第3話 お兄ちゃんの活躍。

 翌日は、日曜日でした。これが、平日だったら、学校を理由に断れるけど、そうもいかない。お兄ちゃんは、朝から張り切って準備をしている。

私は、そんなお兄ちゃんと河童を横目で見ながら、タブレットで場所を特定する。

 衛星写真で空から見ても、どこだか全然わからない。

場所を聞いても『奥多摩のそのまた奥の奥』としか言わないので、探しようがない。

もっとも、河童に、住所を聞いてもわかるわけがない。聞く方が間違っている。

 私は、半分諦めながらタブレットの画面を眺めていた。

「もしかして、ここじゃないの?」

 画面に映ったのは、山の半分が崩れて山肌が見えていた。

道路も土砂で埋まって車などは通れない。道という道が塞がれているのだ。

もっとも、そんなところに人は住んでいない。いるのは、河童たちだけなんだろう。

「この辺じゃないの?」

 私は、タブレットを河童に見せた。

「そうそう、ここだよ、ここ。おいらたちの畑も全滅じゃないか。河童沼は、どこなんだ・・・」

 食い入るように見ながら河童が今にも泣きそうな顔をしている。

他のネットニュースを検索すると、一週間前に季節外れの台風があった。

私たちの地域は、それほどの被害はなかったけど、山奥は山崩れや雪崩があったらしい。

さらに、地震が起きて、岩が落ちたり、川が氾濫したり、それこそ手のつけようがない有様なのがわかった。

「これじゃ、自衛隊も来られないわよね」

 もはや、諦めるしかない。可哀想だけど、河童たちは、生きてはいないだろう。

土砂や岩に押しつぶされたか、沼の中に生き埋めにされていると思うしかない。

「よし、行くぞ、美月」

「ホントに行くの?」

「当り前だろ。正義のヒーローが見捨てるなんて言葉は、俺の辞書には載ってない」

 一人でカッコつけているお兄ちゃんに溜息しか出ない。

「ほら、美月も用意しろ。ブレンダーを呼んで来い」

「ハイハイ」

 私は、縁側で日向ぼっこしているブレンダーを呼んだ。

「ブレンダー、起きて。行くわよ」

「ワン?」

 ブレンダーも不思議そうな顔をしている。ロボット犬が、普通の犬みたいに、日向ぼっこしながら丸くなっているのはかなり微妙だった。

「それで、河童はどうするの? 道案内させなきゃダメでしょ」

「美月、頼むよ」

「えーっ、あたしなの?」

「ブレンダーにいっしょに乗って行けばいいだろ」

「ダメよ、ブレンダーは、一人乗りだもん。お兄ちゃんが乗せていってよ」

「ダメダメ。マントは一人しか飛べないんだから」

 またしてもあたしのやる気がなくなってくる。なんで、あたしが、河童といっしょに行かなきゃいけないのよ。

てゆーか、河童の体って、ヌルヌルしてるし、気持ち悪くて触れない。

そんな妖怪といっしょなんて、ごめんだ。ブレンダーだって、そんな妖怪を乗せたくないに決まってる。

