第20話 能力を使わない時の武器

私たちがこの学校に避難してきてから約一週間が経った。


私たちは副校長先生と共にバリケードの強化やゾンビ達の観察、四国移住への準備など色々行ってきた。


皆んなは私に危ないから校内で家事の手伝いをすればと言われたが、どう考えても一人で校内で家事をするよりも少し危険はあるが皆んなと共にいる方が安全だといい、結局五人で活動した。


ちなみにこの期間私たちのキャンピングカーはどうだったかというと、焔が防護魔法を使って守っていたらしい。


それが出来るなら劇場の時もそれを私にかけておいてくれて良かったんじゃないかなと思った。


今は移住の時に戦う可能性を考えて何か武器を作らないかと皆んなで考えている時である。


「一応武器はあった方がいいよねぇ」


「だよね。皆んな能力使うわけにはいかないし、それに私もそろそろ戦う手段が欲しいし」


「うーん」


正直武器作りは難航していた。


初めは木刀を作ろうとしていたが、作っている途中で、これ全然ゾンビ倒せなくね?ってなって断念した。


「あっ、そうだ思いついた」


何やら焔が思いついたようだ。


「昔ネットで見たことがあるんだが、投石装置作って見るのはどうだ?」


「投石装置?」


「そう。長めの紐を用意して」


そうして焔が実際に作り始めた。


「次に石を置いておく部分を布で作って紐の中央辺りに付ける」


少しグダつきながらも焔は順調に作っていく。


「そして最後に紐の両端を持って布のとこにいい感じの石を入れれば完成」


「もう完成なの?」


「まぁ見てろって。おい、蒼雷ちょっと離れたとこに木の板で的作ってくれ」


「あいよ」


そうして蒼雷は二十メートルほど先に木の板を複数重ねておいた。


「サンクス。それでこれを振り回して」


焔が投石装置を振り回し始めた。


「後はタイミングを合わせて紐を片方離すと」


バンッ!


っと弱めの銃声のような音がした。


「おぉー!」


石は木の板を貫いていた。


「どう?これなら武器になりそうだろ?」


「ええやんそれ。まぁ紐を離すタイミングクソほどむずそうやけど」


「まぁそこは練習すりゃあ何とかなるやろってことで」


「よーし、早速どんどん作ろー!」


「おおー!」


「な、何やってんの、君達」


皆んなで投石装置を量産しようとしたところで副校長先生や複数の人が校舎から出てきた。


そりゃそうだ。だって銃声に近いものが聞こえたんだもの。


「あっ、えっと、これはですね」


「新しい武器を作っていたんですよ」


沙莉が投石装置について色々説明した。


「なるほどゾンビに対抗出来る遠距離武器ですか、いいですね。これがあれば移住計画が結構楽になりますね」


「良かったです。まぁ結構練習すら必要があると思いますけど」


「それもそうですねぇ。因みに君達は皆んなそれを使いこなせるのかい?」


「えーっと俺は使えますけど、、」


「多分私も使えると思うよ」


作った本人の焔は出来ることは分かっていたが沙莉も出来ると言い出した。


「他の三人はどうかな?」


「俺もまぁ何回か使えば出来るんじゃないかな?」


「光も相当な精度を求められない限りは今日練習すれば出来ると思うよ」


なんと光と蒼雷までも出来るときた。


そうしてみんなの視線が私に集まった。


「う、うぅ、流石に私は無理だとは思いますが練習してます」


「草乃、無理はしなくていいんだよ」


「そうですよ。別に無理をしてまで危険を犯さなくても」


「あーもう!なんか私が弱いみたいに扱わないでよ!私だってこれくらい出来るんだから!」


「そ、そうですか。ではこの投石武器の扱いは皆さんに任せます」


「りょーかいでーす」


「それで、早速お願いなのですが」


えっ、何、もしかして今からゾンビ退治?それは流石に無理なんだけど。


「明日、移住計画に使う用のバスを取りに行きたいと思うんだけどね」


あーなるほど何となく分かったわ。


「そこで君達も一緒に来て欲しいんだ」


「なるほど明日ですか。俺はいけるけど皆んな使いこなせるようになりそう?」


「私は大丈夫だよ」


「俺もなんとか」


「光も」


「わ、私だって何とかするよ」


「よし、では明日、バス入手作戦開始ですね」


「「「「「おおー!」」」」」


はぁ、勢いで大丈夫って言っちゃったけど出来るかなぁ。今日はたくさん練習しよ。

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