【第三部 ②】 律子さんと、沙織のあっかんべー

【某ラブホテル(数時間後)】


上半身ブラジャーのみで、心なしか震えている香緒里ちゃん。ふと、まだ外れきっていないブラ紐の横の真新しい痣傷に目をやる。やっぱりこれって麻縄の…。


香緒里ちゃんも俺の目線に気がついたようだ。

…そうっと触れてみる。


香緒里「あっ…あん!そ…そんなに、あん、目立ちます、か…あん、あん、あん!」

「いや…香緒里ちゃんが秋男の病室に逃げ込んできた時の事、思い出してね。俺たち何にも知らないから簡単に『どうしたの!』って詰め寄ったけど、香緒里ちゃん答え難かったんだろうなあって」

香緒里「あっ、あっ!…そ…それは、あっ!そうです…あっあっあっ」


…簡単に言うとね、田仲のバカは、ハードなSMプレイにハマっていたんだ。


【秋男の病室(前回の続き)】


一同「………」

香緒里「あ、あの…(汗)」

沙織「…まあ、一種のDVよね…」

秋男「いや…ちょっと違うんじゃないのか?俺にはどちらかと言うと、犬も食わない…」

沙織「先輩…シャラップ!」


う~ん、俺もどちらかと言うと秋男の意見に賛成…

沙織は簡単に「何とかするから身一つですぐにいらっしゃい」とか言っちゃったみたいだし、香緒里ちゃんもそれにすぐに乗って来たって事はそれなりに大変な状況なのかも知れないけど、これ…下手すると馬に蹴り飛ばされかねないタイプの夫婦間の小競り合いに首を突っ込んでいるのでは…


達也「そんなに酷いことされたの?香緒里ちゃん!」

香緒里「あ、あの…たっちゃんなんか目が怖い…」

沙織「はい!達也、退場~!」

達也「何でぇ!?」

沙織「デリカシー無いぞ…お前らしくない。そんなの男相手に簡単に答えられる訳無いだろうが!お前と秋山先輩は喫茶室に移動!」

秋男「ちょっと待て!何で俺まで!」

沙織「長年の独り身臭がSMに反応して何かイヤらしく漂ってきます!」

秋男「てめえコノヤロウ!ほんっとお前って俺にはヒドイな…俺だってこの間結婚…」

「そうだよ、さっさと嫁さん紹介しろよ!」


もはや収拾が付かないのでは…さらに!


(ガチャ!)

?「あっく~ん!着替え持ってきたよ~」


沙織「…あ」

香緒里「…」

達也「誰?」

ま…まさか!


秋男「り…律っちゃん!回れ右!今すぐ退避~!」

律子「な…なんでぇ~!?」



香緒里「く…クリ⚪ャップとかバ⚪ブで遊ばれるくらいなら良かったんです。毎日なのはちょっとでしたが。で…でも、そのうち縄の跡が残るくらい縛られたり、今度は浣腸してア⚪ル責めるとか言い出して…」

「アナ⚪良いな~」

沙織「…みっちゃん?」

「い…いや、羨ま許せんな!」

沙織「…訂正されてないし…」


律子「まあまあ…、香緒里さん、緊縛とかの危険なプレイで身体に影響が出ている可能性もありますので、もう少し詳しくお聞きしますね」



従前のゴタゴタは新メンバーが鮮やかに納めてくれた。


律子「皆さま初めまして…秋山の妻の律子と申します」

いっそ艶やかとも言える綺麗なお辞儀は出会ったときの沙織を思いださせて…呆けていた俺は、沙織に思いっきり足を踏まれた。

沙織「…みっちゃん!?」

秋男「だから三月には紹介したくなかったのに…」

…沙織に似てる?

