第24話:揺蕩う
「バーナテヴィル!!」
『羽虫が追いついてきたな、あいつは何をしているんだ……?』
「仲間のうち2人が足止めをしてくれている。彼女たちを信じてお前を倒すだけだ」
「前回と同じとは思わないことです」
「一皮剥けた私たちをみてもらいましょうぅ」
奴の背後で動く無数のモニターが、忙しなく架空の主人の命令を果たすべく熱を放出する。どうやらスーパーコンピューターのようなものらしいな。
『気になるか?
Dr.フォードボルトの遺産No.8、『|Fairy tale bread crumb《メルヘンのパン屑》』。高精度の未来予測機能が備わっており、我々の任務が成功できるか、そのパターンを推敲中だ』
「続きをやらせると思うか?」
『粋がるなよ少年、幻想少女の腰布風情が俺に啖呵を切れるのか?』
威圧感が高まり、周囲の氷から液体が滴る。
『三千……………』
「来るぞッ!!」
『統治ッ!!!』
「ふんッッッ!!」
一歩先に出たブルースが凶刃を一身にし、大きく後方に吹き飛ばされる—————が! 彼女はまだ立っていた。
「オルターさんと繋がったあの感覚、私はもっと
『ほう、ならばこれはど———」
その先の言葉は紡がれることはなかった。
「ジャスト0.2秒、技を溜め始められたらもう崩すのは無理。ならばその前にある0.2秒の硬直に差し込めばいい」
赤い髪を揺らして、自身が行ったことを宣言するスカレット。彼女もまた、オルターに影響を受けた者の1人だ。
「最適な脳の回し方、他人の脳を使うのではなく、あくまで流すように共有させる」
「ブルースは前面に立ってくれ。俺たちはまだ奴には勝てない、なら並行条件を達成させる。あの機械を破壊しよう」
「いいのですか? あれには人類の叡智が」
「悪用されるよりましだ。それに、元からなかったものを主軸で動くことが間違いだ」
◇◇◇◇◇
「右に反らせ!」
上段から襲い来る斬馬刀を一瞬受け止め、肉薄しながらも注文通り右に晒してくれる。
「フッ……!」
鎧の隙間を狙った連射撃は、全て適切な体のずらし方をされることで装甲に弾かれてしまう。
「せいッ!」
グレネードのピンを抜き、転がすようにアンダースロー。モニターに到達する寸前で導火線ごと叩き切られる。
イエルロが不在の今、やつを打ち倒す術はない。しかしやつも洞窟の崩落を気にして本気を出せない。
明確な目標が両者にあるのに、両者はそれを打ち立てる物がない。その場合、より体積が大きく繊細な目当てがあるものが負ける。
俺たちはコードの一つでいいからメインコンソールを破壊すること。その結果が相手の自滅であろうと勝利だ。
『フン!!』
「らぁぁぁ!!」
もはや何度吹き飛ばされたかわからない。ブルースが前線にいない間、俺とスカレットがサーバーに攻撃して守らせることで時間を稼ぎ復帰させる。
「あと…‥ちょっと!!」
「指揮官、ここです」
スカレットが発動している演算共有が、投げるべきポイントを彼女の攻撃との相乗効果を狙ってのコンビネーションに変わる。
「くっ!」
もう手榴弾が底をつきそうだ。ラスト一発……
「スカレット、ブルゥゥゥス!!」
一瞬にして俺の考えが繋がり、構えをとってくれる2人。
盾を構え、ライフルの銃床を構える2人。俺はそれを見た瞬間、ラスト一発を思いっきり投げ切った—————2人に向けて!!
ジャストタイミングで通路奥に向かうグレネードをかっ飛ばし、推進力をさらに上乗せしたかと思うと……!!
「『
シールドバッシュでさらに速度を上げるべく走り出し、3倍の速度を与えた。
反応しきれない速度に上がった爆弾はそのまま兵器を破壊した。
『……』
「! まて!』
『なるほど、イレギュラー……か。カズト・アマネ、その名前覚えておくぞ』
「くっそッ!!」
「指揮官、これ以上は危険です!!」
「すぐに避難をー!」
「まだ、まだあいつを……!」
『さらばだ、( )能の原石ョ……!?』
奴の腹に風穴が空いた。
振り返ると、全てを貫通して一直線にコアを狙った超ロングレンジスナイプ。
「……?」
俺には、微かに紫煙の香りが漂うことに気がついた。
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