第43話:天災、アスナ。

「さあ、役者も揃ったところで始めよう、殲滅者会議を」


すり鉢状になっている、資料でしか見たことがない、今は亡きコロッセオのような造形をしている場所に、500人を超える幻想少女が集まっていた。


「こんなにたくさん……!」

「登録されている娘を数えた方が楽そうですねぇ」

「……全員ヤれるわ」

「(コク、コク)」

「物騒だぞ、珍獣コンビ」

「まずは話し合いからだろうッ!!」

「肯定」


そして……言われなくとも分かる格の違い……あいつらが、あいつらこそがッ!


「そして紹介しよう、お前たちがS級と括っている最高戦力たちを。今いないやつの方が多いけどな」


順に緑髪、青髪、紫髪を指さしていく。




「まず緑、保護者プロテクター雑踏嫌いの緑サキュロス・グリーン』」

「よろしく、環境汚染共。それ以上臭え息吐いたら殺しますわよ?」




「青、憤怒者アンガー睡眠狂の青ヒュプノス・ブルー』」

「Zzzzzzzz……」




「紫、平等者バランサー傾きのテミス・———」

「なぜお前がここにいる?」


瞬きをする。巨大な鎌を持った少女が、エシルに向けてそれを振り抜く。




「エ—————」




間に合わない—————






















「物騒ね」

「(コクッ)」




しかし、亜神がそれを見逃すはずがない。即座に抜かれた銃口に遮られ、タタラを踏まざるを得なくなる紫髪。


「……ほう、バイオレットがそれ程までに取り乱すとは、ホワイトはよっぽどの相手だったようだな」

「! こいつが!」

「師匠を……」


乱入者を標的と見定めたのか、イエルロが挑発を口にする。


「私程度で苦戦するなんて、S級殲滅者もお里が知れていると言うことかしら?」

「黙れ、全部A37のせいだ。なんなんだ、あのバケモノは?」

「あら、知らないの? 量産型よ」

「違う。天災と言っていい、もっと異質で、最も純粋な魂を持った———」




「少々、おいたがすぎるぞ、クソガキ」




「!! ……………(スッ)」


……どうやら、ルージュはこの集会の中でも強い権力を持っているらしいな。


「さて、今日の議題はそこにいる白髪………の中にいる新しい仲間、『時計弄りの白クロノ・ホワイト』についてだ。アタシとしては仲間に迎え入れ、の要になってほしいわけだ。反対意見は聞かないぞ、バイオレット」

「っ!」

「そして、それに異議を申し立てるためにはるばるやってきた人間、カズト・アマネ指揮官だ、はい、はくしゅーーー」




———シィ—————ン………




「……ふぅ、まあそれでもいい。で? そいつの記憶を戻す方法が知りたいのか?」

「あぁ」

「確かにアタシたちが管理しているロストテクノロジーにそう言う記述は無くは無い。でも分かるだろ? 情報っつうのは力だ、兵器だ。ましてや一体で戦争を終わらせる力を持っているスイッチを押せる状態にするわけにゃいかんのよ」

「わかっている」

「イカれてんねぇ、なら条件を出そう———ここから東に真っ直ぐ行くと、廃棄された研究所兼工場がある。そこを制圧してアタシらに捧げろ」


「……それだけでいいのか?」


俺たちで攻略できるなら、S級直々に行った方が確実そうだが……


「まぁぶっちゃけめんどくせぇんだ。オンゲで簡単だけど大量にいる素材を他プレイヤーから安く買うのと一緒よ一緒。それに……………」




「お前らでクリア出来るとは思ってねえから」






◇◇◇◇◇






「……………攻略にあたって、エシルに渡すものがある」


俺が背負ってきた鞄から、短刀程の長さの剣を取り出す。


「それってもしかして」

「……『クレシューズ』ですか? あの伝説の」

「うむ! 天断ちの精霊剣クレシューズだ!」

「いままで誰も起動させることが出来なかった。でもエシルなら……」


ここで渡すのは賭けだ。いくらエシルが俺たちに歯向かわないとしても、目に見えた爆弾を渡すわけだからな。


しかし……ここで死んだら元も子もない。


「肯定……クレシューズ、起動」




逆剥けに折れたような造形の先端から、美しい刃が……………!!






「……………出てこないわね」

「……やっぱり、アスナじゃ無いとダメか」



はぁ……切り替えろ。よし、行こう。


「攻略開始!」

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