第13話 ヒカリーを探せ

光を探す為に私たちは二階三階とフロアを見て回ったが光はどこにもいなかった。


そして最終フロアの四階に上がってきた。


「なかなかおらんなぁ光」


「しかもちゃんとゾンビ達は殺されてたし」


「やっぱ光は別に危険な状況じゃなくて腹壊してトイレにこもってるだけとか」


「あー確かにそれはアリエールかも」


そんな感じで私たちが光は無事だろうと思って進んでいるといつの間にか端の方まで来てしまっていた。


「さぁて、もう全部見たかなぁ」


「残りは沙莉の行ってる地下とこの映画館だけだね」


このショッピングモールには映画館も内蔵されていたようで光がいる可能性がある最後の場所だった。


「さぁーて、さっさと映画館の中確認して、沙莉のとこ向かおうぜ」


そんないつも通り呑気に私たちは映画館の中へ侵入していった。


「さて、とりあえず劇場一つ一つ見て回るか」


「そうだね」


「チケットも持たずに劇場入ってくのは少し罪悪感というか背徳感があるよな」


「確かにわかるかも」


そんな雑談しながらも私たちは一つ一つ劇場の中を覗いて回った。


「しっかり劇場の中もゾンビ達殺されてたな」


「やっぱ光のあの速度はインチキだよな」


そうして私たちは最後の劇場の前へとやってきた。


「ここが最後の8番シアターか、今までのやつより一回り大きいな」


この8番シアターはこの映画館一の劇場のようだ。


「さて、もしかしたら光がいるかもしれないし、さっさと入るか」


そう言って焔は劇場の扉をゆっくりと開けた。


「何の音もしないな」


「そうやなぁ、おーい!ひかりー!いるかー!」


• • •


「居ないみたいやな」


「やっぱ沙莉の方か」


そうして光が居ないと分かり私たちが劇場を去ろうとすると


「「っ!」」


その時いきなり二人が後ろを向き焔は双剣を構え、蒼雷は超能力を使い周りの物体を浮かせた。


「えっ!な、なに!どうしたの二人とも!」


「草乃少し下がってな」


「どうやら沙莉じゃなくて俺らの方が当たりだったみたいだ」


「えっ!でも光は反応しなかったんじゃ」


「そりゃあこのレベルが居たらあの光でも苦戦するかもな」


「おい!出てこいよゾンビ!いや、進化版ゾンビ!」


その声に反応してか、スクリーンの近くから一体の巨大なゾンビが出てきた。


「えっ、なにアイツ」


「でけぇな、3、いや4メートルくらいあるか」


「何でこんなに強くなってんのか」


「でもまぁとりあえずぶっ殺すか」


「でも、そしたらあんだけ強そうな奴がさらに強くなっちゃうんじゃ」


「そしたらまぁそん時はそん時だ。結局こいつ一旦動けなくしねぇと何も出来ねぇだろ」


そう言って足早に焔はゾンビに向かって切り掛かっていった。


「【身体強化】【火属性強化】」


焔の体と剣の炎が強化された一撃を焔がゾンビの首元に叩き込んだ。


「チッ、クソッ硬ぇなコイツ。そりゃ速度重視の光が勝てないわけだ」


「切れないなら引きちぎるまで!」


今度は蒼雷が超能力でゾンビの体を四方八方に引っ張った。


だがしかしそれでもゾンビはなかなか引きちぎらなかった。


「クソッこれでもダメか」


「おい!蒼雷そのまんまにしとけよ!」


「【コロナファイヤー】」


超能力によって引き伸ばされていたゾンビの体に焔の炎魔法によって燃え盛った。


「ふぅー、やったか?」


「フラグ立てんのやめぃ。まぁでも流石に倒せたでしょ」


「んまぁ、こんくらいなら一人でも何とかならんことはなかったな」


「まぁまだ俺は全力は出してないからね」


「それは俺もだ」


「嘘つけお前の超能力じゃどうにもならんかったやろ」


「いやいや、違いますぅー。あれは君に手柄を譲る為にやったんですー」


「ほら、二人ともそんなふざけてないで光のこと、探すよ」


「「はーい」」


「さぁて光はどこにいるかなぁ」


「草乃!逃げろ!」


「えっ?」


いきなり焔の怒号が聞こえて振り返ってみると、目の前には先ほど倒したはずのゾンビがいた。


「あっ、」


私は思ったここで終わるのかと、何でさっきフラグ建てまくってたあの二人じゃないんだよ、と思いながら覚悟を決めた瞬間、


襲い掛かろうとしていたゾンビの両腕がいきなり地面に落ちた。


「いやー危ない危ない。やっぱこうやって仲間の危機に颯爽と現れて助けるっていうのはやっぱ良いよなぁ」


「ひ、光!」


ゾンビの両腕を切り落とし、私の前に颯爽と現れたのは私たちが探していた、光だった。

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