見ると、ブレンダーもそっぽを向いて知らん顔をしている。

「ブレンダー、こっちを向きなさい」

 あたしは、ブレンダーの顔を両手で挟んで自分に向けた。

「いい、アンタの気持ちはよくわかる。あたしだって同じなのよ。でも、ちょっとの辛抱だから、我慢して」

 私は、ブレンダーに言い聞かせる。

「クアァ~ァ・・・」

 ロボット犬のくせに、あくびで誤魔化すところなんて、出来過ぎている。

「いいから、行くわよ。ジェットモード、チェンジ」

「ワオォ~ン」

 ブレンダーは、一度鳴くと、ジェットモードに変身した。

前足がハンドルに、後ろ足が翼に、シッポは尾翼、頭部は流線形に変化して、モフモフの毛が頑丈な超合金に変化する。

ホバークラフトの要領で、お腹から空気を出して浮いている。私は、ブレンダーの背中に跨る。

「河童くん、乗って」

「乗るって、それにですか?」

「それじゃ、歩いて行くつもり」

 そう言うと、河童は、首を激しく横に振ると、よいしょと声を出してブレンダーに跨った。

「やっぱり、前に乗って」

 私の後ろに跨った河童を前に座らせた。後ろから抱き付かれるのが、イヤだったからだ。

「しっかりしがみ付いててよ。落ちたら死ぬからね」

「まだ、おいらは、死にたくないよ」

「だったら、落ちないようにしててよ」

 私は、河童にそう言うと、ハンドルを握った。

お兄ちゃんは、バッヂのスイッチを入れて、強化スーツに変身した。

そして、マントを羽織り、ヘルメット型の仮面を被った。

「それじゃ、行くぞ」

 お兄ちゃんは、窓を開けて空に向けて飛び立った。

「ちょっと、お兄ちゃん、そっちじゃないってば・・・ あぁ~ぁ、行っちゃった」

 私は、諦めモードで窓を閉めると、きちんとカギをかけて、アクセルを吹かせて空に飛び立った。

お兄ちゃんが飛んで行ったのとは、反対方向に飛んで行く。

しばらく飛んでいると、ものすごいスピードでお兄ちゃんが戻ってきた。

「こらぁ、ちゃんと、道を教えろよ」

「勝手に飛んで行ったのは、お兄ちゃんでしょ。方向音痴なんだから、ちゃんと付いてきてよね」

 こうして、私たちは、空を飛びながらいつものように口喧嘩をしている。

「さっき、ちゃんと方向を言ったじゃん」

「もっと、わかりやすいように言えよ」

「方向音痴のスーパーマンなんて、聞いたことないけど」

「うるさい。ちゃんと指示をしない美月が悪い」

「あたしのせいだっていうの」

 毎回、いっしょに仕事をするときは、こんな感じでケンカばかりしている。

そうこうしているうちに、巨大なビルや高層マンションがある都会から、緑に覆われた山が見えてきた。

河童は、ブレンダーにしがみ付いているのに必死の様子で、とても下を見る余裕がない。確かに、河童は、水の中の生き物で、空なんて飛んだことがないので、気持ちはわかる。私は、タブレットをナビの代わりにしながら奥多摩のそのまた奥の奥まで飛んで行った。


