【第二部 完】 第9話 別離…でも、未来に向けて

【リビング】


三月「…田仲」


ぼろぼろの身体を引き摺るように俺はリビングの田仲に声を掛けた。


田仲「三月さん、何で!…何でここまで!?」

三月「田仲、時間が無いんだ!香緒里ちゃんのそばに行け!!」

田仲「え…え?」


三月「香緒里ちゃんは明日、警察に出頭する」

田仲「何で!」


三月「説明は後だ!後で、いくらでも殴られてやる…行けっ!」


バタバタバタバタ、バタン!


田仲「香緒里~~!!香緒里!?しっかり…香緒里~!」



三月「沙織…」


ぱーーん。左の頬が…熱くなって…


沙織「みっちゃんのばかー!大ばか!!」

優「…う…ん?…え?…ママ…パパ?……あ~~ん!!」


うたた寝から覚めた優の泣き声が…リビングに響いた。



【翌朝 リビング】


翌朝、警察が来るまでの間、少しだけ香緒里ちゃんと話した。


三月「香緒里ちゃん、あんなひどいセ⚪クス中の約束だけど…約束は約束だ」

香緒里「はい…分かってますよ?どんな状態になっても、私は必ず直哉さんと三月さんのところに戻ってきます!」


そう言う香緒里ちゃんの顔は穏やかで、その目には昨日の狂気の色は一片も残ってはいなかった。


田仲「必ずだよ!香緒里。待ってるから」

香緒里「あなた…ごめんなさい…ごめんなさい!(涙)」


三月「香緒里ちゃん…俺には謝罪は無いの?」

香緒里「うふっ!三月さん!戻ったらまた抱いてくださいね…謝罪はその時にたっぷりと!」

三月「え~っ、また?」


香緒里ちゃんが笑っている。

…田仲!お前がうんうん言ってるのって、おかしいんだからなっ!


三月「もう…沙織が許したらな!!」


香緒里「速見先輩と…話しました。少しだけですけど」

三月「沙織は何て?」

香緒里「あたしも三月さんも、ぜ~ったい、許さないそうです(笑)」

三月「うっ!」

香緒里「…でも…落ち着いたら、絶対に顔を出せって…出さなかったら絶交だって」

三月「……」


香緒里「必ず顔を出します。あたし、速見先輩、大好きだから…」

三月「それでも俺に抱かれたいんかい!」

香緒里「それはそれ、これはこれです(笑)」


香緒里ちゃんがおどける。


香緒里「あたし…速見先輩には、絶対負けませんから(笑)」


遠くてサイレンの音が聞こえてくる。

時間が…無くなっていく。


三月「香緒里ちゃん、身体に気をつけてね。田仲、付き添い頼むぞ」

二人「はいっ!」


香緒里「三月さん、さようなら…少しだけ、さようなら…」

三月「いって…らっしゃい!」



【国見達也探偵事務所】


達也「田仲、香緒里ちゃんには馴染みの弁護士の先生を付ける。大丈夫だよ…香緒里ちゃんはすぐ戻ってくるさ」

田仲「ああ、ありがとう達也。…三月さん、酷いですよ!…この間の香緒里ってば、俺が声を掛けても四つん這いのまんま腰だけ浮かせて生まれたての小鹿みたいに小刻みに震えて固まってて。ちょろちょろ失禁してるわ目の焦点はあってないわ、ぼろぼろでしたよ」

達也「そういうこと俺の前で言うな!本当にデリカシーがない奴っちゃな!」


三月「そういうセッ⚪スをずっと元彼に食らっていたんだよ香緒里ちゃん…かわいそうに」

田仲「いや、香緒里、元彼より凄いセ⚪クスだったって、俺にちくってました!!」

達也「三月さん…いったい何やったんすか!?」


三月「…ただの子宮セ⚪⚪スだと芸が無いから…突っ込んだまんま寸止め仕掛けた」

田仲「…ひでえ」

達也「…えげつねえ」


三月「…じゃなきゃ、元彼のセッ⚪スを思い出に塗り換えれないだろう…俺は香緒里ちゃんをつまんない呪縛から解放してやりたかったの!」

田仲「ああ言えばこう言う…」

達也「ほんと、ものは言いよう…」


うるっさいなあ!!


三月「そんなことより!!…俺はこれから大変なの!…沙織との関係修復をしなきゃならないんだよ!!」


達也「ああ!それは手伝えないっすね~、桂木家もいよいよ離婚っすかね~」

田仲「速見先輩、泣いて泣いて…思いっきり怒ってましたよ~、『みっちゃん絶対許さない』とか」


三月「…おまえら…覚えてろよ…」



香緒里ちゃんは、ほどなく留置場から戻れるそうだ。

理由は時効成立。達也の弁護士は、香緒里ちゃんが屑彼氏に洗脳されていたこと・当時の薬の移動が香緒里ちゃんに何の利益ももたらしていないことを取り纏めて、営利目的を否定した。

(解説:覚醒剤の輸出入は営利目的でなければ、時効はもっと早い)


田仲は、長年勤めた会社を辞めて地元に転職する。

香緒里ちゃんが戻ってきたら、一緒に静かに暮らしていくと言う。


「悔しいけど、結局はお前の言う通りだったな」

田仲「はい」

「香緒里ちゃんは浮気なんかしていない…心のバランスを崩しただけ」

田仲「香緒里が三月さんに身も心も満足させて貰って、私たち夫婦はやっと普段の生活を手に入れられます!」


だから…と田仲は穏やかに笑う。


田仲「戻ってきた香緒里が望んだら、香緒里を抱いてやってくださいね」

「…沙織が許したらな。知ってるか~?あいつは普段は凄い嫉妬深いんだぞ?」

田仲「ははは!そんな感じですよね!」

「おまえら沙織に感謝しろよ!」

田仲「じゃあ、せめて…お子さんも入れて三人で俺の地元にいらしてください。香緒里と出来る限りの歓迎をしますから」


三月「ああ!」


俺たちは香緒里ちゃんの帰りを待つ。

それは…そう遠くない未来に実現するはずだった。


【第二部 完】


※そんなことをやっている俺たちの裏で、一人で嫁取りをやっているボケがいる!!

秋男のスピンオフ「内科病棟のジュリエット」

https://kakuyomu.jp/works/16818093079739518482

同時並行時系列進行にて、連載中ですっ!!



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