2章: 金獅子内部抗争編
第19話: 反乱の火種
「まぁ、頑張りぃや」
鍛冶屋から出る時、二剣さんは俺の背中を押してくれた。
それで何か新しいことが起きるわけでもなかったが、おれの目標が固まった瞬間でもあった。
舞宵に届かせるには、青葉丸を第三段階以上まで、成長させなければならない。
それには一体、どれだけの時間を使うことになるのだろう。どれだけシャクナゲを待たせることになるのだろう。
「とりあえず、私はこの後アルテルフへ戻るけど、シュウはどうする?
ロータス…カースのところへ行くの?」
とりあえず、シャクナゲを送った後に帰ることに決め、彼女についていく。
「送ってくよ」
「えぇ。ありがとう」
おれたちは短く言葉をかわし、そのまま歩き続ける。
「ありがとうね。シュウが私を救うって言ってくれた時、すっごく嬉しかった。
それじゃ、おやすみ」
「おやすみ」
おれはシャクナゲを送った後、家に帰る。今日のことは明日話せばいい。今説明しなければいけないと言う急ぎでもない。
酒場に着いた時、中で口論を交わしている一つのテーブルに目がついた。
「俺の作戦はこうだ。
奴らは夜襲を警戒して、おそらく夜はそこまで寝れないだろう。
そこでだ。俺らは夜襲ならぬ朝襲を仕掛ける。
朝なんてものは、徹夜をしていると眠気が優ってきそうなタイミング。
あいつらの中で、最も厄介になるのはリーダーとその下にいるエルフだ。
奴らはよく二人でモンスターの討伐を行なっていると聞く。
ランクBのギルドが受ける依頼なんて、そうそう簡単なものじゃあねぇ。
大体の場合、ギルドメンバー全員でかかって、やっと倒せる程度。
それこそ最難関と言ってもいい依頼ばかりだ。
それを二人でこなしてやがるってこたぁ奴らの馬鹿力さってもんがわかるわな。
そいつらは普通の人間が戦ったとしてもまともに勝てるようなやつじゃねぇ。
そこでだ。
俺とお前らでその最難関をクリアしてやろうって話だ。
他の奴らは、周りの雑魚どもを蹴散らしてりゃいい。
やってくれるな。ジュッテントン、駿平」
ジュッテントンと駿平と言われた男ら二人は、薄気味悪い笑みを浮かべるのを見て、おれの背中に何かが走り登っていくような寒気を覚えた。
「すみません。秀一郎です。宿の鍵をいただけますか?」
その場を離れようと、受付に行って鍵をもらう。
2階へ上がろうと階段を登っているとき、さっきのテーブルから聞き逃し用のない言葉が聞こえた。
「明日は金獅子下剋上だ。テメェらしっかり休んどけ‼︎」
「ヒヒヒッ、楽しくなりそうだぜぇ!!」
「わかった」
金獅子。確かに奴らはそう言った。
つまり名前のわかっていないもう一人の男……
それはおそらく「アコニタム」
驚いて足が止まってしまったおれを追い越して、駿平と呼ばれた男がすれ違いに階段を登っていく。
「おい、そこの少年。ちょっといいか?」
一体誰に向けて話しかけているのだろう。
まさか、おれが話を聞いていたことを見ていて、その口止めのために来たのだろうか。
「おい少年。無視するつもりか?」
駿平は、おれの肩を掴み、もう一度話しかけてきた。
間違いない。呼びかけられた少年とはおれのことだった。
「な、なんでしょうか。おれに何かようでも?」
いずれ争うことになるかもしれない人間だ。
警戒はしすぎるくらいがちょうどいい。
「やっと振り向きやがった。あぁそうだよ。
俺はお前に用がある。ちょっと付き合ってもらえるか?」
そう言って、階段を下り、酒場へと戻っていく。
おれもここで断り争いごとを起こしたくなかったので、それに従った。
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