華氏100℉

華氏というのは100度が人間の正常な温度というなんとも変わった表現だ。しかし、私の滉一への気持ちというのはそれに似たものだ。摂氏では計れない...滉一はもう私の愛が冷めていると感じてるみたいだけど...今でも変わってないんだよ?

 

「zzz...」

 

寝顔もかわいいな。もう昔みたいな少年の顔じゃないけどそれでも大好きだよ。昨日は久しぶりに二人で愛し合ったなぁ。男の子はいくつになってもケモノさんなんだね。積極的な滉一が見れてうれしかったな、

 麻知は寝ている山城の頬に軽くキスをして、シーツでまっさらな身躯を隠し、ベッドから起き上がる。まだ朝日も顔を出していない。短針は3を指していた。

 

スッタンタンタンタン...

 

手際よく包丁を使い食材を切っていく。主婦にとって弁当作りほど面倒なものはない。朝食の準備もあるわけで早起きをして朝早くからキッチンに立たなければいけない。だいたいこういう経年夫婦というのは弁当箱が冷凍食品祭りだったり、野口のようにこづかいを握らせて(透は実は渡したいのだが)済ませるようなものだが麻知には苦とかそういうものはない。新婚のように弁当を作ることを楽しんでいる節がある。

 卵を割り、砂糖を入れ混ぜてフライパンに流していく。そのあと、肉などを焼いていく。

 弁当箱に盛り付けていくわけだが、山城の好きなものを入れていくとなんとも全体的に茶色い弁当になる。しかし、彩りのあるものよりもなぜだか豪華で男性的には好きな弁当である。青いチェック柄の布で包んだ後、リビングを去り何故か山城の書斎に入った。

 

カチッ....タタタタ...

 

パスワードは未だに私たちの記念日なんだね♡滉一もまだ私のことが大好きで仕方ないのかな?でも...それならこんなことされたくないなぁ...

 

麻知の面前に立つ画面にはブラウザが起動されていた。お気に入りバーには『動画サイト』が登録されていた。

 

なんでこんなことするのかな?私、心がキューって苦しくなるな...滉一がこんな汚らわしい女を見てシテいるって考えると...この女が目の前にいたら〇してるだろうなぁ。ねぇ、滉一...なんでなんでなんで...

 麻知は虚ろな目でお気に入りを解除をし、フィルタリング設定をした。

 

「これで私に頼るしかないよね?大丈夫だよ...大丈夫滉一、私が全部受け入れてあげるから...私は滉一のモノだし、滉一もわたしのモノなんだから...何をするにも私が関わってないと嫌...こんなことするってことはまだわからないのかな?滉一の記憶は私でいっぱいじゃないのかな...?」

 

ウィンドウを閉じ、シャットダウンをして去ろうとしたときあるものを見かける。

 

「...?」

 

これまで何百回、何千回と山城の部屋に入ってきたがこの古びたお菓子の缶箱は初めて見た。

 

「(なんだろうこれ.........!?)」

 

中には山城の元彼女、麻知から一時山城を奪ったあの女の手紙が入っていた。その数は数通なんてものではない。おそらく、あの女のことだ。携帯電話など当時持っていなかったのだろう。だから文通でやりとりしていたのだろう。しかし、そんなことはどうだってよかった。なんで今になってこんなものが出てきたのだろうか...

 

『...みれ?』

 

あの雌犬...まだ滉一の記憶の片隅にいたのか...私が抹殺したはずなのに...滉一の全てには私だけがいればいいのに...

 そう思うと、彼女の丸文字はとても憎かった。文面も盛りの付いた雌犬そのもので、今すぐにでも破り捨てたかった。しかし、麻知も予想外のことが起きる。

 

「資料...資料、書斎だったか...」

「!?」

 

まだいつも起きる時間ではないが、山城が起きてきたようだ。ここに来る前に早く抜け出さないと...と考えるが時間は麻知にそんな猶予を与えなかった。

 

ガチャッ...