 すると、タブレットの現場写真で見たのと同じ景色が見えてきた。

「お兄ちゃん、あの辺よ」

 私は、下の方を指さした。

「よし、降りてみよう」

「ブレンダー、降りるわよ」

 私は、ハンドルを操作しながら降下していく。

と言っても、周りは土砂で埋まって足の踏み場もない。

どうにかこうにか、地面に降りることができたけど、これじゃ、どこが沼だかまるでわからない。一面茶色の土砂と岩で埋め尽くされている。

「これじゃ、なにがなんだかわからないわね」

 私は、一面を見渡しながら言った。

「河童、沼の位置はわかるのか?」

 お兄ちゃんが聞いても、河童は首を横に振るだけだった。

そりゃ、そうでしょ。こんな状況じゃ、いくら河童でもわかるわけがない。

「とりあえず、この大きな岩とか退かせてみたら」

「軽く言うなよ。こんな岩をどうやって退かすんだよ」

「お兄ちゃんならできるでしょ」

 お兄ちゃんは、見習いが付くとはいえ、百万馬力のスーパーマンだ。

たかが、直径5メートルくらいの大きな岩でも、簡単に持ち上がるはずだ。

「まったく、美月は、人使いが荒いな」

「文句言ってないで、がんばって」

 お兄ちゃんに、言葉だけだが応援してみる。そして、お兄ちゃんは、いとも簡単に岩を持ち上げた。

「やればできるじゃない。京子先輩が見たら、惚れ直すわよ」

「そうかな・・・」

 京子先輩の名前を出した途端に、デレデレしてくる。仮面の上からでもニヤけた顔が想像できる。

お兄ちゃんは、両手で岩を抱えると、思いっきり空に投げ飛ばした。

「ブレンダー、ミサイル発射。あの岩を砕いて」

「ワオォ~ン」

 ジェットモードから普通のハスキー犬戻ったブレンダーは、口を大きく開けると、小型ミサイルを二発発射した。

口からミサイル。目からレーザー光線という武器を装備しているブレンダーは、無敵なのだ。

 空に投げ飛ばされた岩は、ミサイルが命中すると、木っ端微塵に吹き飛んだ。

「ほら、見てよ」

 私は、岩がなくなった場所を見下ろして言った。

そこは、小さな沼のようだった。しかし、とても沼には見えない。表面に土砂が浮いて塞がられている。

「お~い、みんな~、大丈夫かぁ」

 河童がその沼に何度も叫んだ。しかし、返事がない。

「土砂で埋まってるんだな。これを退かさないとどうにもならないぞ」

「どうするの?」

「こうするのさ」

 お兄ちゃんは、そう言うと、マントを肩から外すと、それをグルグル回し始めた。

何をしているのか、私には、さっぱりわからない。

しかし、少しすると、そのマントが巨大なザルに変化した。

「どうよ、これで、土砂を掬えば何とかなるだろ」

「なにそれ? どういうこと、あたし、知らないんだけど。そのマントって、そんなこともできるの?」

「できるらしいよ。この前、父さんに聞いたんだ。試してみたけど、成功みたいだな」

 私にないしょで、お父さんと何か話をしたらしい。

「勝手に、お父さんと話したりしないでよね。やるときは、あたしにも教えてよ」

「今度な」

 お兄ちゃんは、ちっとも悪びれる様子もなく、大きなザルを手にして、土砂を掬いあげた。

掬った土砂は、水を大量にこぼしながら、脇に退かしていく。

それを何度もやってるうちに、やっと沼らしい水が溢れてくるのがわかった。

それでも、まだまだ水は、茶色に濁っている。

 お兄ちゃんは、汗だくになりながら、一生懸命泥を掬いあげた。

私も何か手伝いたいけど、道具がないので何もできないのが残念だ。

 さらにしばらくすると、沼の水が波立ってくるのが見えた。

すると、プカッと何かが浮いてきた。それは、白くて丸いものだった。

水が浮き上がると、なにかが出てきた。それは、河童の皿だった。それも、一つや二つではない。

いくつも数えきれないくらい、たくさんの皿が浮いてきた。

「お~い、おいらだよ。助けにきたぞ。みんな、大丈夫か」

 河童が何度も叫んだ。そして、茶色く濁った沼に入って行こうとする。

「待って、待って、河童くん、行っちゃダメよ」

