第2話 ダンジョン睡眠は別腹です

 『絶対睡眠』の効果は絶大であった。ゴツゴツとした洞窟のようなダンジョンで寝袋を使い寝たというのに、いつもより数段上質な睡眠を取ることが出来た。

 

 懸念していたモンスターも、戻ってきた蓮曰く、楓に近づこうとすると、見えない壁に阻まれ、その壁を攻撃すると迎撃されていたらしい。


「何か、モンスターの方が可哀想だったもん」

「よく分からないけど、じゃあダンジョン睡眠は大丈夫だね」

「うーん、まあ大丈夫かも。姉ちゃんだし」


 こうして、蓮が高校生になるまでの2週間ほどは、蓮の同伴でダンジョンに行き、蓮がダンジョン攻略をしている間、楓はダンジョンで眠るという日々が続くのであった。



 そして2週間が過ぎ、そろそろ大学も始まるということで、帰省を終え帰ってきた楓。

 前までは自分が厳選に厳選を重ねた寝具セットでの睡眠に満足していたのだが、ダンジョン睡眠という存在を知ってしまった楓は、自室での睡眠だけでは物足りなくなってしまっていた。


「ここでの睡眠も好きだけど、ダンジョン睡眠は別腹だよな~。都会のダンジョンは人多そうだけど、良さげなダンジョン無いかな?」


 楓の地元な極小サイズのダンジョンは、ほとんど探索者が来ない過疎ダンジョンであったため、気兼ね無く惰眠を貪ることが出来た楓であった。

 しかし、流石に都会の人がごった返しているダンジョンで寝ていれば邪魔になってしまいそうだと思えるくらいには、常識がある楓は、ある程度過疎っているダンジョンが無いか調べるのであった。



 結局、ダンジョンにもともと興味が無かった楓の情報網など大したことはなく、都会にはダンジョンが多く、どこも人が一杯いるくらいしか分からなかった。

 

「どうしたの楓ちゃん? 何か元気無い?」

「うーん、ちょっと…」


 そのため、少しローテンションで大学に行くと、友人である彩音あやねが心配そうに聞いてきた。


「そう言えば彩音って、ダンジョン好きだったよね?」

「え? うん。好きだよ。一応、探索者として活動してるし、ちゃんとギルドにも入ってるもん。もしかして楓ちゃんもダンジョンに興味が湧いたの!?」

「ちょっとね。ここら辺で人が少なくて、寝るのに適してそうなダンジョンって知らない?」

「寝る、のに適したダンジョンは無いと思うよ。そもそもダンジョンは寝る場所じゃないもん。でも人が少ないダンジョンは結構あるかも。どれも高難度ダンジョンだけど」


 高難度であり、ドロップアイテム等の旨味が少ないダンジョンは、楓の地元のダンジョンレベルで過疎っている所もあるらしい。

 そんな情報を得た楓は、大学の帰りに寄ってみようと考えるのであった。


「でもでも、そういうダンジョンは本当に危険だから、行っちゃメッだよ!」


 彩音の可愛い忠告は無視して。

 

 

 

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