 

「....おわっ、なんで麻知がここに」

 

「...」

麻知が手に持つものに気がつくと、山城の顔色が変わった。

 

「............!!触るな!」

 

山城は麻知が持っている缶箱を奪うようにして取り上げる。

 

「そんなにやましいものでも入ってるの...?」

 

「見たのか...」

 

実際には見た。しかし、山城がこれをどう説明するのかを見たかった。

 

「...」

 

「見たのかって聞いてるんだよ!」

 

「....」

 

滉一がこんなに怒るのははじめて見るかもしれない。でも、本当に怒りたいのは私だよ?あの女のほうが大事なの?滉一はわたしのものなのに...

 沈黙のまま時は進む。そして、麻知は口を開く。

 

「.....見た。あの女のラブレター」

 

「っ...」

 

山城の顔は怒っているような、焦っているようなそんな感じがした。

 

「見ちゃ....いけないの?夫婦に隠し事は厳禁。私はあなたの全部を知る権利はある。」

 

「だからって、勝手に人の部屋に入ってまですることか?お前おかしいよ」

 

「おかしくない!おかしいのはあなたのほう!そうやって隠れてあの女のこと考えていたんだ!」

 

「別にただの思い出だろ?考えすぎなんだよ」

 

「........じゃあ、前寝言であの女の名前を出してたのは?違うなんて言わせない...もう私たち夫婦。あんな女なんて考える必要は...」

 

「!!」

 

華氏というのは100度が人間の正常な温度というなんとも変わった表現だ。しかし、私の滉一への気持ちというのはそれに似たものだ。摂氏では計れない...滉一はもう私の愛が冷めていると感じてるみたいだけど...今でも変わってないんだよ?♡

 

「zzz...」

 

寝顔もかわいいな。もう昔みたいな少年の顔じゃないけどそれでも大好きだよ。昨日は久しぶりに二人で愛し合ったなぁ。男の子はいくつになってもケモノさんなんだね。積極的な滉一が見れてうれしかったな、私はマグロだったけど...こんな私でごめんね滉一...

麻知は寝ている山城の頬に軽くキスをして、シーツでまっさらな身躯を隠し、ベッドから起き上がる。まだ朝日も顔を出していない。短針は3を指していた。

 

スッタンタンタンタン...

 

手際よく包丁を使い食材を切っていく。主婦にとって弁当作りほど面倒なものはない。朝食の準備もあるわけで早起きをして朝早くからキッチンに立たなければいけない。だいたいこういう経年夫婦というのは弁当箱が冷凍食品祭りだったり、野口のようにこづかいを握らせて(透は実は渡したいのだが)済ませるようなものだが麻知には苦とかそういうものはない。新婚のように弁当を作ることを楽しんでいる節がある。

 卵を割り、砂糖を入れ混ぜていく。麻知はあっ、と忘れていたように口から透明な糸を出し、溶き卵に混ぜていく。

 

「はぁ.......じゅ.....ちゅ...ん..」

 

昨日、息が止まるくらいいっぱい味合わせたからばれちゃうかな...滉一にはいつでもわたしを感じてもらいたいから...

 そのあとは無駄なく卵や肉などを焼いていく。弁当箱に盛り付けていくわけだが、山城の好きなものを入れていくとなんとも全体的に茶色い弁当になる。しかし、彩りのあるものよりもなぜだか豪華で男性的には好きな弁当である。青いチェック柄の布で包んだ後、リビングを去り何故か山城の書斎に入った。

 

カチッ....タタタタ...

 

パスワードは未だに私たちの記念日なんだね♡滉一もまだ私のことが大好きで仕方ないのかな?でも...それならこんなことされたくないなぁ...

 

麻知の面前に立つ画面にはブラウザが起動されていた。お気に入りバーには『動画サイト』が登録されていた。

 

なんでこんなことするのかな?私、心がキューって苦しくなるな...滉一がこんな汚らわしい女を見てシテいるって考えると...この女が目の前にいたら〇してるだろうなぁ。ねぇ、滉一...なんでなんでなんで...

