第14話
二つの部屋の写真を取った後、僕達は残った扉の前に立つ。
「先に進む道があればいいけど……」
「なければ、また戻って別の階段探しですね」
「それは面倒だな」
意を決して扉を開くと、そこはどこかの学校の教室に繋がっていた。
「……なんというか久々な気がするな」
おそらく、どこかの中学か高校なんだろう、ここの教室は規則正しく黒板に向かって机が並んでいる。
放課後なのか、それとも元々人がいないのかは分からないが、どうやら人はいないらしい。
教室の雰囲気からして、僕が通っていた中高とは違うようだ、僕が通っていた所はもっとボロかった。
どうやら僕達は教室の後ろの方のドアからここに入ってきたようで、前の方から廊下に出ることが出来そうだ。
後方は開き戸で、前方は引き戸という統一感という言葉をどこかに置き去ってしまったような建築をしているが、それは夢の世界だから仕方ないと自分を納得させるしかない。
「お城の中に学校があるなんて、凄い作りですね」
辺りを見ながら感心したように、シャインは言う。
確かに言われてみればそうだ、こうなってくると城の外観などから中の様子を想像するのは意味がなさそうだ。
窓の外を見てみれば、入ってきたときに見たあの庭園が目に入る。
今いる場所事態が学校に変わってしまったというわけではなさそうだ。
「一応、この教室に何かないか見とこうか。何かあるかもしれないし」
「そうですね。一応、確認しておいた方がよいでしょう」
先ほどのぬいぐるみや、穂坂さんの部屋など、なにかしら意味深長な部屋が多かった。
それなら同じ部屋に扉があったこの部屋にも何かあるかもしれない。
教室の中を探すとなったが、案外探すべき場所と言うのは少ない。というのも、この教室に何か隠せそうな場所というのは生徒たちの机と教壇、掃除用具用と思われるロッカーぐらいしかないのだ。
自分達の学校だと、後ろの方に生徒が使うロッカーがあったはずだけど、どうやらこの教室にはそれはないらしい。
一番近かった席の机の中身を見てみると、教科書とノートが入っていた。
「教科書とノート、生徒が置いて帰ったのかな」
試しにノートを開いてみると、中身は真っ黒に黒塗りされており読むことが出来ない。
教科書の方はどうやら、中身は塗りつぶされていないようだ。塗りつぶされているところ部分どころか、落書きや何かしら書き込まれている場所すらない新品同然の状態で残されている。
「……名前とかも書かれていないしな」
小学生ならともかく、それより上になれば自身のノートや教科書に名前を書いているような生徒の数も少ないだろう。
「僕はこっちから見るから、シャインは逆側から見る事って出来る?」
「机の中に何かあることぐらいは分かりますけど、今の状態だと中身を取り出すことは出来ません。それで良ければ」
「あー……そっか。それなら全部僕がやるよ」
「ごめんなさい、ただ敵が来たら私の魔法でちゃんと蹴散らしますから」
意気揚々という言葉がピッタリな調子で、シャインは言った。
随分とまあ頼もしいものだ。
右の後ろ側から順番に、机を漁っていく。
何個か教科書やノートを見つけることが出来たが、最初に見つけたものと同じような状況で何か役に立つとは思えなかった。
「あ、これは」
やっぱり想像通りあった。
「何か見つけたんですか?」
シャインが興味深そうに、こちらを覗き込んでくる。
「塗りつぶされていないノートだよ、やっぱりあった」
多分だけど、この席は穂坂さんの席なんだろうと思う。
教科書の中身が塗りつぶされていないのは、教科書の中身がどれも同じだからで、逆にノートが真っ黒に塗りつぶされていたのは、ノートの取り方は多種多様であり、中身を彼女が知らなかったからなんだろう。
「これが何になるんです?」
「それは今から調べるんだよ」
どうやら数学に使われているノートらしく、大体のページに数式や図形が乗っている。何か文章になっている部分はないかと探してみるが、授業内容をしっかりととってある綺麗なノートがそこにはあっただけだった。
「何か分かりましたか?」
「穂坂さんはちゃんとノートを取る真面目な生徒だってことぐらいかな」
「それとリオンとの悩みの関連性はあるんでしょうか?」
「……うーん、分からないかな」
無理矢理理屈付ければ、説明がつくかもしれないけども、今の段階だとこじつけ甚だしい結論しか出てこないだろう。
一応教科書の方も目を通してみるが、付箋や大事そうなところにラインが惹かれているだけで、勉強熱心なんだなという最初の感想から超えるようなものを見つけることは出来なかった。
「リオンは成績優秀ですからね。秘密結社でも勉強を頑張ってるんですよ。なんでも学生の本分は勉強だから、ちゃんと勉強しないといけないとよく言ってました」
「へ、へえ、そうなんだ」
秘密結社に入り、勉強を辞め自堕落に暮らしている元大学生としては、非常に耳が痛い話だ。
そもそも学生の頃だって、ちゃんと勉強をしていたのはテスト前ぐらいの僕からすれば、今のような環境でも勉強を続けている穂坂さんの方が可笑しいと言いたくなるが。
「ここにはもう何もなさそうかな」
これ以上、下手に追及されたくなかったので、強引に話題を変える。
「そうですね、とりあえず進んでみましょうか」
教室を出る為に引き戸を引くと、その先は上に登るようの階段だった。
「次は三階ですね、この階層のように甲冑がいなければいなければいいのですが」
シャインの言うように二階には、一階の様に辺りを警備している甲冑のような存在がいなかった。
そのおかげで、ゆっくり探索することが出来たのは良好だ。
「……なんだかそういうことを言ってしまうと、三階は大変な事になりそうな気がするんだよね」
「流石にそれは考えすぎというものです。大丈夫ですよ、もし何かあっても私の魔法でどうにかしますから」
「本当、頼りにしてるからね」
銃である程度戦えるとはいえ、銃が効かない相手が出てきたら今の僕ではどうしようもないのも確かだ。
先ほどのやり取りに猛烈な嫌な予感を感じながらも、僕達は階段を上がっていくのであった。
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