(画像 秋男の嫁の律子さん)

https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093079795280309


達也「ほえ~速見先輩に似てますねえ(雰囲気が)」

秋男「…いや!全く違うだろう!(胸が!)」

沙織「…秋山先輩!前々から思ってましたが…今日こそきっちりとOHANASHIを着けましょう!」


律子「待って待って!まずはお客様の容態確認からよ。沙織さん・三月さんご一緒に」

秋男・達也「俺らはやっぱり外なんかよ!」



律子「縄の跡は酷いですね。無理やりやった感じ。結構長く跡が残るんじゃないかな…」


沙織「香緒里…責めるとき田仲何か言ってた?」

香緒里「そうですね…印象に残ってるのは『なにか違う』とか『そうじゃないんだ』とか」

沙織「あっちゃ~」


「…沙織?」


沙織「ん~とね、みっちゃんは秋山先輩たちを呼んでくる!!但し20分後」

「…へいへい…よっこらしょっと、じゃね」



律子「沙織さん?」

香緒里「速見先輩?」


沙織「…逃げて正解!」

香緒里「あ…ありがとうございます?」

律子「沙織さん…何か心当たりが?」 

沙織「はい…律子さん」


沙織「田仲…香緒里の旦那ですが、性生活で男としての自信無くしちゃって…そういう方向に活路を見いだそうとしたんだと思います」

律子「…根拠は?」

沙織「あたしも昔…同じ目に…あったことがあるから」

香緒里「あ!あの三月さんが!?」

沙織「違うよ…あんたも少しは聞いたことあるでしょ?あたしの大学時代の婚約者との破局話」

香緒里「…あ…」


沙織「香緒里、この間のゴールデンウィークに私の大学時代の不倫の話をしたの覚えてる?」

香緒里「…はい…可愛い顔して大概だな…とは思いましたが」

沙織「…うるさいわね!あんたにだけは言われたくない…じゃなくって…、結局、因果は回ってさ、私の場合は不倫時代に無断で撮影された私のセックス動画を婚約者に送り付けられちゃって…それを観た当時の婚約者くんがまんま田仲みたいになってさ」

香緒里「……」

沙織「私に色々やろうとするのに耐えきれなくなって…逃げちゃった。そしたら破談…」

香緒里「速見先輩…」


沙織「まあ、私のは自業自得なんだけどね。今考えたら、距離をおいて話し合うとか色々やれたんじゃないかとか思うよ…ねえ?香緒里…」

香緒里「…はい」

沙織「田仲の頭が冷えるまで、ちょっと距離を置こうか?どうでしょう律子さん?」



部屋に戻ると、律子さんが香緒里ちゃんの治療をするからと、二人で退出していった。

そして…


沙織「達也…悪いけどしばらく香緒里をあんたのところで働かせてやって!」

達也「はあ…良いですが、田仲に黙って…ですか?」

沙織「そうよ!みっちゃんは悪いんだけど、伝手で香緒里の住めるワンルームを探してくれる?」

達也「田仲…きっともうすぐ上京してきますよ?どうするんですか?」


沙織「待ってましたよ!私が説明する。付き添いは…みっちゃんの言うことは今回は伝わらないだろうから…秋山先輩付き合ってください」

秋男「俺、病み上がり…」


それと…と沙織が可愛い顔を近づけてきて、俺の耳元でささやいた。


沙織「このまま香緒里を連れてホテルへ…ちゃんと優しく抱いてケアしてあげてね?」


まじかよ?


「お前…それは…」

沙織「香緒里、酷く傷付いてる…今はケアが必須」

「…それで香緒里ちゃんが…俺に情を向けてきたらどうするんだよ?」

沙織「…今はそれでも良い…今はね」


まじかよ…


沙織「あ…」

「…まだ何か?」

沙織「あったり前だけどさ…みっちゃんは香緒里に情を移したら…ぜ~ったい駄目だかんね!!」


そう言って沙織は片目をつぶり、俺に『こいつを一生追いかけたい!』と思わせる魅力的な…その…「あっかんべー」を披露したんだ。

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