第34話:王たるもの

「おばさんか。うむ! 確かに私の精神年齢は三十五を超えているが、戦闘技能においては他の追随を許さぬほどの腕前で」

「バァァァカ、明らかな拒絶だろうが。年増って馬鹿にされてんだよ」

「なっ、なんと! 貴様、人の魅力は年齢にあらず、見た目にあらずという言葉を知らぬのか?世の中のおばさんに謝るのだッ!!」

「いや自分のことで怒れよ……で、やんの?」


三者のボルテージが上がっていく。各々の武器を展開し、直立の牽制を———!!


「ハァァ!!」


最初に仕掛けたのはイエルロだ。


安直と呼ばれそうなほど無機質な突進。しかし、体を揺らすことで予想を何十通りにも増やし、思考のラグを狙った戦術的特攻だ。


対処が遅れる———かに思われた二人は、冷静にキングが前に出てタワーシールドで防ぐことで事なきを得た……が!


「ハハっ!」


イエルロはナイフを収納し、その勢いのまま盾に張り付き、致死量のアンペアを流し込んだ。


それに対しても冷静に対処、内側から盾を蹴ることで衝撃を与え、イエルロを吹っ飛ばした隙に悠々と盾を回収した。


「破壊力においては貴様の方に勝機がある。しかし経験が足りんな! 人型の訓練は付け焼き刃もいいところだ!!」

「いじめてやんなよ、仲間になんだぞ」


エストックの勝利は確実かに思えた……が!!






———バチバチバチバヂバヂバヂィィィ!!!


「「!!」」


キングとノイズが身構える。これをしでかしたのは幻想少女になって二年弱のルーキーだ。


「おいおい、一体から出る電子量じゃねぇぞ」

「これほどまでとは、出力だけなら我々を優に超えるッッッ!!」


瞬きを重ねるごとに瞳の稲妻が回転し、呼吸を交えるごとに大気中の電子量が増加する。


「なッ!?」


突如見えぬモノに足を取られ引きずられるキング。背中を汚しながら驚くほどの速度でイエルロとの距離を縮めさせられる。


冷静に空間をランスで抉り突くが、手応えなく現状維持のまま。


(透明な触手の類いではないな。彼女の能力から察するに、これは電磁石によるものッ!!)


ならばと抵抗を止め、イエルロの凶刃に倒れるかと思われたその時———!!


「ふゥんッッッ!!」


跳ね起きの原理で上体を起こし、その勢いのまま両足を


距離は約30センチ。最早盾とランスも不要!! イエルロの足に突き刺すことで退路を塞ぐ。


(人体にとって影響を及ぼすのはボルトではなくアンペアだッ! それに流すだけならば損傷は無い! 突き刺した足は体を固定する役割だけではなく、常に電気を流し続けることができる! 

彼女と私の身長はほぼ同じ、足の分だけ上を許すことになるが……ことインファイトにおいては下を取った方の勝ちだッッ!!)


「打ち抜けノイズ! ここで貴様を役立たせずして何が王かッ!!」

「あいよ!!」


完璧な連携、イエルロは一転して窮地に立つ。






しかし、世界を統べるモノの弟子は、このような状況で負けていいはずがない。


「きっっっついけど、ちょうどよかったわ」


ガァァァァァンッッッ!!!


音が割れるほどの拳がキングの腹を突き刺す。


「ガッッッ……やるなッ!」


流し切れなかった電流が、皮膚を焼きヒビを作る。しかし、キングは倒れない。


「お返しだッ!!」


下からのアッパーとノイズによるゴム弾の強襲がイエルロに突き刺さる。


「泥試合結構!! 民衆を守れれば我が身を斬り離す覚悟だッッッ!!」

「イカれてるぜ相棒、そう言うの大好きだ!」


ノイズがキングの足元に駆け寄り、指先から高周波の振動をかけることによって足を摘出し、マーカーを投げる。


キングはランスを回収、イエルロを蹴ることで距離を取り、必殺の体制に入る。


「私が思う真の王とは、ただ守られるだけではない! 民は戦争のせいで捻くれているからな、矢面に立ち一番槍を勤めなければついてこない!!」


「飛べ、私の勇敢なる魂よ! 『王手ロイヤルクラスター』ッッッ!!!」


ノイズが設置した目標に向け、王は駆ける。


共に楽園を守ると約束した騎士ともを信じて。

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