消えた音色


主人公の玲奈は、幼い頃からピアノの天才と呼ばれていた。彼女の演奏は聴く者すべてを魅了し、将来を嘱望されていた。玲奈の夢は世界中の人々に自分の音楽を届けることだった。しかし、突然の事故により、彼女は右手の自由を失ってしまった。


絶望の淵に立たされた玲奈は、ピアノを弾くことができなくなった現実に直面し、夢を諦めるしかなかった。彼女は自分の人生に意味を見いだせず、心の中で日々葛藤していた。そんな中、玲奈の友人であり幼馴染の拓也が彼女を支え続けていた。拓也は玲奈に音楽を続けるよう励まし、彼女のために新しい道を見つけようと奔走していた。


ある日、拓也は玲奈を連れて、とある古い音楽店に訪れた。そこには「願いを叶えるピアノ」と呼ばれる一台のピアノが置かれていた。店主によれば、そのピアノは特別な力を持っており、心からの願いを込めて弾くと奇跡が起こるという。


半信半疑の玲奈だったが、拓也の勧めでそのピアノに向かって座り、左手だけで弾き始めた。すると、不思議なことに彼女の演奏はまるで右手も動いているかのような音色を奏で始めた。玲奈は感動し、涙を流しながら演奏を続けた。


その後、玲奈は左手だけで演奏する新しいスタイルを確立し、再びステージに立つことができるようになった。彼女の演奏は以前にも増して多くの人々を感動させ、玲奈は再び音楽の世界で輝きを取り戻した。


しかし、物語はここで終わらなかった。


玲奈の演奏は次第に評価され、ついには国際的なコンサートでの演奏依頼が舞い込んできた。彼女はそのコンサートで、最愛の曲を演奏することを決意した。しかし、そのコンサートの直前、拓也が突然倒れてしまったのだ。


拓也は長い間、重い病を隠していた。玲奈を支えるために、自分の体調を犠牲にしていたのだ。拓也は意識が戻らぬまま病院に運ばれ、玲奈はコンサート前夜、病院のベッドの隣で彼の手を握りしめながら泣いた。


その夜、玲奈は夢を見た。夢の中で拓也は微笑みながらこう言った。「玲奈、君の音楽は僕の生きる希望だった。だから、絶対にコンサートで演奏してほしい。僕のために、そして君自身のために。」


目が覚めた玲奈は、涙を拭い決意を固めた。コンサート当日、玲奈は拓也の言葉を胸に、ステージに立った。会場には満員の観客が詰めかけ、彼女の演奏を待っていた。


玲奈は深く息を吸い込み、ピアノに向かって座った。最初の音を奏でた瞬間、玲奈は全身に拓也の存在を感じた。彼女の演奏は会場全体を包み込み、観客はその音色に涙した。


コンサートが終わり、玲奈は拍手の嵐の中で微笑んだ。しかし、彼女の心は悲しみに包まれていた。コンサートの後、玲奈は病院に急いだが、拓也はすでに息を引き取っていた。玲奈は彼の手を握りしめ、静かに涙を流した。


玲奈は拓也の墓前で演奏を続けることを誓い、彼の遺志を胸に生き続けることを決意した。彼女の音楽は、拓也の愛と共に永遠に響き続けることだろう。


end

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