「離してくれ、みんながいるんだ。お~い、おいらだ、聞こえたら返事してくれ」

 河童は、私の手を振りほどいて泥沼に入って行こうとする。

いくら泳ぎが上手な河童でも、ただの水ではない。簡単に泳げるとは思えない。

「河童くん、待って」

 私は、河童の手を握ったけど、ヌルヌルしているので手が滑ってしまう。

すると、白いお皿がいくつも水面から顔を出した。

それは、たくさんの河童たちだった。

「ウソ!」

 私は、思わず驚いて固まってしまった。

そして、私の目の前には、次々と河童たちが顔を出して沼から上がってきた。

「みんな」

「お前は、無事だったのか」

「助けを呼んできたぞ。みんな無事か」

 全身泥で茶色の河童たちが大勢陸に上がってくると、河童と抱き合って喜んでいる。

「あなた!」

「お父ちゃん」

「お前たち・・・」

 その中から、女の河童と小さな河童たちが、自ら出てくると一目散に駆け寄った。

「よかった。お前たち、ケガはないか」

「子供たちも大丈夫よ」

「そうか、よかった。ホントによかった」

 河童は、家族らしい河童たちと抱き合って泣いていた。

ふと横を見ると、感激屋のお兄ちゃんが号泣している。

仮面の上からでも、泣いているのが私にはわかる。気持ちはわかるけど、今は、泣くとこじゃない。

「よし、この沼をきれいにするぞ」

 お兄ちゃんは、そう言うと、大きなザルで土砂を掬い始めた。

「おいらもやるぞ」

 河童が張り切って声を出すと、水かきが付いた手で泥をかき集めた。

「みんな、俺たちもやるぞ。ここは、俺たちの沼だ。俺たちの手で、きれいにするんだ」

「おおぉ!」

 茶色まみれの河童たちも張り切って、泥を集め出した。

女の河童も小さな子河童も、全員で自分たちの沼をきれいにするために泥まみれになりながら土砂を自ら掬い上げ始めた。

「みんな、がんばれ」

「そっちの泥を掬うんだ」

「任せろ」

 全員が声を合わせて泥を掬っている。みんな泥まみれになりながら・・・

お兄ちゃんも泥だらけだった。

「あぁ~あ、まったく、しょうがないわね。ブレンダー、アンタも手伝って」

 と、諦めながら見ると、すでにブレンダーも河童たちを手伝って、泥の沼に入っていた。

「ちょっと、ブレンダー・・・ あんた、大型犬なんだから、シャンプーするの大変なのよ」

 ブレンダーは、ハスキー犬だから、シャンプーするのが大変なのだ。

あんなに泥だらけになって、帰ってからシャンプーするのは、私なのに・・・

「しょうがない、あたしもやるか」

 私だけ見てるだけというわけにはいかないので、思い切って泥の沼に入ると、

お兄ちゃんのザルを手伝いながら泥を掬った。

 そんなこんなで、みんなで力を合わせて泥をかき出すこと数時間、やっと沼が少しずつきれいになってきた。

そうは言っても、水は、まだまだ濁ったままだ。

それでも、最初に比べたらかなり沼らしくなってきた。

 全身泥だらけの抹茶色になった河童たちも、水をかけあって体についた泥を落とす。すると、きれいな緑色の河童らしい姿が見えてきた。

「よぅし、もう、いいだろう。作業をやめ」

 河童が号令をかけた。

「ヒーローさん、お嬢さん、あなた方のおかげで、河童沼もご覧の通り無事だった。

みんなケガもなく、子供たちも無事だった。ホントに、ありがとう」

 そう言って、私たちの前で、深く頭を下げた。

「みんなもお礼を言え」

 すると、河童たちが全員揃って、私たちの前に進み出ると、頭を下げて見せた。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう」

「ホントにありがとうございました」

「この御恩には、生涯忘れません」

 イヤイヤ、そこまで言われると、こっちのが恥ずかしくなる。

とにかく、みんな助かってよかった。

「お礼なんて・・・ そんなつもりでやったわけじゃないから。俺は、正義の味方だから、困った人がいれば例え妖怪だろうが、人間だろうが、河童だろうが、助けてみせる。それが、正義の味方の使命なのだ」

