第6話 夢の中で

夢の中で・・・

私はお姫様のはず、なんだけど、なんで足がこんなに短いの?水かきもついてるわ!

「クワ、クワ、クワ」(誰か助けて~!)

アヒルみたいな声じゃない?私の声もっとカワイイはずよ。


 だんだん思い出してきた!森で遊んでるときに、「僕と一緒においしいケーキを食べないかい?」と誘われて魔法使いの家に行ったんだったわ。だって魔法使いはイケメンだったんだもの。昔話の魔法使いは怖い顔して黒マントを着て、杖ついてたりするけど、今どきの魔法使いはイケメンなのよ。

 そこで魔法の薬を飲まされて(甘くて美味しかったから飲んじゃったわ)魔法使いにアヒルに変えられたの。お姫様に戻るには、王子様にキスしてもらわなくちゃいけないのよ。


 イケメンの魔法使いは嫌いじゃないけど、私がアヒルじゃしょうがないじゃない。早くお姫様に戻りたいわ。というわけで、短い足でよたよた歩いて魔法使いの家を抜け出したわけ。お腹空いてきたけど、アヒルだからそこら辺の草を食べれば大丈夫。結構おいしいじゃない?羽をパタパタさせても、アヒルは飛べないんだったわ。歩くしかありません。お池にジャボンと入ってみたらちゃんと浮くではありませんか。私はカナヅチのはずなんだけど、アヒルになれば泳げることを発見したわ。


 なんて言ってる場合じゃないのよ。早くお姫様に戻らないと。お城ではみんな心配してるはずよ。王子様はどこにいるのかしら。

「クワ、クワ、クワ」(王子様どこにいるの~!)

池の鯉に聞いてみたわ。

「私たちの王子様は池の中を泳いでるけど、あなたの王子様は知らないわ」


小鳥たちにも聞いてみた。

「私たちの王子様は南の国へ飛んでいったきり、帰ってこないのよ~。あなたの王子様も南の国にいるんじゃない?」


なんか違うわ、だって私はアヒルだから。

鳥目は暗くなると見えなくなっちゃうから、早く探さないと。


 谷の小川にアヒルたちが遊んでる。その中にひときわ白くて美しい羽をもったアヒルがおりました。

あれが王子様に違いないわ!

「クワ、クワ、クワ」(私は夢の国のお姫様、あなたは王子様なの?)


「クワ、クワ、クワ」(そう、僕はアヒル国の王子様、君はとってもかわいいアヒルだね!僕と一緒にこの小川で暮らさないか?)


え~!そんな話聞いてないわ。童話の中のお姫様は王子様にキスされると人間に戻って、人間の王子様と結ばれるのよ。


そこに、森のくまさん登場

「ガオ~」(食べちゃうぞ~)


「クワ!、クワ!、クワ!」(みんな逃げろ~)


あらやだ、水かきが引っかかって足を怪我しちゃったわ、食べられちゃう~


「かわいそうな怪我したアヒルさん、助けてあげよう」

森のくまはあっちいけ!!


「クワ、クワ、クワ」(まあ、あなたが私の王子様なの?)


「そうだよ、僕が君の王子様。怪我した足をみせておくれ。僕がキスしてあげよう」


あら不思議、私お姫様に戻ったわ・・・・


 やだ、いいところで目が覚めちゃったわ。このあとは、王子様と結ばれて幸せに暮らすはずだもの、そこまで夢見たかった。

でも、現実の私の王子様はどこにいるのかしら、早くめぐり逢いたいわ。


神様、ステキな恋人ができますように!













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