第21話 一緒に探索?

 今日の楓は久しぶりに彩音と一緒にダンジョンに来ていた。

 元々ダンジョンの不人気階層に行って眠るという案を出してくれたのは彩音であったため、『絶対睡眠』を除けば戦闘力皆無な楓を不人気階層まで連れていく役は彩音であった。

 しかし、まくらが楓の従魔になってからは、その役はまくらに引き継がれていた。


 とはいえ、まくらの存在をなしにしても、ダンジョンイコール眠る場所である楓と、探索者である彩音ではダンジョンに求めるものが違うので、一緒に探索、と言うところまで持っていくのは至難のワザであった。

 それが今回、一緒にモンスターを倒し、一緒にギミック等に挑むことが可能となっていた。 


「それにしても、楓ちゃんと一緒になってダンジョン探索できる日が来るなんて、ウレシイナー」

わんうん!」

「うん、やっぱりこれを楓ちゃんと一緒にって言い張るのは無理かあると思うの!」


 そう、例え彩音がまくらの上で『絶対睡眠』している楓に向かって盛大にツッコミを入れたとしても、一緒に探索することは可能、になったのである。


「確かにテイムした従魔に戦闘を任せて、自分はスキルで身を護るって字面だけなら一緒に探索っぽいの」

わんわんそうなの?」

「まくらくんが進化して、『絶対睡眠』に一部干渉できるようになったのは凄いと思うの。そのお陰で『絶対睡眠』中の楓ちゃんを運べるんだし」

くぅんそう?」


 まくらは進化した。しかも主人である楓関連のユニークミッションの末に進化した。

 そのため楓、というよりは『絶対睡眠』に対する幾つかの権限が与えられているようであった。

 

 そのためこれまでは不可能であった、『絶対睡眠』中の楓の移動も可能となった。これを知った楓は、彩音に対して100%善意で、


「彩音と一緒にダンジョン探索ができるようになったけど行く?」


 と尋ね、彩音はその言葉を信じて来た結果、ダンジョンに入場した瞬間、おもむろにまくらに飛び乗った楓はそのまま


「じゃあお休み~」


 『絶対睡眠』を発動して寝てしまうのであった。


 その結果、おおよそ一緒に探索しているとは思えない絵面になったのである。


「…楓ちゃんは、本当にこれが一緒に探索に該当すると思ってそうなの」

わんわんもちろん!」

「まあ、まくらくんと一緒にって考えれば楽しいの!」

 

 そんな事を言っていると、今日の目的地に到着する。今日の目的地は『黒の夢』第21階層である『漆黒の闇』。辺り一帯が真っ暗であり、生半可な光源は飲み込んでしまうため、強力な光魔法などで照らすか、『夜目』等の暗闇でも視界が確保できるようなスキルが必須な階層である。


 そんな階層なためこの『黒の夢』でもダントツで不人気階層である。しかし、睡眠には適した階層でもあった。

 しかし第21階層ともなると、非戦闘員である楓を連れてこれる階層でも無いため、最初、このダンジョンに来た際は候補に上がらなかったのである。


「まあ確かにね、楓ちゃんを護りつつこの階層まで来るのは大変だけどね。凄い時間掛かっちゃうだろうし」

くぅんうん? わんわんねよねよ!」

「そうだ…ってまくらくんも寝ちゃうの!」


 そんな階層に来たのであればやることは一つである。

 まくらは背中に乗せていた楓を優しく地面に下ろし、影内にしまっていた寝袋等を素早く準備していく。


 その様子を呆然と見ていた彩音に気が付いたまくらは、大変不思議そうに彩音を見つめる。


くぅんあれ? わっふぅいっしょ?」

「わ、私も? ……わかったの!」


 まくらは当然に3人で『絶対睡眠』するつもりであったし、楓もそのつもりだったのだろう。

 意を決した彩音は、『絶対睡眠』に入っていく。

 入った瞬間、気が付けば眠りに落ちるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る