第42話:ケツイがみなぎった。
「あのクソッタレが」
ただ漆黒。光の反射すらなく、映写機が回る音だけがあたりに響きわたり、投影された映像に苛立ちを隠しきれない。
「どんどん原作から外れてってんな? 本来ならば、ルージュと会うのは5チャプター先だ。それに、キングと共闘するのも……………いや、これは俺のせいか。しかし、問題はオルターだ」
チェアに寝そべり、尻を浮かせる体制で足を組む。
「なぜあいつから離れるような真似をする? そもそももっと強く引き止めなければいけないだろ。俺と
頼んだはずだ、「見誤るな』と。
このまま適当に意識を保って、良きところでエシルに復活に動くように指示するはずだった。
……いや、それは違うか、正直言って俺は俺と言う存在に興味がない。
転生前の5倍以上の年月をこの身体で過ごしてきた。ずっと統制された世界で生きてきたからか、自己意識が薄れ、犠牲心すら芽生えてきている。
「にはは、これじゃリカの思惑通りだな……」
……無理な話だったんだ、平和な時代を生きてきた高校生には。俺の心が死ぬ前に、適当なところで俺をサブメモリーにし、エシルに全てを明け渡すつもりだった。
「どうしてだ、オルター……」
「……私には理解し得ません」
「にはは」
———ガァァァン!!
声に向けてワイングラスを投げつける。亜音速を超えたそれは、エシルの対応速度を超越し、中に入った液体で体を赤く染める。
「オルターに何を言われたのかは知らん。だが、俺の命令を最優先でやってもらう」
「キングを死なせるな、ランスロッドから守れ」
そのためならば、と。
「俺の一部を貸してやる。いつかお前の力になるものだ、扱えなければ死ぬだけだぞ?」
「……了」
再び俺は退屈な映像鑑賞に戻る。
画面に映し出されたものは、哀れみの表情を浮かべる主人公。
「……くそっ」
その目を辞めろ、俺はこれでいいんだ。
所詮何者にもなれなかった、哀れな量産型の物語だったのだから……
◇◇◇◇◇
「指揮官、確かにここなのですか?」
「あぁ、そのはずだが……」
「ガセをつかまされたのでしょうかぁ?」
「そんなことある?」
「少なくとも、その心配はなさそうだぞッ!」
キングが警戒を有した声で俺たちに告げる。この気配は……!!
「待っていたぞ」
「「「「「「「!!!」」」」」」」
この存在感! 間違いない、アスナやバーナテヴィルに相対した時と同じ空気の緊張感、……………こいつがッ!!
「ああ、アタシが……
S級
見下すような目で俺たちを見る圧倒的格上。幻想少女でも指折りと名高いイエルロとランスロッドですら身震いするような凍える視線。
俺たちは、この化け物たちとタイマンを貼らなければいけない。その事実に、絶対にアスナを救い出さなければいけないという思いが昂り、
ケツイがみなぎった。
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