 麻知は虚ろな目でお気に入りを解除をし、フィルタリング設定をした。

 

「これで私に頼るしかないよね?大丈夫だよ...大丈夫滉一、私が全部受け入れてあげるから...私は滉一のモノだし、滉一もわたしのモノなんだから...何をするにも私が関わってないと嫌...こんなことするってことはまだわからないのかな?滉一の記憶は私でいっぱいじゃないのかな...?」

 

ウィンドウを閉じ、シャットダウンをして去ろうとしたときあるものを見かける。

 

「...?」

 

これまで何百回、何千回と山城の部屋に入ってきたがこの古びたお菓子の缶箱は初めて見た。

 

「(なんだろうこれ.........!?)」

 

中には山城の元彼女、麻知から一時山城を奪ったあの女の手紙が入っていた。その数は数通なんてものではない。おそらく、あの女のことだ。携帯電話など当時持っていなかったのだろう。だから文通でやりとりしていたのだろう。しかし、そんなことはどうだってよかった。なんで今になってこんなものが出てきたのだろうか...

 

『...@#?』

 

あの雌犬...まだ滉一の記憶の片隅にいたのか...私が抹殺したはずなのに...滉一の全てには私だけがいればいいのに...

 そう思うと、彼女の丸文字はとても憎かった。文面も盛りの付いた雌犬そのもので、今すぐにでも破り捨てたかった。しかし、麻知も予想外のことが起きる。

 

「資料...資料、書斎だったか...」

「!?」

 

まだいつも起きる時間ではないが、山城が起きてきたようだ。ここに来る前に早く抜け出さないと...と考えるが時間は麻知にそんな猶予を与えなかった。

 

ガチャッ...

 

「....おわっ、なんで麻知がここに」

 

「...」

 

「............!!触るな!」

 

山城は麻知が缶箱を持っているのを見ると、奪うようにして取り上げる。

 

「そんなにやましいものでも入ってるの...?」

 

「見たのか...」

 

実際には見た。しかし、山城がこれをどう説明するのかを見たかった。

 

「...」

 

「見たのかってんだよ!」

 

「....」

 

「黙ってちゃ分からねぇだろ!」

 

滉一がこんなに怒るのははじめて見るかもしれない。黙ってる私も悪いけど、なんで怒るのかな?本当に怒りたいのは私だよ?あの女のほうが大事なの?滉一はわたしのものなのに...

 平行線のままで、時は進む。そして、麻知は口を開く。

 

「.....見た。あの女のラブレター」

 

「っ...」

 

山城の顔は怒っているような、焦っているようなそんな感じがした。

 

「見ちゃ....いけないの?夫婦に隠し事は厳禁。私はあなたの全部を知る権利はある。」

 

「だからって、勝手に人の部屋に入ってまですることか?お前おかしいよ」

 

「おかしくない!おかしいのはあなたのほう!そうやって隠れて@#?のこと考えていたんだ!」

 

「別にただの思い出だろ?考えすぎなんだよ」

 

「........じゃあ、前寝言であの女の名前を出してたのは?違うなんて言わせない...もう私たち夫婦。あんな女なんて考える必要は...」

 

「...っ」

 

「!?」

 

山城は急に走り出し、階下に降りて着替えだした。


「まだ話は終わってない...なんで、なんで私じゃダメなの...」

 

麻知は泣いていた。山城は無視してかばんを持ち身支度をしていた。しかし、山城も心で泣かせた罪悪感を抱いていた。

 

バタンッ

 

そして、静かにドアが閉まった。揺れるようにオレンジの光が灯ったころだった。「!?」

 

なんで、あの女のことをかばうの...?あっ...

 山城は下に降り、着替えをしていた。

 

「まだ話は終わってない...なんで、なんで私じゃダメなの...」

 

麻知は泣いていた。山城は無視してかばんを持ち身支度をしていた。しかし、山城も心で泣かせた罪悪感を抱いていた。

 

バタンッ

 

そして、静かにドアが閉まった。揺れるようにオレンジの光が灯ったころだった。

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