第22話 睡眠学習
『絶対睡眠』の迎撃システムと、従魔のまくらがモンスターを倒せば倒すほど、楓のレベルは上がっていく。
その結果、スキルである『絶対睡眠』も成長してきた。
最初は対象者である楓とその付属品のみが入場できたのが、まくらなどの楓の睡眠を邪魔しないとスキルが判断した者たちの入場できるように『絶対睡眠』の領域は拡張された。
更に、倒すとドロップ品を残して消え去るモンスターは放置していたが、色々と残ってしまう探索者などを寝起きに見せるのは目覚めが悪いからと、処さずに気絶するように調整がなされた。
こうして順調に成長を続けている『絶対睡眠』であるが、彩音という被験者が追加された事により、更なる事実が確認できた。
「睡眠学習?」
「くぅん?」
「そうなの! 私の『剣聖』スキルが成長してるの! 最近成長の壁に阻まれてたのに!」
スキルは基本的に使えば使うほど成長していく。素振りのように空撃ちでも成長するが、実際にスキルを使いモンスターを倒したり、アイテム等を造ったりした場合は、より成長するようになっている。
ただ際限無く成長し続けるという訳ではなく、成長の壁と呼ばれる、成長し辛い段階が度々訪れるのだ。一般的にはそれを乗り越えるには、難関なボスをそのスキルで討伐したりと言った、まとまった経験値が必要だと言われている。
実は、そんな成長の壁に絶賛阻まれ中であった彩音だが、今回の『絶対睡眠』によってその壁を乗り越えれた感覚があると言う。
「…よく分からないけど、寝起き早々にモンスターと格闘し出したのはそれのせい?」
「え、それは違うの。寝起きが爽快過ぎて、身体を動かしたくなったの。そしたら気が付いたの!」
「…寝起きに身体を動かしたく? 凄いね彩音は」
睡眠の質向上のため運動することはあれど、自分から積極的に身体を動かすという発想が微塵もない楓は、彩音の考えに、ただただ驚くのであった。
しかしそんな楓よりも、自分自身に驚いているのが彩音である。スキルが成長したことも驚きではある。驚きではあるが、そんなことよりも『絶対睡眠』が凄すぎた。
目が起きた瞬間、身体の全てが整っている感覚。これまで自分が絶好調だと思っていたときは、全く絶好調では無かったとのだと気付かされた。
「ダンジョンで寝るなんてって思っていたの。でもこんな睡眠なら、それはダンジョンでも寝ようと思うの」
「わん!」
「でも、まさか楓ちゃんじゃなくて、まくらくんに布教させられるとは思わなかったけど」
「わふぅ」
楓は自分が寝れれば良い人であるため、積極的に『絶対睡眠』を布教したりはしない。その点、まくらは楓と『絶対睡眠』に救われたという思いがあるため、その良さを広めたいという意識があるのだろう。
「…でもこの極上な睡眠の味を知って尚、普通の睡眠も好きって言える楓ちゃんは、本当に睡眠好きなんだなって思うの」
「わんわん!」
「まくらは、楓ちゃんと一緒に寝たいだけでしょ!」
そして、『絶対睡眠』の凄さを体感した彩音は、楓が真に睡眠好きであることも再確認するのであった。
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