 お兄ちゃんが、胸を張って堂々と言ってのけた。私だったら、歯が浮くようなセリフだ。しかも、泥だらけじゃ、ちっともカッコよくない。

「よかったな」

「お兄ちゃん、ありがとう」

 お兄ちゃんは、子河童たちと握手までしている。そして、次々と河童たちと抱き合ったり、握手をしている。

こうして見ると、いいことをしたという気がするけど、なんかピンとこないのは、私だけかもしれない。

その横では、ブレンダーが思いっきり体を震わせて、体に着いた泥を蹴散らしていた。

「ちょっと、ブレンダー、泥が飛ぶからやめて」

 そう言う私も、服も顔も泥だらけだ。一秒でも早く帰ってシャワーを浴びたい。

「お姉ちゃん、ありがとう」

 不意に私の袖を引っ張るので下を見ると、膝くらいの小さな子供の河童たちが私を見上げていた。

私は、しゃがんで子河童たちと同じ目線にして泥まみれの顔で笑って見せた。

「よかったわね」

 私は、そう言って、小さな白い頭のお皿を撫でてあげた。

こうしてみると、子供の河童は可愛い。小さな黒い瞳がクリクリしていて、思わず抱きしめたくなる。

でも、体は、やっぱり、ヌルヌルしているのでやめておく。

「これからどうするんだ?」

 お兄ちゃんが聞くと、河童が胸を張ってこう言った。

「沼の水は、自然にきれいになるから大丈夫。畑も一から、やり直しだ。でも、みんないるから、心配しなくてもいい」

「そうか。がんばれよ。また、何かあったら、いつでも呼んでくれよ。すぐに助けに来るからな」

「ありがとう。あなたたちは、おいらたちのスーパーヒーローだ。信じてよかった」

 そう言うと、河童は、黒い目から大量の涙を流していた。

「あの、これをどうぞ。あたしたちは、河童だから、これしかお礼ができなくて申し訳ありませんが、ぜひ、受け取ってください」

 そう言うと、女の河童が、風呂敷を私たちの前に置いた。

「そうだ。ぜひ、もらってくれ。おいらたちのほんの気持ちだ」

 そう言われて風呂敷を開けると、中から出てきたのは、大量のキュウリだった。

「これって、キュウリ・・・」

「そうだ。おいらたちが作ったキュウリだ。うまいから食べてくれ」

「イヤ、でも、その、これは、みんなのご飯でしょ。みんなで食べたほうがいいわよ」

「心配するな。おいらたちの食料は、ちゃんと保存してある。だから、遠慮なく、もらってくれ」

 しかし、キュウリって・・・ 河童だから仕方がないけど、正直言って、余りうれしくない。

そう思って、お兄ちゃんを見ると、なぜか、感激しながらこう言った。

「わかった。ありがたく頂戴します。皆さん、ありがとう」

「ちょっと、お兄ちゃん!」

「なんだよ美月。せっかく河童たちがくれたのに、もったいないじゃないか」

「だけど・・・」

 私は、小声でお兄ちゃんに軽く抗議したけど、まったく通じなかった。

「お兄ちゃん、もう、帰るよ」

「わかってるよ」

 私は、早く帰って、お風呂に入りたかったので、お兄ちゃんを急かしたけど、

相変わらず河童たちと熱い抱擁をしている。もう、付き合いきれない。

「ブレンダー、ジェットモードチェンジ」

「ワオォ~ン」

 私は、ブレンダーを変身させて、それに乗ると先に帰ることにした。

乗っていても、なんだかヌルヌルしてるし、体は泥臭いし、たまらない。

「それじゃ、みんな、元気でな。さようなら」

「さよ~なら~」

 河童たちに見送られて、私とお兄ちゃんは空に飛び上がった。

河童たちは、私たちが小さくなるまで、空に向かって手を振ってくれていた。

私も少しだけ、ホッとしたというか、いいことをしたという満足感に浸っていた

 だけど、それはそれとして、このキュウリは、どうするの?

「お兄ちゃん、このキュウリ、どうするの? あたしたちだけじゃ、食べきれないわよ。

それに、あたし、そんなにキュウリ、好きじゃないし」

「ご近所に配ればいいじゃないか」

 空を飛びながら軽く言うお兄ちゃんは、早速、キュウリを齧っていた。

「おっ、うまいぞ、このキュウリ。さすが河童だな。美月も食べてみろよ」

 そんなのお断りだ。どこの世界で、空を飛びながら、キュウリを齧っている、スーパーマンがいるのよ。

私は、半ば呆れてお兄ちゃんを見ていた。その後、帰宅した私は、真っ先にお風呂に入ったのは、言うまでもない。

 それからしばらくは、食卓には、キュウリが毎日のように並んだ。

毎日キュウリばかり食べてたら、河童になるんじゃないかと思うくらいだった。

でも、久しぶりに帰宅したお母さんも、河童の話を聞いて、笑いながらキュウリをおいしそうに食べている。

どうやら、気にいったらしい。こっちは、それどころじゃなかったのに・・・


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