【第三部 ⑥達也編】 …俺が香緒里ちゃんを好きになったのは②

【現在、三月への電話】


三月「や~だよ」

「は…はい?」

三月「俺は今日はやることあるの!お前の相談なんか聞いてる暇ないの!」

「で、でも速見先輩が…あ!やば…」


三月「ふ~ん、沙織の差し金か…あんにゃろ~今日は普段の五割増しで寸止めセッ⚪スだな。明日の飛行機で爆睡させてやる!」

「あ、の…出来れば俺からって話は内密に…しませんよねあなたは…」

三月「うん(笑)とある筋からのたれ込みって言っておく~」

「…そんなの俺から確定じゃないですか」


ぶれない…本当、はじめて会ったときからこういう人だよ。穏やかで子供っぽさを隠さない…でも今は確信している…この人は間違いなく俺の同類。しかも桁違いの…この人は…怖いひとだ。


昔から思ってた…もし速見先輩が浮気とかで自ら三月さんを裏切ったなら、この人の秘めたる刃は速見先輩を壊すだろう。先輩が廃人になるまで。



「あ~あ、本当に香緒里ちゃんのこと相談あったのにな~、…気が削がれましたっ!」

三月「そんなの俺ん中では二の次」

「はは…」

三月「…だからさ達也」


「はい」


三月「明日、うちに来なよ。沙織はいないけど…うちで飲もうぜ?泊めてやるよ」


明日から香緒里ちゃんは三月さんの家。


「三月さん…はい!」



【達也の回想②過去の課の飲み会】


香緒里「たっちゃん、速見先輩の貞操、風前の灯みたいよ?先輩に告らなくて良いの?」


香緒里ちゃん、俺の同期。日本人形みたいな子、良くも悪くもね…まったく面白味もない。

…こんな子に、実は速見先輩レイプするの諦めたんです…なんて言えないよ。


「うるさいわ、既婚者は黙ってろ」


同じ同期の田仲とは大学からの周知の仲。


香緒里「酷い…まだ花の独身OLなのに」

「さっさと田仲と結婚しろ!」

香緒里「…そうなるのかな…本当に…」

「…え?」

香緒里「何でもな~い」


その時だ、何気ない香緒里ちゃんの表情の中に今まで全く見えていなかった闇が…香緒里ちゃんの闇が垣間見えた気がしたんだ。


多分、あの秋山先輩でさえも気がついていない分かりにくい深い闇…


この日、この瞬間から俺の興味は香緒里ちゃんに移ったんだ…でも…


…初めから俺は傍観者で良かったんだ。


速見先輩がそうなったように…田仲が香緒里ちゃんを幸せにしてくれれば…それで良かったんだ。


でも…婚約しても結婚しても香緒里ちゃんの闇は無くならなくて…


それは痛恨の失敗だった。俺はあまりにも長く香緒里ちゃんを見つめ過ぎたんだ。

俺は香緒里ちゃんに、俺が女の子に持ってはいけない感情を持ってしまった。

いつしか俺は…香緒里ちゃんを…本当に好きになってしまっていた。

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