第3話 鋼鉄洞窟

 彩音に教わったダンジョンの中で、一番寝心地が良さそうなダンジョンを選び、そこに向かう楓。


「やっぱり、毒が云々とか溶岩が云々よりはゴツゴツとしてたとしても、洞窟の方が寝やすそうだよな~」


 過疎ダンジョンと言うだけあり、どのダンジョンも一癖も二癖もある。そのため、消去法での選定となってしまった。

 今から行くダンジョンは、『鋼鉄洞窟』と呼ばれているダンジョンであり、出てくるモンスターも鋼鉄のように硬い奴らばかりである。

 そのため討伐には時間が掛かる上に主流武器である剣等の刃物は痛んでしまう。それなのにドロップ品は鋼鉄等のダンジョンのドロップ品としてはあまり旨味が少ないモノであるため、過疎ダンジョン化してしまっているのであった。


 『鋼鉄洞窟』に到着した楓。本当に人がいない場所に行くためには、入口付近ではなく、もう少し先に進んだ場所が良いのだが、残念な事に運動神経も戦闘センスも皆無な楓は、寝てない状態でモンスターに出会うと危険なので、必然的に入口付近で寝る事になる。

 そんなリスクがあってもダンジョン睡眠を止めないほどの睡眠バカなのであるとも言える。



「それじゃ準備も出来たし『絶対睡眠』発ど――スヤ~」


 こうして地元の極小ダンジョン以外では初のダンジョン睡眠を行うのであった。



――――――――――――――――――


 楓が目が覚めると見知らぬ天井であった。まるで何処かのダンジョンのような。


「はぁ~よく寝たな。でも何度寝ても毎回見慣れない天井に戸惑っちゃうな。さてとそろそろ…あれ? これなに?」


 極小ダンジョンで寝ていた時は、起きたら魔石と呼ばれる石が転がっていた事はあったが、今回のように鋼鉄のインゴットや、見る限り鋼鉄製の盾が落ちている事は無かった。


「察するに『絶対睡眠』に撃退されたモンスターが落としたドロップ品って事かな? 重そうだけど…放置しちゃだめだよね。はぁ~」


 ダンジョンではドロップ品等も放置して一定の時間が経てばドロップ品も消失するという事実を知らない楓は、律儀に自分のスキルで撃退してしまったモンスターのドロップ品を全て持って帰ろうとする。

 

「まあ、入口に近いし、何か買い取りカウンターとかあったしそこで売っちゃえば良いか……よいっしょ! あれ? あんまり重くない」


 楓は自身の非力さを十分に自覚しているため、鋼鉄製の盾どころか、鋼鉄のインゴットすら持ち上げるのに苦労すると思っていたため、気合いを入れて持ち上げたのだが、予想に反して鋼鉄のインゴットも盾も、少し重いくらいで比較的簡単に持ち上げることが出来た。


「うーん? まあダンジョン製だし、普通のより軽めに作られてるのかな?」


 本当は、『絶対睡眠』によるモンスターの撃退により、楓がレベルアップした結果なのだが、ダンジョン素人の楓には、そんな考えは思い付かないのであった。

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