第10話
「甲冑と戦う方法について、こちらであれこれ仮説を立てるのも良いんだが、実際に夢の世界を旅している君として、その甲冑達と戦う為に何かアイデアはあるかい?」
甲冑と戦う方法か、少し考えてみる。
まずまともに戦うというのは不可能だ。そもそも帯剣している相手に対して真っすぐ向かっていく度量はないし、こちらも同じように剣を持っていたとしても、一度も剣を降ったことのない僕では多分勝てない。
「やっぱり魔法とかですかね、実際シャインは魔法を使って戦っていましたし」
実際シャインの魔法は強力だった。一日五回しか使うことの出来ないという制限はあるものの、一発であの甲冑を倒すことが出来るというのは非常に魅力的だ。
僕もシャインと同じよう五回魔法を使うことが出来るようになれば、合わせて一日十回魔法が使えることになる。
城の中には見張りが多くいるだろうし、魔法を使える回数は多ければ多い方がいい。
「魔法、魔法か」
ただ安住さんは困ったように、右手を首に当て規則正しいリズムでトントンと叩く。
「やっぱり難しいんですかね」
夢の世界に入っているのが自分の魔法による効果によるものだというのなら、その夢の中でも魔法が使えるのではないかと思ったのだけど、彼女の様子を見る限りそんな簡単な話ではないようだ。
「……そうであるともいえるし、そうでないともいえる。すまない、曖昧な答えではあるが、今の私が言えるのはこれが限界なんだ」
困ったように安住さんは答える。
うーん、やっぱり魔法系統の話は、より詳しいシャインの方に聞いたほうが良いのかもしれない。
「それとこれは命令だが、精霊に魔法について詳しく訊くのも辞めておいて欲しい」
こちらの心を読んでいるかの様に、先回りしてシャインに魔法に関して訊くことを止められた。
「なんでですか?」
魔法については知っていて損するようなものではない気がする、むしろその逆で魔法については知らないと損するような気もするのだけど……。
「……それも今は話せない。私の中で一つある仮説があるのだが、その仮説がもし真実であった場合、君にそれを知らせることが不利益になるからだ」
なんだかよく分からないが、僕は魔法については知らない方がいいらしい。
正直納得はできてはいないものの、シャインにも訊かないでおこう。魔法について気になるのはやまやまだが、それが理由で不利益を被ると断言されているなら、それを自制できるぐらいの自制心はある……と思いたい。
「そうですか。それならえっと、安住さんはどういった方法で戦うのが良いと思いますか?」
魔法で戦うことが出来ないというなら、正直戦う方法なんて思いつかないというのが僕の本音だ。
「私の意見を述べる前に君に聞きたいのだが、君は武器、銃や刀剣の類についての知識はどの程度ある?」
「殆どないですかね。銃に関しては、銃で撃ちあうようなゲームとかはやった事ありますけど、実際のものは見たこともないです。刀剣に関しても、夢の世界で見たのを除いたら博物館とかで見たぐらいです」
「なるほど、それなら格闘技についてはどうだ?」
「高校の授業で柔道を選択したぐらいですかね、余り格闘技とか見ませんし」
格闘技を題材にした漫画とかなら読むけど、あれはかなり内容が現実離れしている内容だし、知らないと言っても差し支えはないだろう。
「それなら良い方法がある」
ただその回答は安住さんを満足させるものだったらしい。
「少し待ってくれ、専門家を呼んで来よう」
そう言って安住さんは電話を掛けるために、部屋の外に出て行った。
専門家?
誰だろうか。魔法についての専門家というならシャインが該当すると思うが、魔法については詳しく知るなと言われたばかりだ。
それならあの夢の世界の専門家? そんな存在いるんだろうか。
そんなことを考えていると、安住さんは見覚えのある人物と一緒に部屋の中に入ってきた。
「よう、英雄。昨日ぶりだな」
佐久間さんだ、彼が専門家ということなんだろうか。
彼は、何やら大きな荷物を抱えてる。
「とりあえずは彼から説明を受けるといい、隊長先ほども言ったが」
「分かっているよ先生、注意事項は頭に入ってる」
「よし、それならいい」
それだけ告げると自分の出番は終わったとばかりに、安住さんはソファーに深く腰掛けてしまった。
「なんだか大変そうだな。こっちも先生からいろいろ話は聞いてる」
「いえ、これぐらい大したことないですよ。えっと、佐久間さんはどういった要件で?」
「決まってるだろ、お前に甲冑と戦うための方法を教えに来たんだ」
そう言うと、佐久間さんは持っていた荷物の中身をこちらに見せてくれた。
「これって」
「ああ、そうだよ。銃だ、アサルトライフルって呼んだ方がいいかな」
銃、現代日本においては規制が行われており実物をみる機会なんて殆どないそれが、今目の前にあった。
おそらくベアヘロと戦う際に使用する武器なんだろうと察することが出来た。
「これを、その夢の世界とやらに持っていけばいい。そうすれば甲冑なんぞ相手にならん。心配するな、俺がこいつらの使い方を教えてやる」
夢の世界で銃を使って戦うのか。
夢の世界なんてファンタジーなイメージから大きく離れてるイメージのある武器だが、下手に魔法とかに頼るよりはよりは確実な方法かもしれないと自分を納得させることにした。
……ちょっと、魔法使ってみたかったな……。
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