第45話:再臨
「うぅ……ひぐっ、うぁあぁ……うっ、ぐす」
「……………俺には何も言えない。けど、一つだけ聞きたいことがある」
「づずっ……………?」
「ランスロッドのことは好きか?」
「……………あぁ、友愛と言っていい。しかしその姿を見れば嫌い。もうわからないのだ……」
「なら大丈夫だ」
「? どう言うことだ?」
「古い言葉でな、好きの反対は無関心。本当にランスロッドのことを恨んでいるなら、関わり合いたく無いと思うのが普通だ。でもキングは向かい合おうとしている」
「……!」
「円グラフの中に新しく嫌いの数値が出てきただけで、好きの大きさは変わったけど、総数は変わってない」
「キングの中ではまだランスロッドを好きで居て、自分の心のキャパを超えて入ってきた嫌いに混乱しているだけだ」
「……そうなのだろうか?」
「保証する。減ることはあっても、心の中の嫌いが無くなるわけじゃない。でもそこまで行けば、『その他』の感情に吸収されて見えなくなる……………と思う」
「ははは、適当だな」
「いや、アドバイスの経験なんてないから」
少し落ち着いてきたか……………
「アマネ殿、手を握ってくれないか。ノートンがよく怖がる私にやってくれたから」
ギュっと、キングの冷え切りこわばった両手を、包み込むように握る。
「……やはり、アマネ殿はノートンとは違うな。しかし温かい……」
時間にして30秒ほどだろうか……
……———ズズゥゥゥゥン!
「「……!!」」
今の音は!
「まさか皆んなに何かが!」
「落ち着け、私1人では手に余るかもしれない。慎重に合流するぞッ!!」
キングの声にいつもの迫力が戻っている!!
「キング!」
「その通り、私がキングだッ! 心配させたなアマネ指揮官ッ!! もう大丈夫だ、私がいるからなっ!!」
◇◇◇◇◇
「ぐぅ!」
「ノイズ!!」
「来るなッ!」
駆けつけると、ノイズが不自然な体勢でその場に固まっていた。相対しているのは人型の機械人形三体……………
「
『大正解! まさかこんなところに工場があるなんてな。でも廃工場じゃ埃しか出ないじゃねえか! ……って嘆いていたところに幸運がやって来やがった』
一際大柄な奴からスリムな個体に話が引き継がれる。
『知らないと思うけど、そこの赤髪と青髪とツインテの方の金髪は賞金がかかってるのよ! 貴方達全員でいくらになるのかしら』
……最後の1人が口を開ける。
『殺していいのか?』
『そうよぉ、全員殺しなさい!』
「「「「「「!!!」」」」」」
俺は叫んだ!
「工場から出るぞ! ここはイエルロが手を出しにくい!! スカレット、ナビゲートだ!」
「そうしたいのですがッ、ノイズが!!」
クソッ! あれは謎の能力で拘束されているのか!?
「ウチを置いて行けッ!! イエルロとランスロッドが同じように拘束されたら目も当てられない!! 体勢を立て直せ!!」
『うるせえなあ』
「ごぶっ!!」
腹に強烈な一撃を喰らい、何とか意識を保っているノイズを見て行動しようとするキングとランスロッド。
「待て、2人とも!」
「アマネ指揮官! これが黙って見ていられるとでもッ!!」
「許さない……ッ!!」
落ち着け、と言おうと口を開くが……
「十分落ち着いているぞ! どのみち
「……頼んだっ!!」
『行かせるとで「貴様の相手は私だ」……!』
「キング!」
「済まぬ、ランスロッド。今まで悩ませてしまって。しかし私はもう迷わないッ! 王として、楔を打つための石片になろうッ!!」
頼むぞ、キングッ!!
『赤髪がナビゲーターか』
瞬間、スカレットの胸から鮮血が飛ぶ。
「スカレットォッ!!」
「ブルース! 手当は後だ、今は脱出するぞ!!」
来た道を戻り、障害物を貫いて最短で外に出る!
「戦闘体勢!」
2人は……………!
『ふざけやがってこのメスガキがァァァ!!』
「がぅ……ふっ———」
「賞金首でもないくせに、随分と手こずったわね」
———腹を貫かれている、明らかに致命傷だっ! どうしてあの時キングを置いて行った!!
『やっぱりアカサが拘束したやつは手応えがない』
全身を打撲で赤く染め、顔の原型を留めていないノイズ……
「……………ぁぁぁぁぁァァァアアア!!」
怒るランスロッドの銃口が跳ね回る。全て冷静に頭部を狙い飛んだが……!?
「ふぅ……………痛ぇじゃねえの」
大柄なやつが全て弾き返した!? そして何かを唱えるとランスロッドの動きが止まる!
「……!?」
奴が動いた通りにランスロッドの体が動き、向けられたものを、お返しだと言わんばかりに彼女の改造銃が自身に向けられる。
「止めろッ!」
『バァン!!』
———バン
………崩れゆくランスロッド。
固定されたイエルロ。
逆立ちに入るも、他の2人に阻害され倒れ伏すブルース。
……………あぁ、
「駄目だっ、何か方法がっ!」
『無いヨ』
『バカじゃ無いノ?』
『お前も殺していいのカ?』
……………あぁ、俺は無力だ。
《—————力が、欲しいか?》
「……欲しい」
《どのような力を求めるのか?》
「——————何もなくていい、ただみんなを守れるだけでいい! 仲間を守れればそれでいいんだ!!」
《そうか……………》
「なら、任せとけ」
ドン、と肩を叩かれる衝撃のまま顔を上げる。
「え、シル?」
いや、彼女はこんなに広い背中を持っていただろうか。
流れるような手つきで後ろ髪を揺らすと、スルスルと成長するように伸びるシルクのような御髪。
再び光を灯した吸い込まれるような紫の瞳。
何処からか現れた黒いロングコートに身を包み、懐から取り出した煙草で紫煙を吐き出す。
「……………笑ってくれ」
溢れるように、俺の口から突かれた呟き声。
振り返った彼女はにんまりとした笑顔を浮かべる……………
「にはは、
左手に光り輝く
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