲れてきたお兄ちゃんは、軽く吹き飛ばされてしまいます。

そして、立ち上がったところを、メビュラスの攻勢をもろに浴びてしまいました。

「お兄ちゃん!」

 その場に崩れるように倒れるお兄ちゃんを見て、思わず叫んでしまいました。

その時、私たちの前に、ある物が転がってきました。

それは、お兄ちゃんのマスクでした。私は、それに手を伸ばします。

仮面をなくしたら、お兄ちゃんの素顔を見られてしまいます。

急いでそれを拾わないと・・・ 私は、そう思ってマスクを拾おうとすると、

私より先に手を伸ばしたのは、京子先輩でした。

「京子先輩・・・」

 京子先輩は、拾い上げた半分割れたマスクを手にすると、ゆっくりとお兄ちゃんに近づきます。

「京子先輩、危ない」

 私は、大声で叫びながら、止めようと走りました。

でも、京子先輩は、足を止めません。ゆっくりと立ち上がるお兄ちゃんに歩いて行きました。

「大丈夫、諸星くん」

「ついに、見られちゃったね」

「ハイ、これ」

 京子先輩は、素顔のお兄ちゃんに壊れたマスクを被せてあげました。

「諸星くん、がんばって。あんな奴に負けちゃいやよ」

「ありがとう」

「あたし、諸星くんのこと、信じてるから。きっと、勝ってね。あんな奴、やっつけちゃって」

「うん」

「あたし、応援してるから」

「ありがとう、京子ちゃん」

 お兄ちゃんは、立ち上がりました。私は、自然と涙が溢れていました。

「京子先輩」

「美月ちゃん、泣いてる場合じゃないでしょ。諸星くんを応援してあげないとダメよ。あんなに頑張っているのよ。あたしたちが、応援しないでどうするの。美月ちゃんのお兄さんは、世界一、強くて、カッコいいお兄さんなのよ。あたし、そんな諸星くんが、大好き」

 私は、涙を拭いて、前を向きました。京子先輩の言うとおりだ。

妹の私が応援しないでどうする。京子先輩だって、泣きたいはずです。

でも、泣いてなんていません。前を向いて、お兄ちゃんを応援しているのです。

私も負けていられません。

「お兄ちゃん、がんばって!」

「諸星くん、がんばれ~」

 私たちは、精一杯声を張り上げました。もちろん、宇宙人たちも河童くんたちも、お兄ちゃんを応援してます。

お兄ちゃんは、私たちの声援を受けて、何度倒れても立ち上がって、メビュラスに向かっていきました。

傷だらけになりながら、それでも立ち向かいます。

 その時、夜空から星が流れてきました。流れ星かと思ったら、それが、私たちの方に落ちてきました。

そして、青く光る光球は、お兄ちゃんとメビュラスの間に落ちました。

一瞬、土煙が立ち上り、視界が遮られました。何が起きたのか、わかりません。

次第に、土煙が落ち着いてきて、視界が開いてきました。

 すると、そこにいたのは・・・

「お父さん!」

 間違いありません。後ろ姿しか見えないけど、それは、まぎれもなく、私のお父さんです。

人間の姿をしたその背中は、間違いありません。

「わたる、大丈夫か? 遅くなってすまん」

「父さん・・・」

「美月、ケガはないか?」

「うん」

 その声は、お父さんです。久しぶりに聞いた、お父さんの声に、涙腺が崩壊しました。

そして、お兄ちゃんを助け起こすと、メビュラスに向かってこう言ったのです。

「久しぶりだな、メビュラス」

「フン、そんな昔のことなど、忘れたわ」

「ケガをしたくなかったら、さっさと地球から出て行け」

「イヤだと言ったら?」

「お前を逮捕する」

「やれるものなら、やって見ろ。私は、昔の私ではないぞ」

「それは、どうかな・・・ 美月、わたるを頼む」

 そう言って、お兄ちゃんを私に預けました。

メビュラスと対峙したお父さんは、お互いににらみ合うと、突然、お父さんの体が光り始めました。

そして、光がお父さんの全身を包むと変身したのです。

 全身が銀色に輝き、赤いラインが見えました。両の目が金色に輝き、無表情でまるで仏像のようです。

それが、お父さんのホントの姿なんだ。忘れかけていた、お父さんの姿でした。

「もう一度言う。自分の星に帰れ」

「断る」

「ならば仕方がない」

「なぜ、地球を守る? お前は、宇宙人か、それとも地球人か?」

「両方さ。お前のような、宇宙の無法者を取り締まる、宇宙警察だ。それが、私の仕事だ」

 きっぱり言い切ったお父さんは、私の大好きなお父さんだった。

世界で一番尊敬する、私のお父さん。何か、困ったときや、悲しいときも、必ずお父さんがそばにいてくれた。

そして、いつも助けに来てくれた。私の大好きなお父さんです。

「行くぞ」

 メビュラスが両手を付き出して、真っ赤な炎を発射した。

でも、お父さんは、避けることをしない。

「お父さん、危ない」

 私が叫んだ。でも、お父さんは、その場に立ったまま、微塵も動かなかった。

真っ赤な炎がお父さんに命中した。ものすごい音がした。花火でも上がったかのように、一瞬、明るくなった。

 お父さんは、メビュラスの炎の塊を、まるでハエでも払うかのように、右手で軽く払って見せた。

「なに!」

 メビュラスは、続けて炎を投げつける。しかし、お父さんは、片手で簡単に払う。

「どうした、メビュラス。その程度じゃ、私を倒せないぞ」

「うるさい」

 怒ったメビュラスは、今度は、光の矢を投げつけた。

お父さんは、両手を前に出した。すると、バリアでもあったかのように、光の矢はそれに当たると、

すべて粉々に砕け散った。光の矢は、一本もお父さんには届かなかったのだ。

「今度は、こっちから行くぞ」

 お父さんは、両手を十字にクロスした。すると、そこから、七色の鮮やかな光線が飛び出した。

「グオォォッ」

 命中したメビュラスが吹っ飛んだ。立ち上がろうとするメビュラスに、今度は、両目から金色の光線が発射した。

「ウウゥン・・・」

 メビュラスの呻き声が聞こえた。

そして、お父さんは、夜空を見上げると、右手を差し上げた。

すると、夜空から、星が流れてきた。まるで、天の川のように、星の川が地上に向かって流れてきた。

その川に沿って何かが走ってきた。




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