第18話 眠り姫の枕
楓がダンジョン睡眠から目を覚ますが、何故だか物凄い睡魔に襲われ危うく二度寝してしまいそうになる。
『絶対睡眠』の効果により、ダンジョン内では、完璧で究極の睡眠が提供される楓の目覚めはすこぶる良い。そのため、ダンジョン内で二度寝をしたくなった事は無かった。寝惚け眼を擦りながら原因を探していると、楓を睡眠の世界へと誘う天使は直ぐとなりにいた。
「まくら、まくら」
「…くぅ、わふぅ?」
「私が寝てる間に何かあった? 寝る前に比べて枕度が高まりすぎてない?」
「くぅん? …わんわん!」
楓にそう尋ねられる程には、まくらのもふもふ度とふわふわ度が爆上がりしていた。
まくらも、先ほどの出来事を掻い摘まんで説明する。
特殊なスキル等を持っている場合、ミッション等を出される事があり、それをクリアする事で何かしらの恩恵を貰えるのだ。
と、そんな事をダンジョン素人の楓が知っている筈もないため、まくらの説明を聞いてもよくは理解できていないのであった。
「まあ兎に角、寝てるなか起こされて、何か色々やらされて、気が付いたら、もふもふに磨きが掛かっていたってことだね」
「わん!」
「起こされたのは最悪だけど、結果として進化?して強くなったのか……うーん、プラマイマイナスだね。今度から変なアナウンスが来たら無視して寝てて良いよ」
「わん!? わん!」
睡眠至上主義とまではいかないが、彼女にとって睡眠を妨げられる行為は許しがたい。それが、世間からはありがたられている、世界の声だの言われているモノであってもだ。
「だってまくらの話だと、私のスキルが関係して起こされたんでしょ? それはダメだよ」
「くぅん?」
「だって、まくらは、ダンジョンじゃないと寝れないでしょ?」
楓の考えとしては、最悪、自分がダンジョン睡眠を邪魔されるのであれば良いのだ。楓は家だろうが、学校だろうがどこでも寝れるため、ダンジョン睡眠の1回や2回邪魔されても、当然怒る事は怒るのだが良い。
しかしまくらは、スキルのせいで『夜王』のせいでダンジョンでしか寝られない。ダンジョン睡眠の価値が楓とまくらでは違うのだ。
それなのに良く分からない声によってまくらの睡眠時間が削られたため、ぷりぷりしてしまう楓であった。
「でもふわふわもふもふになったのは…でも許せん」
「わんわん!」
「そう言えば進化って確か『夜狼』のてーおー種ってのから何になったの?」
「くぅん?」
進化を実行するので眠れとだけ言われ、直ぐに眠ってしまったまくらは、そう言えば自分がどんな進化を遂げたのか確認していなかった事を思い出す。
自分の力を確認してみると、『夜王』スキルは『夜の帝狼』に、種族は『夜狼』から『夜眠帝狼』にそれぞれ進化していることに気が付く。
そしてもう一つ、見知らぬスキルが増えていた。そのスキルの名前は『眠り姫の枕』。
「わんわん!」
「え? 『眠り姫の枕』? 変なスキル名だね」
「わふぅ? わんわん!」
「え、私と一緒ならダンジョン以外でも寝られるスキル? やったじゃんまくら!」
ステータス上昇も、戦闘に役立つ能力も何もない、ただ眠れるだけのスキルである。しかしそのスキルは、常日頃からまくらが思っていた「もっと楓と一緒に寝たい」という願いを形にしたようなスキルであり、進化によって様々な能力を得るよりも、このスキルを得た方が何倍も嬉しそうなまくらなのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます