岡本さんの野望

岡本さん 「どうしてだと思う?」

飯田さん 「ええ、、、、、」

高橋さん 「虫かごは、、、虫が好きとか?」

岡本さん 「違うわ。虫は嫌いよ。」

飯田さん 「じゃあ、どうして、、、?」

岡本さん 「私、今年12歳になる孫がいるんだけど。その子、韓流アイドルが大好きなの。それでね、好きな芸能人のことを推しっていうらしいんだけど、その子、自分の推しのライブに行くときは絶対に双眼鏡を持っていくの。推しの姿を、遠くからでも鮮明に目に焼き付けたいからって言ってた。」

飯田さん 「推しっていう言葉があるんだ。初めて知った。え、それで??」

岡本さん 「それで、孫にとってそんなに必要不可欠なものなら、たくさん買ってあげたいなって思ったの。それも良いやつを。」

飯田さん 「数は、別に一つでいいんじゃないの?」

岡本さん 「飯田さん、違うの。うちの孫はね、新しい、クオリティが高い上質なものを常に求めているの。それで推しの顔をよりはっきりと見たいんだって。私にはちょっとよくわからないんだけれど、孫の言うことだし、聞いてあげたいのよね。だから双眼鏡を買えるだけ買おうとしてるの。」

高橋さん 「へー!そうだったんだ。」

江島さん 「じゃあ、テレビは?テレビはどうしてたくさん欲しいの?」

岡本さん 「これも孫のためなの。毎日新しい、ハイレベルなテレビで推しを堪能したいはずよ。」

飯田さん 「随分孫思いなのねぇ」

岡本さん、照れ笑いを浮かべて、

岡本さん「えぇ、まあねぇ。いろいろしてあげたくなるものなよねぇ、孫って」

飯田さん 「あたしもわかるわ、その気持ち。孫は、かわいいものよねぇ」

高橋さん、ニコニコとうなずきながら話を聞いていたが、急に思い出したように

高橋さん 「あ!そうだ!一番気になってた、虫かご!虫かごはどうして??」

岡本さん 「うちの孫、この間東京ドームで推しのライブを見に行ったらしいんだけど、席がステージから遠かったみたいで、双眼鏡を使ってやっと顔が見れるくらいの距離だったって。ちょっと残念そうにしてたの。」

岡本さん 「だからね、あたしその話を聞いて思いついたの。」

高橋さん、飯田さん、江島さん、いつの間にか話に入っていた職員の鶴本、同時に

岡本さん以外の全員 「何を?」

岡本さん 「虫かごに推しの写真を入れて、閉じ込めたらいつでも推しを近くで見れるんじゃないかって!!」


少しの沈黙の後、話を聞いていた面々は、誰からともなく


岡本さん以外 「え」

高橋さん 「怖いわよ何その発想!!ストーカー予備軍の発想じゃない!」

江島さん 「そのために虫かごを買おうってしてたのね、、」

飯田さん 「双眼鏡とかテレビはアホみたいに買うのに虫かごだけ急に1個、っていうのもなんか怖いわ!  もーなんか、全部怖い!なんなの!」


高橋さん、あきれながら


高橋さん 「飯田さん、怒らないの。」

高橋さん 「わかったわ。なるほどね、それであの三つが必要になったわけね。

んー、とにかく、孫のためにっていう思いは一貫してるのよね」

岡本さん 「まあね、、、、でも、ちょっとおかしいのかなあ、やっぱり。」

飯田さん 「ちょっとどころじゃないわよまったく」

高橋さん、それを目でいさめながら

高橋さん 「実はねあたしたち、大量の虫かごと双眼鏡を岡本さんのおうちにきれいに入れる方法考えてたの。」

岡本さん 「あら!そんなことまで考えてくれてたの!ありがとう!」

岡本さん 「でもね、心配ご無用よ。10億円とは別にあたしが持ってる全財産をつぎ込んだら、うちの隣にもう一つ、小さなおうちが立てられるの。そのおうちに全部ぶち込んで保管するつもりよ❤」

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