第41話:祈り
「……」
「……」
「……」
「……あ゛あぁ〜〜〜!! もう、誰か喋りなさいよ! ただでさえ暇な進軍なのに!」
「……良い天気ね」
「そうね、どこまでも続く曇天、洗濯物も生乾きでしょうよ」
「あまり言わないであげてくださいイエルロちゃん、スカレットも数少ないボキャブラリーの中からなんとか絞り出して出した上での薄っぺらい言葉なんです。もっと別の議題にしませんか?」
「そうね、あんたが一番失礼なことを言っていることでも話し合う?」
「うむ、敵との戦闘の際に舌戦を制したものが勝つ場合が多いと言うデータをノイズから貰った!! ここは一つどうだろう、罵倒対決というのはッ!!」
「うるさいわよ、大声しか取り柄のない貧乳」
「———ッ! ———ッ!」
「黙っちゃった」
「辞めてやれ、本人が一番気にしているから」
「……なんか平和だな」
先ほどもバイソンの汚染獣の群れに遭遇したが、ランスロッドが想像以上に強くて、他が腕を出す前に一掃してしまった。
鬼神迫る勢いで、明らかに馬鹿げたリコイルをしている改造銃をぶっ放す。あの巨体から成し得る技だと思うが……
「……」
ずっと上の空で、キングを警戒しているような……
「指揮官、ここでキャンプにしましょう」
「……ああ」
考えるのは辞めよう。その時、嗅ぎ慣れないようでどこか懐かしい匂いがした。
「これは煙草の……エシル? 何をやっている」
「回答、虫除けを焚いていました。蚊や虻などの虫と蛇などの爬虫類は、煙草の煙に含まれるニコチン、ヒ素、鉛、銅、クロム、カドミウムなどの成分を嫌いますから」
「焚くにしても、もう少し遠いところでやってよ。煙臭くて嫌になるわ」
「そうね、イエルロは離れて良いんじゃない? 虫に刺されたければ」
「気分が変わったわ、もっと浴びましょう」
「……平和すぎる」
まるでこれからの展開が波乱に満ちているような、英気を養えと神が言っているような……
「……」
俺は基本的に無信仰だが、この時ばかりは祈らずにはいられない。
どうかこの旅路が、平和でありますように。
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