眠り姫は今日もダンジョンで

和ふー

第1話 プロローグ

 それは、花咲楓はなさきかえでが大学の春休みに帰省した時の事。自分の部屋のベッドでゴロゴロしていると、弟の蓮がいきなり部屋の中に入ってくる。


「姉ちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど!」

「なに?」

「明日の探索者講習に参加したいんだけどさ、俺まだ中学生だから一人だと参加出来なくて」


 探索者講習、それは探索者としてダンジョンに入るために受けないといけない講習である。一応、ダンジョンへの入場には年齢制限があり、高校生以上の者は一人でダンジョンに入れるのだが、まだ中学生の蓮は、高校生以上の探索者と同伴で無ければ入れないのである。

 

「…眠いから嫌」

「姉ちゃんいつもそればっかじゃん!」

「てか蓮も春休みが終われば高校生でしょ。あと2週間ちょっとの我慢」

「でもでも! 陽輝もたっくんも春休みに兄ちゃんとかとダンジョン行くって言ってて、俺だけ置いてかれる訳には…」


 蓮が悲しそうな表情で俯いてしまう。そうなると基本的に弟に甘い楓は弱い。

 結局、蓮の頼みを引き受ける事になった。



 次の日、街の協会施設での探索者講習を終えた2人は、少しだけという約束でダンジョンに入場する事にした。

 ダンジョンには大きなモノから小さいモノまで沢山あり、楓たちの住んでいる田舎のダンジョンは、言うなれば極小サイズのダンジョンである。

 そのためここで活動する探索者はおらず、探索者協会からも常駐の管理者等は派遣されていないのであった。


 ダンジョンの入口に用意された改札口のような場所に、探索者講習で貰ったカードをかざして入場する2人。


「それでね、それでね、才能がある奴は、ダンジョンに初めて入るときにスキルを手に入れられるんだよ!」

「スキル…へ~」


 蓮が熱心にダンジョンのアレコレを説明してくれるが、あまり興味の無い楓は、曖昧に頷きながら、改札を抜ける。すると楓の脳内にメッセージが響いてくる。


【ユニークスキル『絶対睡眠』を獲得しました】


 いきなり意味分からないアナウンスを受けた楓は驚き、蓮の方を見る。

 すると、蓮は、隣でガッツポーズをしていた。どうやら良いスキルを授かったようであった。


「てやー! とう!」

「蓮がこんなに動けるなんて、スキルって凄いね」


 蓮が授かったスキルは、『剣豪』という中々の良スキルらしく、剣なんて素人な筈の蓮は、いとも容易くモンスターを屠っていた。

  

 そんな蓮はだんだん、入口付近に出現しする弱いモンスターではなく、先に進みもっと強いモンスターと戦いたくなってきた。

 楓としても、ここで少し試したい事があったので許可を出す。


「行くのは良いけど、危険だったら『帰還玉』だっけ? それ使いなよ」

「うん! 行ってくる!」


 楓が許可を出すと蓮は嬉しそうに先に進んで行くのであった。

 

「……さてと、それじゃ私は寝ようかな」


 蓮を見送った後、楓は一応、何かあるといけないからと持ってきていた、マイ枕と寝袋を取り出す。

 眠る準備は完了したので、再度、授かったスキルの詳細を確認する。


『絶対睡眠』

使用者に完璧で究極の眠りを与える。

使用者は睡眠の邪魔をされない。

このスキルはダンジョン内でしか使用できない


「モンスターいるのに寝るのは気になるけど、完璧で究極のって言われて試さないわけにはいかないよね。まあ邪魔されないみたいだし大丈夫でしょ」


 普段は慎重な方である筈の楓だが、こと睡眠が絡むと途端にそれ以外の事が雑になってしまうのである。


「じゃあ準備も出来たし。『絶対睡眠』発ど――スヤ~」


 こうして、楓のダンジョン睡眠の日々は幕を開けたのであった。




☆☆☆☆☆


昨日、カクヨムに入れず、ふて寝してて思い付いた突発ネタです。

起床しても覚えてたので投稿

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