第11話: アルテルフへ

「着いたわ。ここが、金獅子の本部。アルテルフよ。

 ここへ来るのは懐かしいけれど、もう私はここへは入れない。

 あとは頼んだわよ。可愛い新人さん」


 おれは、彼女の軽口を受け流しながら、アルテルフの中へと入った。


「とまれ!! 誰だお前。ここは金獅子の本部と知っての行動か?」


 入り口の門を潜ると、数人の人に囲まれた。

 今はトラブルが起きているというし、外部からの侵入には一段と厳しいのかもしれない。


「ここのギルドリーダー、金獅子のシャクナゲに会いにきた。

 彼女とは手紙でやりとりしていて、今日会う予定になっていた」


 取り消されていることを彼らには言ってないことを願いながら、おれは要件を告げる。


「そこで待て」


 そう言って、一人の男が屋敷の中へと下がっていった。


 そして、その男が帰ってくると、


「確認が取れた。入っていいぞ」


 と、実に冷たい歓迎を受けて、おれは屋敷の中へと入った。


「こちらが、シャクナゲ様のお部屋になる。くれぐれも失礼のないよう」


 おれの身を案じてくれているのか、余計な指摘をおれは「はいはい」と横へ流す。


♦︎♦︎♦︎♦︎


「入れ」


 ドアの向こうから女性の声がして、道案内をしてくれた男がそのドアを開ける。


「失礼しまー……茜⁉︎」


 部屋の奥で座っていた女性に、おれは衝撃を受ける。


 諫早茜。かつておれと共にやんちゃをし、色々と問題を起こしていた旧友だった。


 彼女と一緒にいた時は、とても楽しかった。

 パン屋に行っては、そこにきた新人冒険者の元へ駆け寄り、輝かしい冒険談を期待して、声が枯れるまで喋らせたり、ちょっとした冒険に行き、モンスターにちょっかいをかけたりということをよくしていた。


「茜…だよな、なんでここに…?

 信じられない……それに、シャクナゲはどこにいる?」


 茜と感動の再会に心を弾ませている場合ではない。

 おれが今話したい相手は、シャクナゲなのだ。

 茜とはその後でじっくりと話さなければならないことがある。

 茜は昔、死んだことになっているはずの人間だ。

 彼女が単独でモンスターに挑んだ時に、死んでしまったため、死体も出ていないはず……

 なのに今、自分の目の前に彼女がいる。

 その疑問についても、彼女と話すべきだ。


 しかし、茜は顔を傾げると、


「私がシャクナゲですが? シュウ、大きくなったわね。見違えたわ」


 茜改めシャクナゲは、懐かしい顔をした。


 よく見ると、彼女はところどころに包帯が巻かれており、血の色が滲んでいる。


「どうしたんだその傷。かなり酷いように見えるけど…」


 シャクナゲは自分の傷を軽く撫でると、


「この傷に関して、あなたに伝えないのは不自然ですね。

 いいでしょう。全てを話します。

 シュウと会えなくなってから、私の身に何が起きたのかを……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る